「鼠の為に常に飯を留め、蛾を憐れみて燈を点けず」『菜根譚』 ......

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 かねてより『菜根譚(さいこんたん)』には興味を抱いてきた。人によっては "座右の書" と言い切る人もいるが、それほどまでではないものの奥が深いことは確かなようだ。
 とりわけ、今のような時代環境にあっては、一々頷かされたりする。就寝前などに枕元の明かりで文庫版のそれに目をやっていると、日毎 "撹乱" され続けている気分が何となく落ち着いてくるような気がする。

 先日も、とある箇所に目が止まった。次のような部分である。
<「鼠の為に常に飯を留め、蛾を憐れみて燈を点けず」と、故人の此等の念頭は、是れ吾人の一点の生々の機なり。此れ無ければ、すなわち所謂土木の形骸のみ。>

 [訳文]
 「ねずみのためにいつも飯を残しておき、蛾が火に飛び込むのをかわいそうに思って、灯火をつけないでおく」と蘇東ば(そとうば)は詩に詠んでいる。
 古(いにしえ)の人のこのような心がけは、これこそ現在の私達が生きていく上での一つの重要な心のはたらきである。この心がけがなかったならば、まるで土や木で作った人形と同じように、まったく心を持たない形だけの人間にすぎない。
 これをもって、現在の一般的風潮をなじろうとしているのではない。そんなことをしたって何の効果もないことは重々わかっている。
 ただ、時代がどう変わろうとも、人の心にはこうした感性がまったく消え失せてしまっているわけでもなさそうなのではないかと思うだけなのである。
 優しさだとかどうだとかと、偽善臭が漂うようなポーズを作ろうとしているわけではなく、何となく "そうだよなぁ" と頷いてしまうのだ。幸いにも世界を支配するほどに脳を発達させることになった人間に比べたら、いや、比べものにならない脳の働きの水準で、おそらくは戦々恐々として命を維持している小動物たちや虫たちなのである。その彼らが、人間のちょっとした選択で命を長らえることができるのであれば、そのちょっとした選択に目を向けたとして何ほどの煩わしさだろうかと思うのだ。
 もちろん、そうした感性が宿るならば、その感性は決して小動物たちや虫たちだけに向けられるはずはなく、自身よりもはるかにハンディを背負っていると思われる者たちすべてに向けられるのではなかろうか。
 逆また真であり、何ほどの煩わしさかと思える些細なことを黙殺していく感性は、やがてどんどんと "水位" を上げてゆくこととなり、誰の生命をも決して尊いものとは見なせなくなるのかもしれない。

 無機的な機能物を人間は多々作り出しているが、自身を含め、自然の摂理に添った "命" というものを創造することはほとんど不可能なことであろう。それは、たとえDNA科学を加速的に発展させたとしても到達不可能であるに違いない。
 だから、不可思議な摂理の下で生じている命を、たとえそれが小さなものであっても関心を払わざるを得ないわけだ。 "大" 生命の人間であるならば、それくらいの目配りがあっても何の不思議もないはずだろう...... (2009.06.22)












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