しばしの "雨宿り" の上、人を頼んで傘を届けてもらうはめになってしまった。今日の午後の急な "夕立" のことである。
要するに "高を括った" のがいけなかった。
午後二時過ぎ頃、急に思い立って駅前まで買い物に出向いた。表に出るとその時すでに空には "暗雲" が蔽(おお)っており、一触即発でザーッとくるのが十分に予想されたはずだった。。
が、どうしたことか傘を持参する周到さを欠いてしまった。再び、階段を上がって事務所に戻るのが億劫だったのであろう。また、このところ雨に降られた経験をしないで済んでいたため、まさに "高を括った" のだったかもしれない。
しかも、それならそれで、買い物も少しは急げばよいところを、予想以上に手間取ってしまった。その結果、非情な "夕立" に巻き込まれてしまったのである。
いけない、いけないと思ったその時はすでに遅く、駅前の商店の軒で呆然と雨脚を眺めるはめになってしまっていたのだ。雨脚は勢いを増すばかりであったため、どうしようかと迷う。ふと、この "シャワー" の中を5分ほど走るのは、さぞかし爽快だろうとも思うには思った。それほどに、ここしばらくの蒸し暑さは尋常ではなかった。
駅構内には、窓から薄暗くなった空を恨めしそうに眺める人たちが少なくなかった。 "遣らずの雨" という古い言い回しがふと浮かぶ。そんな "色っぽい" 文脈にはとんと無縁であるにもかかわらず、言葉だけが浮かぶのが不思議に思えた。
駅の階段には、同様に "色っぽさ" 抜きの "遣らずの雨" で足止めされた者たちが、まるでタクシーでも待って並ぶかのように、壁際に淡々と立ち尽くすこととなった。
5分ほど、そうして待っただろうか。運良く、急に雨脚が途切れて空が明るく急変するのではないかと勝手に期待していたのだったが、やはり甘い。一向に雨の勢いは弱まることなく、暗澹たる空も変わる気配がまるでなかった。
駄目だ、と見切りを付けることにした。自分はケータイを取り出し事務所に連絡を入れた。申し訳ないけれど、傘を駅まで届けてもらえないかという社員へのヘルプ通信なのである。イージーに "救急車" を呼び寄せる昨今の地に堕ちた風潮が脳裏をかすめて居心地の悪い思いをしたものであった。
傘が届く間、ひょっとして急に雨が上がってしまって、
「いやー、無駄足を運ばせてしまって申し訳ない......」
ということにでもなるのかとも思ったりしたが、結局、雨は降り止むことなく激しさが続いた。 "ヘルプ通信" だけはとにかく正解だったようである。
「これで、今晩はいくらか涼しくなるといいんですけどね」
と、傘を届けてくれた社員の呟きが耳に入った...... (2008.07.18)
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