POP「うずくまって泣きました」の効果的訴求力 ......

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  "言葉の一人歩き" を嘆くべきなのか、 "言葉仕掛け" とでも言うべきテクニックに驚嘆すべきなのか、それはわからない。
 ただ、言葉というものがあたかもブラックボックス化されたプログラム・モジュールがシステム内で自動的に作動するように、人の(購買)行動やその選択に大きく作用したり、方向づけたりしてしまうということが、確かにありそうである。
 これを専門に行うのがいわゆる "コピー" (c.f.キャッチコピー、コピーライター)というジャンルの仕事なのであろう。

 ある新書を読んでいたら、ちょっと目を惹く次のようなくだりがあった。

<最近、コピーの力はすごいと思ったのは、安達千夏さんの『モルヒネ』という小説の宣伝文句です。この本は最初に出たとき、全然受けなかったらしい。ところが、御茶の水のある書店でだけ妙に売れているので、出版社の人が覗きに行ったら、「うずくまって泣きました」という書店員の書いたPOPが立っていた。「うずくまって泣きました」というのは、とてもいい。「号泣しました」じゃなくて、「うずくまって」というと、猫背になって「うーっ」とやっている感じがする。「これだ」というので、全国にそのPOPを配って歩いたら、すごく売れたそうです。
 「うずくまって泣きました」という言葉がイメージを喚起する力もすごいし、いまの若い人も、「うずくまって」という言葉に触発される感覚を持っている。一行のコピーが小説の死命を制するということが起こるとしたら、言葉にはまだ力があるんですね>( 五木寛之・香山リカ『鬱の力』幻冬舍新書 2008.06.15 )

 確かに、「うずくまって泣きました」という言葉にはある種の訴求力が秘められているようである。自分も、この言葉を目にした時、何やら感情を刺激されたものだった。
 恐らく "泣ける" 映画などを好んで探すような女性たちには、この言葉はググッと迫ってゆき、当該本を書棚から一気にレジーへと運ばせてしまうだけの、そんな遠隔パワーを持っていそうな気がする。
 唐突だが犯罪捜査では、 "犯人だけにしか知りえない情報" という決め手があるとかだが、「うずくまって泣きました」というイメージには、 "そんな惨めさは自分だけ......" とでもいうような "超プライベート(?)" なイメージが漂っていて、心の琴線を共鳴させるのかもしれない。実に上手いキャッチ・コピーだと言うほかない。

 この言葉を案出した優れたコピー・ライターには、並外れた状況判断力や共感能力が備わっているのではないかと思う。それは単に主観としての感性が鋭いというだけのことではなさそうだ。多くの他者が共感するに違いないと読み込める、そんな洞察力があるのだろう。つまり、他者たちの頭の中、心の中を推察し得る日頃の観察の結果だとも言えようか。
 以前、広告ジャンルの手法で、 "ポジショニング" という古典的手法があり、昨今再び見直されている、と書いた。( "シンプル" な表現と "ポジショニング" という概念 ...... [2008.05.14] )
 要点は次の点だと言える。

<ポジショニングの基本手法は、「消費者の頭の中に既にあるイメージを操作し、それを商品に結びつける」というものだ。誰の頭にもない新奇なイメージをつくりだすことではない>(アル・ライズ他『ポジショニング戦略[新版]』海と月社 2008.04.14 )

 この視点に立つと、訴求力のあるキャッチ・コピーをものにするということは、指圧師が汎用的な "ツボ" を探り当てるようなものかと類推したりする...... (2008.08.13)













【 SE Assessment 】 【 プロジェクトα 再挑戦者たち 】








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