よくもそんなことを今頃ぬけぬけと言えたものだと呆れてしまった。以下の新聞報道についてである。もし、この提言が "派遣法" のなし崩し改悪(派遣法の原則自由化。c.f.『労働者派遣法勉強室』 http://www.hisamatsu-sr.com/haken/rekisi.htm )が実施される以前になされたのならば、 "ナルホド!" と感じさせもしたことであろう。
しかし、さんざん労働市場を荒廃させておいて、この期に及んで涼しい顔をして奇麗事を言うのは、まさに呆れるほかない、というわけなのである。
<成果主義の改善を提言 労働白書、働く人の満足度低下
舛添要一厚生労働相は22日の閣議に2008年版の「労働経済の分析(労働経済白書)」を報告した。1990年代以降、多くの企業が導入した業績・成果主義的な賃金制度について「実際には労務コストの削減が主目的だった」と指摘。成果主義の適用範囲を意欲の向上に役立つ部門やグループに限定するとともに、評価基準を明確にして不公平感をなくすといった運用の改善が必要だと提言している。
今回の白書は「働く人の意識と雇用管理の動向」と題し、初めて労働者の仕事に対する意識をテーマに採り上げた。「仕事のやりがい」や「雇用の安定」「収入」に対する労働者の満足度は長期的に低下傾向にあることを示すデータを掲載。企業が正社員を減らし、パートなどの非正規社員を増やしてきたことがその原因と分析している。
仕事に対する満足度を高める対策としては、長期的視点に立った人材育成が必要だと強調した。>(NIKKEI NET 日経ネット 2008/07/22 )
"非正規雇用" の体制と風潮を促進させる政策を採ってきたことは、やはり長い目で見たならば、グローバルな競争経済におけるこの国の生産性に致命的なダメージを与えたのだとしか言えないであろう。ようやくその点を無視できないと認めた観が漂う。だが、まるで手遅れという気がしないでもない。
話は変わるが、現在、日本の漁業が危ないと目されているようだが、その原因は、 "燃料コストの高騰" だけではなく、やはり "乱獲" 傾向という困った事態が潜んでいるらしい。たとえば、自分が好物の "サバ" の、その漁獲高が最盛期の一割程度に落ち込んでいるとのことだが、理由は、繁殖力を発揮する "三歳" に至る前に "乱獲" してしまうため、 "三歳" ものの "サバ" が希少となってしまうからだそうなのである。増えようがなくなるという悲劇なのである。
そして、自然の "生態系" は急遽好転するはずもないため、この状態は長く尾を引くだろうとのことらしい。 "サバ" 以外の種類の魚も同様の傾向にあるようで、かなり深刻な漁業環境に直面している現状らしい。
もちろん、漁業環境と比べものにならないほどに労働環境、労働市場の問題は重要である。ただ、共通する点は、労働市場もまた、自然の "生態系" と同様に、急遽好転されるものではなかろう、という点なのである。
労働者各位の就業能力は、当然、就業環境と密着して培われるものであり、派遣形態やその他の "非正規雇用" 体制では、それに応じた生産性の実態が伴うわけだし、就業能力の発展と向上は、決して取って付けた形で増強されるはずがない。教育課題の達成というものは、まさに自然の "生態系" と似たような時間幅で成就してゆくに違いなかろう。
その点については、膨大な数の "フリーター" の存在が、この先の労働市場にどんなマイナス効果をもたらすかを想像するだけでわかりそうなものである。まして、 "少子化" に伴う労働力自体の枯渇傾向も潜んでいる。
こうした問題だけではないようだが、つくづく思うのは、この国には "長い目" で人々の生活を深慮遠謀する、そんな立派な方々はおられないのかという点なのである...... (2008.07.22)
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