現代という時代環境に特徴的なことは、 "不確かさに便乗して悪意を埋め込む者がいる" とでも言えそうだ。
昨日からのリーマン・ブラザース証券会社の破綻は、世界金融状況に対してかなり深刻な引き金をひいたことになるが、もとを糾せばあのサブプライムに関する怪しげな金融商品の新種であったことは周知の事実だ。
新聞報道で以下のような街の声が報じられていた。
<以前は証券会社に勤務していたという同市南区の県職員肥後孝さん(40)は、値下がりを示す緑色の数字がほぼ全銘柄に並ぶのを厳しい表情で見つめ、「歴史的な日ですね。リーマンをつぶしたということは、サブプライム問題は米国政府も手がつけられないほど底なしだということを、世界に宣言したようなものだ」と話した。>(asahi.com 2008年9月16日13時0分)
<米国政府も手がつけられない>サブプライム問題というのが、 "不確かさに便乗して悪意を埋め込む者がいる" と思わせるのである。
金融新商品の詳細なことはわかりようもないが、サブプライム領域の "リスキーな債権" を他のまともな債権とごったまぜにして世界中に売りさばいたのだから、米国住宅経済の悪化によって大元のリスクが発火してしまえば、世界中に火の手が上がるという事情は大方頷けるというものであろう。
まったくジャンルや周辺事情はことなるのだが、今、庶民を憤らせている例の "汚染米流通" 問題にしても、 "不確かさに便乗して悪意を埋め込む者がいる" という推移と極めて類似性があるように感じたのである。いつの世も、悪党どもは、 "夜陰" にまぎれて悪事を働くというのが相場であるが、現代という時代環境には意外とこの "夜陰" めいた環境が存在しているように思われてならない。いろいろな事柄が複雑に絡み合い、それらが巨大な範囲で流通したり、蠢いたりしているから、並みの人間の目線からは何がどうなっているのかわかりにくいからだ。
しかも、いろいろな事柄自体が専門分化しながらまことしやかに蠢いているため、凡人の目からはますます理解、了解がしにくいわけだ。
また、言うまでもなく市場主義経済に刺激された出来事となれば、利益を過剰に追求しようとする貪欲な流れは制御されにくくなろう。サブプライム問題のみならず、原油投機状況の破天荒を見ても一目瞭然だと思える。
まるで、魚市場に大量の野良猫たちが紛れ込み、食いたい放題食い荒らす動きがそう簡単に制御され難いのと酷似していそうである。
こうした市場主義経済の起こりがちな事態を深慮遠謀によって方向づけるのが、政治・行政というものなのではなかったのか。国の機関や監督官庁の役割のことである。
ところが、そうした責任を果たす立場が、何を "錯乱" してか、市場主義経済どころか、市場 "原理" 主義経済へと舵を切ったのだから、 "夜陰" は明るく照らされるどころか、闇の暗さを深めることになったのではなかろうか。まさに、 "監督官庁不在" 的状況の出現としか言いようがなかろう。
ちなみに、米国では共和党の次期大統領候補マケイン氏は、現在混乱の極みである経済情勢を見るに見かねてか、選挙方便か、金融経済行動の規制に言及したりしている。
この日本でも、今回の "汚染米流通" 問題の原因は、小泉政権による乱暴な規制緩和、市場原理主義が遠因だと指摘する声も上がっているようだ。
要するに、現状の惨憺たる事態の根底には、市場を駆け巡る野良猫たちの正体を甘く見過ぎていた監督官庁の無責任がしっかりと横たわっていたに違いない。あるいは、野良猫たちを好意的に見るようなおかしな立場に立っていたのかもしれない。
いずれにしても、 "不確かさに便乗して悪意を埋め込む者" たちを、当然のごとくしっかりと視野に収めた公的機関の取り仕切りが無くては話にならないと思われる...... (2008.09.16)
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