"Suica" のほかにも、ここに来てプリペイド式電子マネー "Edy" とか、高速道路料金自動支払いサービスの "ETC" が運用されているし、住民基本台帳に関するICカードや運転免許証のICカードも実用化が近いとも言われている。
従来の、あるいは現行のカードシステム、 "磁気ストライプ式カード" では防ぎ切れなかった偽造などのセキュリティ問題やら、限られた搭載情報量という問題などが、 "ICカード" では無難に解決されるだけに、期待のほどは計り知れないということである。
たまたま、今、個人的に "ICカード"に関心を持ってみると、いろいろと興味深い事柄に行き当たることとなったのである。
ところで、この "非接触型ICカード" システムを考案し特許を取得しているのが、日本人(有村國孝 氏)であることは知らなかったし、知る人も少ないのではなかろうか。さらに、いち早くフランスで実用化された銀行カード(デビットカード)やクレジットカードなどの "接触型ICカード" にしても、同、有村 氏が、フランスよりも先の1969年に特許出願をしていたという。
しかしながら、現在では、この "ICカード" システムの運用において、日本はフランスに大きな差をつけられているようなのだ。さし当たって、どうしてそんなことになったのかにおのずから関心が向いてしまった。
言うまでもなく、現代の "技術" というものは、それから額面どおりの恩恵を得ようとするならば、もはや "技術" 領域という限られた範疇だけの問題解決では済まなくなっていそうである。周辺領域を含むイノベーションが必要だということだ。
この "ICカード" システムにしても、様々な社会システムのイノベーションと並行して推進されてこそ便利さが享受されることになる。 "技術" だけでの単独歩行というわけには行かず、その "技術" を適用しようと受け入れる社会状況が整ってはじめて "技術" システムとして生きることになるわけだ。
そんなこと当然ではないかと思われそうだが、実は、この辺にこそこの国日本のウイークポイントが横たわっていることを再認識させられたのである。前述した、有村 氏による特許出願がフランスよりも早かったにもかかわらず、その後の運用についてはフランスにかなりの水を空けられた経緯というのが、どうもこの点を鋭く物語っているようなのである。
今回、 "ICカード" システムの知識を補強すべくとある書籍(JICSAP 著『図解 ICカード・ICタグ』技術評論社)を読むことにしたが、その冒頭で、有村 氏は興味深い見解をしめされていたのであった。若干引用すると以下のようになる。
<ICカードの普及は、社会システムの構築とあわせて考えていかなければならない。>
<ICカードを何に使っていくのか、そして使う目的に対して社会がどう変わるのかということを、お互いに描いていかなければならない。>
<日本でICカードの普及が進まないのは、受け入れ側の問題。>
<社会システムそのものの普及ということについて、日本人は非常に苦手なのです。>
この最後の指摘は、実はかなり本質的な問題を孕んでいると直感したのであるが、この点の詳述は機会を改めざるを得ない...... (2008.11.30)
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