桜は今が満開だとわかっていながらの今日のような天気は、まことにもったいないと思わざるを得ない。このような天候のことを "花冷え" と言うのだろうか。
"恥も外聞もない" という雰囲気や空気が蔓延しているのが、残念ながら現状の世相の特徴であり、人々の日常感覚の、これまたひとつの特徴であるのかもしれない。確かに、経済状況、財務状況の深刻さが、国家レベルから個人レベルに至るまでの生活主体に揺さぶりをかけてきている。暢気に構えることを許さないようなシビァな空気があちこちに漂っていると実感できる。
しかし、だからと言って、 "恥も外聞もない" というような "没・美意識" の水準に滑り込んでよいということにはならないはずであろう。そこが、 "動物以上神未満" としての存在だとされる人間の美徳だと思えるからである。とは言っても、自身が究極の危機状況に追い込まれた時、 "恥も外聞もない" アクションを拒絶し続けられるかどうかについて自信を持っては明言できないところが恥ずかしいところとなるのであろう。
昨日のTV番組の話、 "ダンディー、ダンディズム" の件である。
なぜ今 "ダンディー、ダンディズム" なのかということでは、うまく説明はできないけれど、その必然性は十分にあると思われてならない。いろいろと分析的に述べてみることも面白いかとは思うが、それはまた別の機会にする。
とりあえず、現代という時代環境は、男たちから "ダンディー、ダンディズム" を遠のかせている気配があるという点だけを唐突に書いておこう。
で、昨日の番組(今夜決定!?世界のダンディ30人 BShi 3月29日[土] 午後8:00~11:00)をちょっと振り返っておく。
どんな "水準" の企画なのかは、次の出演者たち面々で想像はつきそうであろう。
<出演】姜尚中,鹿島茂,高橋源一郎,佐野史郎,ピーター・バラカン
【司会】奥田瑛二,中越典子>
先ずは、姜尚中氏の "真面目" さによって、基調が形成されていたかと思われる。そして、
<番組では自らの意志を曲げない生き方とスタイルを貫いた20世紀を代表する"ダンディー・ベスト30"を選び出す。映画、音楽、芸術、文学、政財界、ノンジャンルの6部門からそれぞれの分野の専門家、ないしはその部門にふさわしい審査員が、"20世紀最高のダンディー"を厳選して5人ずつ選ぶ。それぞれのプレゼンを受け、"ダンディズム"とは何なのか? それに値する男とは?身だしなみやマナー、こだわり、哲学や生き方を掘り下げる。>(NHK BSオンラインより)
とある。
ちなみに、各分野で決定された者たちは、以下の5人であった。 "マイルス・デイヴィス" 、 "マルチェロ・マストロヤンニ" 、 "サルバドール・ダリ" 、 "エドワード・サイード" 、 "金子光晴" 。そして、特別部門で "植木等" 。
なお、最終投票で世界ナンバーワンとして選ばれたのは、パレスチナ問題などの分野で世界に向けて発言した "エドワード・サイード" (パレスチナ系アメリカ人の文学研究者、文学批評家。主著の『オリエンタリズム』でオリエンタリズムの理論とともにポストコロニアル理論を確立した。 )であった。この "ハイブロー" な結果からも、この番組が単なるスタイリストとしての "ダンディー、ダンディズム" が問題とされていたのではなかったことがわかろうというものである。
遅ればせながら、サイードの著作『戦争とプロパガンダ』とか、『オリエンタリズム』などの大作に嵌ってみなければならないようである...... (2008.03.30)
コメントする