ただ、ふと考えざるを得ないのは、それではこんな時期に "稼ぐ" ことはどんなに大変なことかということである。
生活者たちは、大半が、生活者であるとともに "働いて稼ぐ" 立場でもある。勤労者のみならず、企業経営者、とりわけわれわれも含まれる小規模経営者にしても、 "働いて稼ぐ" 立場に変わることはない。
つまり、いくら "モノが安くなる" 傾向にあっても、その傾向だけを有難がっているわけにはゆかないということなのである。 "モノが安くなる" 傾向はイコール "稼ぎにくい" 傾向でもあるからだ。
"稼ぐ" という言葉には、 "荒稼ぎ" というような悪いニュアンスが付着しているようだから釈明しておくならば、要するに、生活や事業経営などを再生産していくための "糧(かて)" を確保していくということである。決して "儲ける" などという欲深で贅沢なことを指しているのではない。
以前から、たとえば "１００円ショップ" などに出向くと、その "安さ" に仰天していた。そして、先ずは "有難い" と感じたわけだ。
が、同時になぜか "後ろめたい気分" が付きまとうことに気づく。というのも、これだけ最終販売価格が "安い" ということは、上流にいるはずの末端生産者はどんなにか "低コスト" でリリースしているのかとか、 "低労賃" であくせくしているのか、という点などを思い浮かべざるを得ないからである。
確かに、流通過程の冗漫なプロセスが割愛されているから "安い" とか、末端生産者にしても "まとまった受注量" が確保されればコストダウンも不可能ではない、という理屈が了解できないわけではない。しかし、それにしても、最終販売価格の "安さ" は、末端生産者の過度の困窮に跳ね返っていないわけはなかろう。
だが、考えようによっては、現時点およびここしばらくの経済状況では、多くの生産者たちが、 "１００円ショップ" 商品のこれまでの生産者たちと同じ困窮状況に追い込まれるという気がしてならないのである。
モノが売れにくい環境にあって、 "モノが安くなる" のは、いわゆる "デフレ" と言われるわけだ。不況下では付き物の事態であり、今さらどうこう言うこともなさそうではある。だが、こうした環境にあっては、 "モノが安くなる" ことのメリットを享受した途端に、 "収入の目減り" や "無収入へのリスク" によって脅かされざるを得ない、という "負のスパイラル" が強まっていくわけであろう。そしてその "悪循環" が容易には断ち切れない難しい流れとなっていくかのようだ。
しかし、 "冷徹な道理" をそれとしてわかった上でも、勤労者や小規模経営者たちは生きることを止めるわけにはゆかない。
グローバリズム経済の中で、国際競争力の維持・増大こそが "明日の" 日本経済の死活問題だ、だからそのためには大企業は、他の領域を犠牲にしても "収益構造" を崩すわけにはゆかない、という基本方針が、やはり "虚ろにしか響かない" 。
たぶん、死活問題は "明日の" 日本経済ではなく、 "現状とこの直後の" 日本経済なのではなかろうか。 "足元の地獄化状況" を認識できずして、 "明日の" 状況なんぞ構想できるわけがないのかもしれない...... (2009.01.18）
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