こんな涼しい天候になればいいと願っていたのだが、いざそんな天候となってみると、えっホントに? というようなやや "据わりの悪い気分" となっている。
小雨が降って、日頃汗まみれになっている肌を冷たく逆撫でするのもその原因かもしれない。表の猫たちも意表をつかれたものか、心細そうにしながら二匹揃って小屋に納まっている。
心細い気分となっているのは、自分や猫たちよりも、 "アリとキリギリス" のキリギリスのように遊びほうけて宿題を手付かずのまま放置し続けてきた怠け者の子どもたちなのかもしれない。まだまだ夏休みは二週間弱を残してはいるものの、過ぎ行く夏を気づかせるような今日のような天候は、さぞかし彼らの後ろめたさをそれとなく刺激しているに違いなかろう。
ふと、自分の幼かった頃の夏休みはどうであったかと思いを巡らせてみたりした。まだまだ右も左もわからなかった頃には、確かに、母親から "指導を受ける" (柔道の試合のようだが)こともあったかに覚えている。
とりわけ、怠けて何日分も滞らせてしまった "絵日記" を埋めるのが厄介だったような気がする。暑さだけが共通していてほぼ変わり映えするはずのない日々を思い起こすことなぞ到底不可能に近いことだったからだ。
そんな自分が、この歳になって誰に強要されるわけでもないのにこうした日誌を持続させているのが、何となくおかしい気がした。
「明日をも知らぬ身にてありながら 今に至ってなほ 用なき文字の戯れをなす。 笑ふべく憐むべし。」(日誌『断腸亭日乗』昭和20年6月10日)とあり、<用なき文字の戯れ>と称しつつ、大正6年/37歳から昭和34年4月29日/79歳までの42年間にわたって日誌を書き続けたという。
NHKの番組、<知るを楽しむ 私のこだわり人物伝 永井荷風 「お一人さま」の天才>のビデオ録画を調整していてその詳細を知ることとなった。
サブテーマ<「お一人さま」の天才>とあるように、日誌はもちろんのこと、その生き方においても、たとえ戦時下という異常な時代にあってもなお自分を失うことなく冷静な人間「お一人さま」を貫いたとある。知識人のひとつの典型を、実に魅力的に示していると心を動かされたものであった...... (2008.08.17)
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