"サルベージ" とは言うまでもなく、 "海難救助" の意である。が、他のジャンルでも暗礁に乗り上げてしまった事態を "救出" するアクションの意味で使われている。
ここで "システム・サルベージ" と言ったのは、要するに、ITシステム関係において、その運用・改造・開発を問わず、トラブルに遭遇してまさに "お手上げ状態" になってしまった状態を "救出" するアクションのことなのである。
こんなことを今話題にするのは、まさに現状の "経済環境の急激な悪化" から、いろいろな事態が派生していそうだと想像するからである。
もちろん、その当該システムが、 "寝かせておく" ことで間に合うのであれば、問題先送りという選択も可能であろう。しかし、必ずしもそんな悠長なことを言ってはいられないものもあるはずだ。
これまで稼動しており、これからも稼動し続けることが不可欠であったり、その際に何らかの改造が必要であったり、また、一刻の猶予もないかたちで待ち望まれていながら、開発自体が滞っているようなケースも大いに考えられる。
ところが、現状の "経済環境の急激な悪化" は、リストラなどをはじめとして、過激とも言えるような "コスト削減・人員削減" を推し進めている。こうした事情の "しわ寄せ" を喰らえば仕事の現場ではさまざまな "軋轢" が生じることは明白であろう。
そして、とりわけその"軋轢" が大きくなってしまい、まさに "暗礁に乗り上げる" かのような事態に悪化しがちなのが、ITシステム関係ではなかろうかと推定させられるわけだ。
どんな製品でも、今どきは "コスト削減" を強いられないものはなかろうが、ITシステム関係、ソフトウェア関係でもそれは変わらない。そして、 "削減" 対象は多岐に渡るが、どうしても ""当面の稼動 以外の事柄が優先されることとなり、 "ドキュメンテーション" などの "いざという時" に備える作業は、 "削減" されないまでも後回しにされるのが常であろう。
ところが、現状の "経済環境の急激な悪化" は、その "いざという時" をあっという間に引き寄せてしまった観がある。いわば "暗黙知" を担った貴重な技術者たちの多くが現場から離れてしまうという事態のことなのである。
これまでにも、こうした傾向が幾度かあった。ITバブルが弾けて不況に突入した際にも、多くの技術者たちがIT業界から離れて無縁の領域へと雪崩れ込んだ。とくに、古いとされた技術要素、たとえば "アセンブラー言語" の熟練技術などを担った経験者たちが当該業界から大量に流出してしまったわけだ。その後に "埋め込み型システム" などが再注目されたことがあるが、それをこなせる技術者たちはとことん減少していて、開発の見通しを狂わせることになったと聞いている。
多分、現状の "経済環境の急激な悪化" は、近々景気が上向きになった際に、必要技術者が予想以上に不足するという事態を招来するに違いなかろう。
そして、新しい技術要素をこなす技術者たちは自然増が期待できたとしても、従来技術やそれによって構築されたシステム(レガシー・システムと言っていいのかもしれない)に対処できる技術者は極めて望み薄とならざるを得ない。
また、これが、そのうちに到来することであればまだしも、すでにその予兆が現れはじめている気配もありそうなのである。とかく、 "当面の収益性" が強調される現時点の経営風潮にあっては、技術的分野での問題含みの事態も切り捨てられてしまうのかもしれない。
今、いたるところに、 "システム・サルベージ" の必要性の芽が吹きはじめているようだ...... (2009.01.21)
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