"自分ごと" として受け止める想像力や感性、そして真摯な知性が ......

　ただ、 "偶有性" という言葉で言いたかったことは、決して "確率論" 的なレベルでの問題ではなかった。いや、そんな "確率論" 的な計算ほど当てにならないことはないとも言える。
　むしろ注目したいのは、 "あの被災地で被災した人々" と "自分" とは、基本的に何ら "異ならない" と洞察し切れるかどうか、という点なのだろうと思っている。
　したがって、被災した人々の不幸を "他人ごと" だとして黙殺することの方が "不自然" ではないかとさえ思えるわけだ。だから、その人たちの "苦痛・痛み・苦悩" 、 "不幸" そのものを "わからない" と見切ってしまうことは "不自然" 極まりないはずだ。
　もしそうしたことが起こるとすれば、人間としての "受信機" 部分に致命的なトラブルが生じているか、あるいは、必要な情報が発信できない "送信機" 側（ジャーナリズムなりメディアなり）における致命的な怠惰かのどちらかであろう。

　後者の側面にも問題は潜んでいそうだが、より嘆かわしいのはやはり前者であるのかもしれない。
　一言で言ってしまえば、接することが可能な情報の大半を、かなりムリな感覚でもって "他人ごと" として仕分け、 "自分ごと" を収納する "容器、器(うつわ)" の用途を渋りに渋っている......、としか見えない。そんなことで、たとえ "自分探し" なんぞをしたところで、 "空疎さ" だけしか見えてこないのも当然なのかもしれない。
　もとより、昨今では他者への "同情心・共感心" が希薄となっていると専ら指摘されているが、 "自分ごと" 向けの "容器、器(うつわ)" に、他者や社会に関する情報が皆無に近いという状態だとするならば、 "同情・共感" の感情が起動すべくもない、のかと考えられる。

　こんな状況下で、 "聡明な人々" は、若い世代の者たちも含めて、 "不幸の現場" への支援という意図で "ボランタリー活動" を行なっている。
　もちろん、額面どおりに "優しい" 人々たちだと敬服するほかない。そうした、 "他人ごと" の "器" と "自分ごと" の "器" の仕切りを取り払っている人たちこそ、現代という "セコイ" 環境が提供できていないところの、人間にとっての豊穣(ほうじょう)な事実、真実を自然に鷲掴みにしているような気がしてならない。
　もはや、現代人にとって "ボランタリー活動" とは、 "必須科目" となっている気配ではなかろうか......　(2010.01.17）