かつて、コンピュータ業界では"2000年問題"(グレゴリオ暦2000年になるとコンピュータが誤作動する可能性があるとされた問題)で大騒ぎしたことがあった。
言葉が瓜二つの問題なのだが、"2010年問題"という、これも余談を許さない危機に違いない、そんな問題が起こっていることを知った。
<2010年問題(にせんじゅうねんもんだい)とは、医薬品業界において2010年前後に大型医薬品の特許が一斉に切れ、各メーカーの収益に重大な影響をもたらすと懸念されている問題である。>(「2010年問題」 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 )
これがなぜ "危機" 的な問題なのかと言うと、次のような事情が関係していると言われている。
< アルツハイマー病、糖尿病、うつ病...。患者やその家族が待ち望む「新薬」の開発が、今後進まなくなるのではないかという不安が広がっている。今月には、アルツハイマー病の特効薬と期待された新薬「ディメポン」について、「効果なし」という治験結果が報告され、患者とその家族の間で落胆が広がった。
実はこの20年、製薬業界では「ヒット新薬」が生まれない事態が続いている。
製薬会社は巨額資金を投入して新薬の開発に取り組んでいるが、アルツハイマー病やがんなどを引き起こすメカニズムの解明が思うように進まず、新薬誕生には至っていないのだ。さらに、こうした状況に追い打ちをかけるのが"2010年問題"と呼ばれる危機だ。製薬各社が収入源としてきた「主力商品の特許」が、今年に入って軒並み切れる。そのため、製薬企業の特許収入は激減し、新薬開発に必要な巨額の資金が手当できなくなる恐れが強まっているのだ。......>( 「新薬が生まれない」(NHK 追跡!A to Z / 2010.03.13 ) )
こうした事情で、<"命に関わる新薬開発の危機">が広がろうとしているようなのである。
元々、 "新薬開発" には一般的に、臨床以前の段階から、認可を受けての臨床段階等など膨大な時間(10年?)が掛かり、当然、開発コストも巨額(1000~1500億円?)に上ると言われてきた。
もちろん "製薬会社" は "収益性" を目指して動く。 "新薬開発" の "コスト" に関して "コスト割れ" が生じるリスクを取るはずはない。
だが従来は、主に二つの面でそのリスクが "リカバリー" されていたらしい。
一つは、 "疾病原因が判明している" 主要な大型疾病に対する "新薬開発" だったと言う。同じ "新薬開発" であっても、こうした前提があれば目的達成が堅いし、開発後のコスト回収(捌かれ方)も堅いということだったのであろう。
しかし、現時点で残され、期待されている "新薬開発" の対象疾病は、 "アルツハイマー病やがんなど" となっており、これらは "原因不明" に近い状態が今なお続き、当然そこから "開発コスト" が計算確定できないそうなのだ。
そして、もう一つの面が、前述の"2010年問題"に関わる「特許」の経済的効果だったそうである。その金額規模は定かではないが、要するに "特許収入" は "新薬開発" のための "投資" を後押しするのに不足はなかったものと思われる。
つまり、「特許」有効期間は、競合他社が市場参入できないわけだから、いわば "独壇場" のビジネスとなるからであろう。
ところが、そうした「特許」が "切れる" と、<他社が同じ構造の薬を販売することが許されるようになる。こうした後発医薬品(ジェネリック医薬品)は、臨床試験の巨大なコストの負担がないため、先発品に比べて安く販売できる。>(「2010年問題」 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 )ようになる。そのために、 "製薬会社" の "売上額" は急降下するらしい。そんな状況だと、とても、 "新薬開発" の "投資" をすることはできない、と言うことのようなのである。
こうした医療分野にも、企業、資本の論理が貫かれている事実は、わかっていたことだったとしても、やはりシビァだと感ぜざるを得なかった。
特に、いわゆる "難病" に属する "希少疾病" (患者数が少ない疾病)の患者さんたちにとっては、 "新薬開発" の条件整備がただただ遠のくかのごとくであり、やり切れない心境であろうと推察する。
前述の番組では、<低コストの新薬開発の試み>についても紹介されてはいたが、やはり "医も算術!" という思いが到底打ち消せるものではなかった...... (2010.04.12)
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