とにかく、ブッシュ政権による手が付けられないような悪政に、終止符ないしは休止符が打たれるのは、米国民だけではなく、世界中が歓迎できそうである。
今回の "金融危機" は、言ってみれば "やりたい放題" の金融パワーに起因していると考えられるが、その意味では、<共和党のレセフェール(市場放任主義)と異なり、インターベンショニスト(市場介入主義者)である民主党の大統領が誕生すれば、公共投資や市場規制強化などによって、世界経済が直面している戦後最大の危機が収束に向かう>(ロイター 2008年 11月 5日 14:17 JST 「米大統領選はオバマ氏が勝利:識者こうみる」)と期待できそうである。
今回、オバマ氏を支持した米国民の意図の共通する点は、この<共和党のレセフェール(市場放任主義)>によってもたらされた "腐った果実" はとても食えたものではない、ということだったはずではなかろうか。
ブッシュ大統領は、イラク問題をはじめとして他にも数え切れないほどに "腐った果実" を撒き散らかしたかと思えるが、その極め付けはやはり、世界中が近所迷惑をするような "金融危機" を誘発させてしまった、ということであるに違いなかろう。
そして、その責任はと言えば、大統領ブッシュひとりがどうこうというよりも、現状の "共和党" の失策であったと見ていいはずである。
まさに、米国民は "レセフェール(市場放任主義)" の自堕落な面をさらけ出していたのかもしれない現状の"共和党" に三行半(みくだりはん)を叩き付けるという英断をしたものだと思えた。
米国が "腐った果実" を処分し始めるのであれば、この国日本も、しっかりと "あやかる" 必要があるのではないだろうか。 "あやかる" といえば、政治家たちがどうこうという前に、米国民のように、国民自身がしっかりとした現状認識に立つ必要があるだろうし、自分たちがどんな社会を望むのかをきちんと表明する必要がありそうだ。
確かに、オバマ氏のような器の政治家が見当たらないのは残念至極ではあるが、先ずは、 "共和党" ならぬ "自民党" が果たして国民を幸せにするべくリードしているのかどうかを冷静に吟味すべきであろう。
"自民党" 政府の下での日本社会の現実にも、オバマ氏が憂えた米国社会の悲惨さと同様の現実が横たわっている。特に、深まる "格差社会" の底辺であえぐ人々の苦痛は、 "規制緩和" の美名の下に放置された日本型 "レセフェール(市場放任主義)" によるものではなかったのか、と言えそうである。
しかも、この国の場合、強い基本理念が希薄で、 "米国からの圧力" によって大きく "ぶれる" のだから恐れ入る。要するに、一国の主体的な指針が乏しいという "方向感なし" のありさまが嘆かわしいわけだ。
米国が、民主党オバマ大統領によって "チェンジ" 政策が推進されようとする時、勝手にこの国もいろいろな恩恵を受けられるのではないか、なぞという能天気なことは考えられないようだ。
これまでにも言われてきたとおり、米国の "民主党" 政権は、自国に内向きになる "保護主義" 的傾向があるわけだが、この点は、逆にパートナーを自負する日本に対してもシビァな要求を突きつけてくる可能性につながるわけだろう。
先日も、米国新政権がどのような外交政策を展開するかという問題を紹介するNHKのTV番組があったが、そこでは、今後米国は、対日関係よりも対中関係こそがメイン課題となり、日本の出方によっては、 "ジャパン・パッシング(日本軽視)" や "ジャパン・ナッシング(日本無視)" の風潮が立ち上がりかねない、と警戒されていた。
日本にとっての重要な課題は、この国が自身のビジョンをしっかりと形成し、主張することではないかと指摘していた。これを踏まえても、従来のように "対米依存" スタンスをただただ引き摺ってきた "自民党" 中心の政権が、こんな課題に挑めるのだろうかと大いに不安が募るのである。
折りしも、この国での政権選択選挙もまもなく行われるはずだ。 "チェンジ" へと立ち上がった米国民に大いに "あやかる" 必要がありそうな気がしてならないのである...... (2008.11.05)
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