何かヘンじゃないか、大手大企業の経営姿勢は、という点が焦点であり、グローバリズム経済下での "国際競争力" という課題をリアルに追求するのであれば、もう少し長い目で、 "労働生産性" という課題を見つめて、安易に "非正規社員" 群に依存すべきではないのではないか、と書いたのだった。
この年末の寒空の下に放り出された "派遣労働者" たちが悲惨過ぎるという視点がもちろんある。だが同時に、日本経済のリーディング・カンパニーが、実のところ "聡明な経営判断" を選択していらっしゃるのかどうかに疑問を禁じえなかったのである。
偉そうなことが言えた柄でないことは先刻承知している。が、この国この社会の一員としては、とかく "将来展望に欠ける日本経済" が取り沙汰される折り、だからこそ、この国のリーディング・カンパニーが、リーズナブルな "国際競争力" を少しでも高めてもらいたいと願うわけなのである。
"国際競争力" の重要な要素であるコストダウンは確かに必要であろう。しかし、そのために "非正規社員" 群を安易に踏み台にすることは、あまりにも取って付けた策のように見える。その水準での "労働生産性" で、今後どこまで "国際競争力" を高めることができるのだろうか。この水準ならば、 "BRICs" の各国がキャッチアップしてくることは目に見えているように思ったりするのである。
今、求められているのは "創造的・労働生産性" とも呼ぶべきクオリティなのではなかろうか。だからこそ、そうした水準で構成された "国際競争力" を目指すには、安易に "非正規社員" 群に依存すべきではないと強調したわけだ。
ところで、こうした問題に関係して、はからずも今日、以下のような報道記事を目にした。たぶん、 "大口の広告スポンサー" の覚えが悪くなることを気遣い、 "一般各紙" はタッチしたがらない内容ではないかと思われる......。
<大手製造業、株主重視で人員削減 内部留保、空前の33兆円
大量の人員削減を進めるトヨタ自動車やキヤノンなど日本を代表する大手製造業16社で、利益から配当金などを引いた2008年9月末の内部留保合計額が、景気回復前の02年3月期末から倍増し空前の約33兆6000億円に達したことが23日、共同通信社の集計で明らかになった。
過去の好景気による利益が、人件費に回らず巨額余資として企業内部に積み上がった格好。08年4月以降に判明した各社の人員削減合計数は約4万人に上るが世界的な景気後退に直面する企業は財務基盤の強化を優先、人員削減を中心とするリストラは今後も加速する見通し。
08年度の純利益減少は必至の情勢だが配当水準を維持、増やす方針の企業が目立ち株主重視の姿勢も鮮明だ。
派遣社員などで組織する労働組合は「労働者への還元が不十分なまま利益をため込んだ上、業績が不透明になった途端、安易に人減らしに頼っている」と批判している。
集計によると内部留保の合計は01年度末の約17兆円から08年9月末に98%も増加。この間に米国の金融資本主義が広がり「株主重視」の経営を求める風潮が日本でも強まった。増配や自社株買いなどで市場での評価を高める経営手法がもてはやされた。>(2008/12/23 22:08 【共同通信】)
こんなに "巨額" の<内部留保>がありながら、世の中が大騒ぎしている "派遣切り" などを敢行するのは、少なくともわれわれの庶民感覚からは不可解でならない。また、日頃、企業イメージ向上のために莫大な宣伝広告費を費やしていながら、結構、一気にマイナス・イメージを振りまいているようにも見えたりする。
それはともかく、今こそ、その "巨額" の<内部留保>の資金で、 "地球環境課題" をテーマにした先行事業に打って出られたらどうなんでしょうかねぇ...... (2008.12.24)
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