"底を打たせる" べきなのは、経済状況だけではない ......

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 ラジオ番組で、とある "哲学者" のつぶやいた事が耳に残っている。
 地球温暖化問題に象徴されるような、巨大な問題が暗礁に乗り上げてしまったかのような現代には、ざっくりといって大きな二つの原因がある、と。
 その一つは、 "個人の孤立化" であり、もう一つは、 "超スピード化した環境変化" である、と。特別に新奇さがある指摘ではないが、まさしくその通りだと思えた。
 両者に共通する点は、自然なり社会なりの環境そのものを制御、コントロールする主体が脆弱ないしは無力となったことではないかと判断できる。
 民主主義という考え方の本質は、個人の尊重ではあるが、では個人とは何かと言えば、 "民(たみ)" という "集合的存在" をベースにするしかないわけであろう。人間の存在の仕方それ自体が "集合的存在" でしかあり得ないからだ。それは、生物学的レベルでもそうであるし、文化的レベルでももちろんそうであろう。
 ところが、現代という時代環境は、過剰なかたちで個人を "集合的" 状態から引き剥がしてしまっている。確かに、個人尊重という旗印の下に、個人を "不当な集合体" から解放することは歴史の必然である。過去においては、個人はそうした "不当な集合体" (アンシャン・レジーム)からただただ "抑圧" されていたからである。
 しかし、個人の解放は、個人が依って立つ不可欠なベースでもある "正当な集合体(集合性)" までも洗い流してしまっては、解放でも何でもなくなって、巨大な "数珠" から "糸" を抜き去って、 "数珠玉" を撒き散らかしたに過ぎないようにも見える。
 そもそも、撒き散らかされた所在ない "数珠玉" のようになってしまうことを、個人の解放だと考えたのではなかったはずではなかろうか。
 しかし、現状では、 "個人の自由" という "カタログ" を手にしつつ、個人たちは "糸" から外された "数珠玉" のごとく、あてどなくコロコロと転がり、不安感と無力感に浸されてわけも無く苛立っているだけなのではなかろうか。

 ふと考えてみると、いや、考えなくてはいけないのだろうと思うが、こうした "糸" 抜き "数珠玉" 状態を、密かに歓迎している勢力があるのかもしれない。
 いや、歴史を振り返って図式的に言うならば、かの "ナチスドイツのヒットラー" は、当時のドイツに広がっていた中産階層の "糸" 抜き "数珠玉" 状態= "個人の孤立化" とその不安定さを最大限利用したのであった。(c.f. E・フロム『自由からの逃走』ほか)歴史的社会のそうした極めつきの不安定さを虎視眈々と睨み、では新しい丈夫な "糸" で、再度、決して崩れることのない強固な "数珠" を作ろうじゃありませんか、と誘ったのではなかったか。
 この辺のロジックが、 "ヒットラー" に限らず、その後も各国において政治状況悪化の失地挽回策として利用されてきたことは、ちょっと知性を働かせれば容易にわかることだと思える。国際情勢の中で孤立する政権のリーダーは、とかくこうした路線で "仮想敵" の脅威を誇張したり、でっち上げたりしながら、 "糸" 抜き "数珠玉" 状態に "危ない糸" を通そうとするのだ。

 ついつい、こうした状況について言及するとマクロな政治談議になってしまうのだが、マクロなきな臭い状況がある時には、また、等身大の生活の場でも、 "糸" 抜き "数珠玉" 状態であるがゆえの悲劇が頻発するようである。
 他者を人間とは思わないような凶悪犯罪はもとより、元来が社会福祉の問題であるにもかかわらず、その荷の重さを "個人化・孤立化" させていることから来る絶望自殺の問題、そして、 "社会の宝" 以外ではない子どもたちがどんなに "DV" を受けて見聞きしても見て見ぬ振りをしてはばからない "孤立化" 極みの感覚!
 こうした最悪の状況を実感的に見つめないかぎり、たとえ経済状況が最悪の事態から脱して "底を打つ" ことがあろうとも、この国の堕落への一途に "底を打つ" ことはあり得ないのではなかろうか...... (2009.04.25)












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