<夜店の裸電球に照らされた「般若」の面の木肌......> ......

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 最近、やや "根気" が薄れたかと思い立ち、再び "面打ち" を始めることにした。
 振り返ってみると、思い立ってから10年位は経っているような気がする。継続させていれば、今頃は "面打ち教室" でも開かせていただいていたかもしれない。
 実は、5年前にこの日誌で "面打ち" に関して書いていた。<夜店の裸電球に照らされた「般若」の面の木肌...... ( 2004.05.05 )>
 読み返してみると、現在の心境のほぼ大半がそこにあった。そんなわけで、ちょっとその文面をなぞってみようかと思う。

< 変わった趣味といえば、もう何年も前に「面打ち」をやり始めた。「面打ち」といっても剣道ではなく、能面の木彫りなのである。「翁」の面の三、四分がたの彫りかけと、「般若」の面の木材下拵え済みを、ほこりが被るほど長らく放置してきた。どうも、木材の材質を選ばずに、あり合わせの硬いものを使ってしまったため、骨が折れ過ぎていやになるまま放置してきたというのが実情であった。
 が、ここ最近、急にまた始めたくなってしまったのである。......>(同上)

 今現在の心境は、この "5年前の心境" と寸分違わない。そして、再びその<「般若」の面の木材下拵え済み>を彫り始めたのである。
 また、動機その1では次のように書いている。
< まず、とかく現代のようなスピード時代にあっては、「こつこつ」と何かに没頭するという手間の掛かることは避けがちとなる嫌いがある。......「じわーっ」とした満足感は得られようもない。それが寂しい。手塩をかけ、時間をかけ、命をかける、ことまではしなくともよいが、思いっきり手間をかけて、その分思いっきり「じわーっ」「じわーっ」とした充足感を味わいたいと思わずにはいられないのである。また、そうした楽しいやりかけのちょっとした手仕事があり続けるというシチュエーションは、日常生活に潤滑油を注すような効果があると思える。手持ち無沙汰というもったいない時間を確実に埋めてくれるはずでもある。>(同上)

 動機その2は以下のとおりだ。

< ほかのことではなく、なぜ「面打ち」なのかということになる。
 絵画も好きではあるが、もともと、造形というか彫塑には惹かれていた。三次元の空間を造り出すことにはなぜだか興味がそそられてきた。その裏には、それが結構難しいという事情が隠れているのかもしれない。生半可に挑むと、平板となり、薄っぺらとなってしまい、一向に奥行きのあるリアルな立体となり切らないのが彫塑なのである。
 人間の視覚は、二次元平面には強いものの、奥行きを持つ三次元空間にはもろいのではないかと感じている。それは、眼の構造から考えても当然のような気がするのだ。要するに、経験的なカンで奥行きを推定しているに過ぎないと思われるからである。
 つまり、「脳作業」(農作業ではない)なのであろう。だから、造形、彫塑に挑むことは、脳の活性化にいいのである。しかも、両手とその指をこまめに駆使せざるを得ない作業は、確実に脳を活性化させずにはおかないはずである。中高年の「社会復帰」にはこれほどいい趣味はないというべきなのであろう。>(同上)

 確かにこのとおりなのである。今現在も、「般若」の顔の "眼、鼻、口" の<奥行きを持つ三次元空間>という点で悩ましい思いをしている。
 また、 "のみ" や彫刻の操作に梃子摺りながら、この操作が "脳のアンチエイジング" に効くわけだな......、と納得しているのである。

 しかし、こうした動機のその下にあって、 "しば火" のように絶えることなく静かに燃え続けていた "メタ動機" とでもいうもの、それについても以下のように書いていた。

< 「面打ち」への関心にほのかに火が付けられたのは、実は、もう四十年以上前のある事実にあったと言える。北品川での小学校時代のことである。
 当時は、よくあちこちの駄菓子屋を友だちと連立って巡ったり、駅前商店街で催された七のつく日の縁日にも繰り出したものだった。そうした経緯で、ある見事な木彫の「般若」の面に遭遇したのであった。しかも、その店のオジサンは、傷痍軍人であったのか片腕が失われていたのである。にもかかわらず、上半身をかがめるようにして「般若」の木彫りを進めるその姿は、子ども心にも強烈なインパクトを受けたものであった。
 縁日の夜店でも、駄菓子類とともに、裸電球にその自作の「般若」の面が見事な陰影を作りながら飾られていたし、そのオジサンの駄菓子店に行っても、薄暗い店の上方に白い木肌の「般若」の面がぶら下がっていたのを覚えている。当時の自分のお小遣いからは手が届かない値段であったのだろうと思う。当然のことである。だから、欲しいと思っても買おうとは思えなかったのだろう。
 その「般若」の面のことは、もちろん口さがない悪がき連中の間では知らぬ者はいなかった。しかし、いろんなものを作ることを自負していたわたしも、さすがにその面を作ろうとするほどの大胆さはなかった。見るからに複雑で難しいという印象が、子どもの野望をも躓かせるからであった。>(同上)

 この点は、無論変わりようがない。
 だから、

< 何年か前に「面打ち」を始めたいと思った時にも、もちろん、夜店の裸電球に照らされて輝いていたあの「般若」の面が彷彿として浮かんでいたのは言うまでもなかった。
 ひょっとしたら、また、今は息づいている「面打ち」への衝動がいつの間にか薄らいでしまうことになるのかもしれない。しかし、子どもの頃の眼に焼きついたあの「般若」の面の白い木肌が記憶に残っている限り、「面打ち」への衝動は懲りずに何度でも蘇るような気がしている......>(同上)

 <「般若」の面の白い木肌の記憶>とは、決して喪失してはいけない何かであるような、そんな思いが...... (2009.10.26)












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