テンに襲われて死ぬトキの姿と "孤独死・無縁死" という社会現象とがダブル? ......

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  "所属(感)" というテーマについて今しばらくこだわって行こうかと思う。
 ところで、先月、痛ましい事故があった。佐渡トキ保護センターで、特別天然記念物トキ9羽が、ケージに侵入したテンに襲われ死んだ事故(事件)である。
 多分、多くの人々が落胆したり悲しんだりしたことだろうと思う。特別天然記念物としてのトキの繁殖計画がこれで破綻するのではないかという失望が先ずあろう。とともに、 "保護" されるはずのケージの内側が、逆にトキたちの逃げ場を奪い、残酷な修羅場となったことへの言い知れない思いが渦巻いているのかもしれない。
 ある識者は、この事故(事件)を、現代の日本(の経済)の問題を読み解く上での、暗喩的な視点として取り上げていた。

<......このニュースを耳にして私は「これはトヨタ問題や現代の日本に通じるものがある」と思った。......
 とても貴重な鳥であるにもかかわらず、ケージには隙間がたくさん空いていた。テンが侵入するくらいの大きさの隙間をなぜふさがなかったのか大いなる疑問である。トキの繁殖はかなりの予算と人手をかけて取りかかっていた事業だが、あまりにも管理が杜撰(ずさん)である。関係者の能力を疑わざるを得ない。
 なぜこのような杜撰な仕事をしていたかは容易に想像がつく。彼らにとってトキを囲うケージは、トキを守るためのものではなく、逃げないようにする檻(おり)だったのだ。だから外敵が侵入してくることは想定外で、まったく考えていなかったのだろう。こういう人たちが"専門家ヅラ"しているのは納得がいかない。......>( 『世界経済の地図から消えていく日本とトキの姿』/大前研一の「産業突然死」時代の人生論

 同氏による経済問題上の "暗喩" の意味はとりあえずおくが、ここで注意を向けておきたいのは、<トキを囲うケージは、トキを守るためのものではなく、逃げないようにする檻(おり)だった>という指摘なのである。ややシニカルな表現にも聞こえるが、 "逃げられなかった" がゆえに、獰猛なテンに襲われて死んだわけだから、その表現は決して的外れとはなっていないと言うべきか。
 ここで着目したいのは、 "ケージ = 逃げないようにする檻" という点なのである。もちろん、有り体に言えば "ケージ = トキを守るための檻" とも言える。だが、結果がそうではなかったのだから虚しい。

 何を言いたいのか見透かされそうであるが、 "所属(感)" というテーマに言及している文脈からすれば、やはり、 "ケージ" と "集団・組織・社会" とのアナロジーということになる。
 つまり、 "個々人" は何らかの "集団・組織・社会" に "所属" する or させられることで生きているわけだが、 "集団・組織・社会" もまた、所属メンバーたちを "守る" 面と "逃げないようにする" 面との両面を備えている、と言うべきであろう。
 詳細な議論は思い切って省くとして、さまざまな "集団・組織・社会" (のスポークスマンたち)は、とにかく所属メンバーたちを "守る" ことを力説しながら、所属メンバーたちが "逃げないようにする" ことに細心の注意を払って来たはずである。
 この辺の事情は、戦国の世の領主と領民との関係から、場末の "ナワバリ" 組織、そして企業組織と消費者・ユーザーとの関係に至るまで、形は雑多であっても基本構造に変わりはなさそうである。
 多分、所属メンバーたちを "守る" という面が、所属メンバーたちを満足させ、納得させている限りにおいては、もう一側面である "逃げないようにする" という "拘束性" の面はさほど自覚されないかもしれない。が、前者の面での満足、納得が空疎なものとなるに至れば、途端に "拘束性" が鬱陶しいものとしてクローズアップされてくる。そして "所属" すること自体をも疑うメンバーが出てきたりすると、 "集団・組織・社会" 側は、 "囲い込み" という強硬手段をさえ駆使するようにもなる。まさに、 "ケージ = 逃げないようにする檻" さながらに形骸化してしまう場合もありそうだ......。

 現代という時代環境は、営利的な "集団・組織" による "囲い込み" 競争ばかりが激化していて、所属メンバーたちを "守る" という面は形骸化している、いやそうならざるを得ないようなトレンドにありそうだ。そして、最も形骸化しているのは、 "全体の社会" 、"国家" による所属メンバーたち(=市民・国民)を "守る" (=生きる権利を守る!)という、その側面ではなかろうか。
  "逃げないようにする檻" としての "ケージ" のような社会環境なんかではなく、市民・国民の "個々人" のレベルでは防御しようのないさまざまな障害から、市民・国民の生活を "守るため" の、そんな "セーフティ・ケージ" へと変貌を遂げるべきであろう。
 獰猛なテンに襲われて死ぬトキの姿と、 "孤独死" 、"無縁死" という社会現象とが奇妙にダブル・イメージとなってしまう現在の時代状況は、大間違いである...... (2010.04.06)













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