米国の "一大政治スペクタクル" である大統領選を目(ま)のあたりにしたところで日本の国内政治に目を向けると、いかにもスケールが小さい。発想水準が "ちまちま" としている。まるで、小中学校の "学級" 内での出来事を見ているかのようでさえある。
「みんな、人に言われないでも "自主的・自発的" にやりましょうよ......」
という声が聞こえてくるようでさえある。
いや、別に "空耳" でもないようである。
今日、二つの政治関連記事が目についた。ひとつは、政府の追加経済対策の "給付金" 関連の記事であり、もう一つは、防衛省の田母神俊雄・前航空幕僚長更迭と退職金支給に関する記事である。その共通点が、 "自主的・自発的" という言葉なのである。
"自主的・自発的" とは、インフォーマルな集団や組織にあっては、個人尊重の視点が生かされた麗しいアプローチだとして拍手喝されもしよう。
しかし、国の政治領域の出来事に関して、そんな言葉が使われると、えっ? "学級活動" みたいね、と言いたくもなる。謝って済めば警察はいらない! という荒っぽい言い草と一緒にまではしないけれど、法制度が仕切りをせざるを得ない一般社会にあって、"学級活動" の基準のようなタラタラした責任逃れ対応はよそうじゃないか、と言いたいものである。
ちなみに関連記事を抜粋引用しておくと以下のようになる。
<給付金、自発的辞退促す案浮上 一定年収以上に
政府の追加経済対策に盛り込まれた総額2兆円の定額給付金に関し、全世帯に「引換券」となるはがきを送った上で一定の年収以上の所得者に対して自発的な辞退を促す案が浮上していることが6日、分かった。麻生太郎首相が求めている所得制限には法的措置が必要で手続きも煩雑になり、年度内支給が困難になるためだ。政府筋が明らかにした。
......
政府筋によると、各世帯ははがきを市町村の窓口に持って行けば引き換えに定額給付金を受け取れることを原則とした上で、はがきには一定額以上の所得がある人に対し「給付を辞退することができる」との文言を明記する。所得の線引きは年収1500万円前後が検討されている。>(2008/11/06 12:54 【共同通信】)
<論文応募隊員は78人 防衛相、退職金返納要求
防衛省は6日、田母神俊雄・前航空幕僚長が過去の侵略戦争を正当化する論文を発表し更迭された問題で、同じ懸賞論文に78人の航空自衛官が応募していたことを明らかにした。民主党の外務防衛部門会議で明らかにした。応募者総数は235人で、3割が空自隊員だったことになる。内局や陸自、海自の応募者はゼロ。防衛省は同日、航空幕僚監部の教育課が「自己研さんに役立つ」と全国の部隊に紹介していたことを明らかにし、空自トップの田母神氏の意向を踏まえて組織的に投稿していた可能性が出てきた。
これに関連し、浜田靖一防衛相は同日午前の参院外交防衛委員会で、田母神氏に約6000万円の退職金を自主返納するよう求める考えを表明した。......>(2008/11/06 12:28 【共同通信】)
注意を向けたのは、<一定の年収以上の所得者に対して "自発的な辞退" を促す>という箇所と、<退職金を "自主返納" するよう求める>という箇所なのである。
どうしてこんなふうに、耳障りの良い言葉の響きに乗じて "曖昧な基準" や "無責任な対応" をするものかと怪訝に思ったのである。
年金問題で、十分に "曖昧さ" を曝け出した政府なのだから、 "景気をつけろ" の主旨の景気対策だと言うのなら、うだうだとやっていないでスッキリとやればいい。そもそも、こんな<給付金>対策で何とかなる "町内の活性化キャンペーン" とは違うでしょ、と言いたい。効き目のないことをダラダラとやってないで、もっと奏功する対策を出す方に知恵と時間を振り向けたらよかろう。
また後者については、侵略戦争を正当化したからこそ "更迭" という(懲戒)処分対応に至ったのではないのだろうか。それを、円満退職ふうに "退職金支給" というのがどう考えても不自然だったのである。そしてこんな筋書きを書いておきながらこの期に至って<自主返納>を求めて辻褄を合わそうとするというのが、とても見るに堪えないわけである。まったく、官僚機構に対する国民感情を逆撫でするだけのように見える。
やはり、 "つなぎ内閣" だからこそ "腰が据わらず" に "心ここにあらず" のような失策を続けるのではなかろうか...... (2008.11.06)
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