懐かしい光景だと思えた。近くのホームセンターへ買い物に行った時のことだ。
このホームセンターでは、時折、ショップ内の一角に特別のコーナーを設けて "客寄せ" を図ろうとしている。
今日は、 "刃物研ぎ" が催されていた。その光景も、最近の街角ではあまり見かけない懐かしいものではある。昔は、こうした行商的な職人さんたちを街中でちらほら眼にしたものだった。鍋ややかんの穴を修理する職人さんも見かけた覚えがある。
ことさら懐かしいと感じたのは、その職人さんというよりも、その作業する姿をやや距離を置いて食い入るように見つめていた幼い男の子の様子なのである。
嬉々とした表情で、包丁をシャリシャリと手際よく研ぐ年配の職人さんの動きを目で追っていた。時折、その方向を指差しながら何か喋っていて、見る角度を直すつもりか、しゃがむその姿勢をチョコチョコと横に移動させたりもしている。興味津々で、おもしろくてしょうがない、といった熱の入れようである。
このホームセンターでは、時折、ショップ内の一角に特別のコーナーを設けて "客寄せ" を図ろうとしている。
今日は、 "刃物研ぎ" が催されていた。その光景も、最近の街角ではあまり見かけない懐かしいものではある。昔は、こうした行商的な職人さんたちを街中でちらほら眼にしたものだった。鍋ややかんの穴を修理する職人さんも見かけた覚えがある。
ことさら懐かしいと感じたのは、その職人さんというよりも、その作業する姿をやや距離を置いて食い入るように見つめていた幼い男の子の様子なのである。
嬉々とした表情で、包丁をシャリシャリと手際よく研ぐ年配の職人さんの動きを目で追っていた。時折、その方向を指差しながら何か喋っていて、見る角度を直すつもりか、しゃがむその姿勢をチョコチョコと横に移動させたりもしている。興味津々で、おもしろくてしょうがない、といった熱の入れようである。
自分も、小さな頃には、ああであったに違いないと思った。取り立てて変わったことがあるはずのなかった当時の近所の日常空間。そんなところへ、こうした行商的に職人作業をする者が現れようでもすれば、ああして、そのおじさんの斜め脇にでもしゃがみ込んで、何もかもを見届けようとしたはずである。
そして、場合によっては、本業の "研ぐ" 作業とは関係のないおじさんの単なる "癖" 、たとえば汚れた手ぬぐいを取り出しては時々鼻をかむ動作までも、それが作業上の一環なのだと思い込んだりもしたはずである。
そういえば、うちの息子が幼かった時のことを思い起こす。しばしば、股に挟む格好でバイクに同乗させていた。その時、発車前には、いつも決まったように、ハンドルの右側に付けられたサイドミラーの表面の埃を人差し指で "クルクル" と拭う癖が自分にはあったようだ。後方確認に支障がないように鏡面の曇りを除去していたのだろう。
ある日、息子の三輪車に親ばかの思いでサイドミラーを取り付けてやったことがあった。息子はもちろん大喜びであった。が、腑に落ちないことがあった。三輪車に跨るや、息子が先ず始めたのは、何とその "クルクル" という動作だったのだ。思わず笑ってしまった。
「何してるの?」
と、意地悪く聞いてやると、
「だってお父さんいつもやってるじゃない」
と言ったものである。自転車屋で買ったばかりの新品のバックミラーは曇りの一点もなかったはずなのだが......。
幼い子どもの観察力というものは、奇想天外と言うほかない。しかも、自身の興味津々の事柄については、まるで "オウム" 並みの再現力まで発揮する。
きっと、 "刃物研ぎ" の作業を見つめていたその幼い男の子も、その職人さんの何もかもを観察し尽くしたのではなかろうか。
そして、今晩あたり、お風呂に入った時にはその "再現フィルム" を実演しているのかもしれない。
「ぼく、大きくなったら "研ぎ屋" さんになるんだ。こうやってね、シャリシャリ、シャリシャリって擦るの。そうするとね、何でも切れる包丁が出来上がるんだ......」
「ウーン、そいつは凄いや! それはわかったけど、どうして何度も、鼻も擦らなきゃいけないんだい?」
「だって、ホームセンターでのおじさんもこうしてたもん。きっと、こうしないとよく擦れないんだよ......」
♪チャンチャン♪...... (2009.12.25)
そして、場合によっては、本業の "研ぐ" 作業とは関係のないおじさんの単なる "癖" 、たとえば汚れた手ぬぐいを取り出しては時々鼻をかむ動作までも、それが作業上の一環なのだと思い込んだりもしたはずである。
そういえば、うちの息子が幼かった時のことを思い起こす。しばしば、股に挟む格好でバイクに同乗させていた。その時、発車前には、いつも決まったように、ハンドルの右側に付けられたサイドミラーの表面の埃を人差し指で "クルクル" と拭う癖が自分にはあったようだ。後方確認に支障がないように鏡面の曇りを除去していたのだろう。
ある日、息子の三輪車に親ばかの思いでサイドミラーを取り付けてやったことがあった。息子はもちろん大喜びであった。が、腑に落ちないことがあった。三輪車に跨るや、息子が先ず始めたのは、何とその "クルクル" という動作だったのだ。思わず笑ってしまった。
「何してるの?」
と、意地悪く聞いてやると、
「だってお父さんいつもやってるじゃない」
と言ったものである。自転車屋で買ったばかりの新品のバックミラーは曇りの一点もなかったはずなのだが......。
幼い子どもの観察力というものは、奇想天外と言うほかない。しかも、自身の興味津々の事柄については、まるで "オウム" 並みの再現力まで発揮する。
きっと、 "刃物研ぎ" の作業を見つめていたその幼い男の子も、その職人さんの何もかもを観察し尽くしたのではなかろうか。
そして、今晩あたり、お風呂に入った時にはその "再現フィルム" を実演しているのかもしれない。
「ぼく、大きくなったら "研ぎ屋" さんになるんだ。こうやってね、シャリシャリ、シャリシャリって擦るの。そうするとね、何でも切れる包丁が出来上がるんだ......」
「ウーン、そいつは凄いや! それはわかったけど、どうして何度も、鼻も擦らなきゃいけないんだい?」
「だって、ホームセンターでのおじさんもこうしてたもん。きっと、こうしないとよく擦れないんだよ......」
♪チャンチャン♪...... (2009.12.25)
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