"ロケ地巡り" と言うような "観光ツアー" がある。出不精な自分もかつて、北海道へのパックツアーにお供し、ラベンダーで有名な富良野市(ふらのし)に訪れた時には、ラベンダーもさることながら同時にテレビドラマ「北の国から」のイメージを想起したものであった。
もちろん、現地のあちこちにそのアピールのための "タグ" (※注.1)が貼られてあったことは言うまでもない。だから仮に、ふらりと訪れた人であっても、へぇーそうなんだ! と一層興味が掻き立てられるに違いなかろう。そして、あの "田中邦衛" の "歪めた口" の表情を彷彿とさせたりもするのであろう。
NHK時代劇大河ドラマが、全国各地の "観光ツアー" を刺激して、 "観光地興し" 、"地域興し" に一役買っているであろうことは容易に想像がつく。今年は、ドラマ「龍馬伝」によって土佐をはじめ、龍馬の行動圏に当たる地域各所が大いに注目されていることも、誰でもが推察するところだ。
(※注.1)<タグのもともとは tag 。商品や荷物に貼りつける札。転じてコンピュータで扱う文書において、テキストデータ中に埋め込む特殊な記号や文字列のこと。もう少し平たくは、ウェブサイトなどを使う際に効率よく検索や分類ができるようにつける、短いキーワードやフレーズです。いずれにしても、AをAだと識別するための目印であります。>(博報堂DYグループ エンゲージメント研究会『「自分ごと」だと人は動く 情報がスルーされる時代のマーケティング』2009.11.27 ダイヤモンド社)
現代という "過剰情報" 時代にあっては、人々の関心は多方面に拡散させられ、観光というジャンルにあっても昔のような "定番志向" ということにはならないに違いない。こんなにも時代が変わろうと、 "名所旧跡" は永遠です! なんぞと暢気に構えていたのでは、結局、 "スルー" (無視!)されてしまう憂き目に会うことが必定だ。
禁物なのは、一度来てもらえさえすればこの地の良さは十分にわかってもらえる! という "正論" (≒驕り?)なのかもしれない。と言うのも "一度来てもらえさえすれば" というのが、実は、それがほとんど "最終課題" となっている、そんな時代環境ではないかと思えるからなのである。それほどに、 "人々の関心は多方面に拡散" し、大半の関心事を "スルー" (無視!)させる(させざるを得ない)環境となっていそうである。
こんなことを考えていた時、次のようなニュース記事が目に入った。
<「男はつらいよ」でロケのバス停復元...群馬>
< 群馬県六合村入山の山あい。草津温泉へとつながる曲がりくねった坂道が続く国道292号沿いに今月、木造のバス停の小屋が4年ぶりに姿を現した。映画「男はつらいよ」の名場面の舞台。村の合併を前に復元された。
かつて、草津に向かう路線バスが通った「上荷付場(かみにつけば)」の停留所。路線は約30年前に廃止されたが、「男はつらいよ」の撮影が行われたことから、廃線後も残されたバス停を、ロケ地巡りなどのファンが訪れる村のひそかな名所だった。バス停はやがて風雨で痛み、2006年6月の強風で倒壊したが、寅さんファンから惜しむ声が村に寄せられ、建て直しが実現した。
ロケが行われたのは、1980年に公開された「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花」のラストシーン。......>(同上サイトより)
おそらく、多くの "「男はつらいよ」ファン" の脳裏には、そこでの寅次郎とリリーとのおどけた会話の余韻がしっかりと残っているはずである。
だから、たとえ<村は2009年度補正予算で約350万円を計上>したとしても、これを観光客を誘うための観光 "タグ" とできるならば文句なく "正解" だと思えた。
下世話な話になるかもしれないが、現代という "特殊な情報時代" にあっては、すべてを "自前の情報" で発信しようとしてはいけない。既に発信され尽くしている "情報コンテキスト(情報文脈)" と効果的にリンクするような "キーワード=タグ" を最大限活用する知恵が必須なのではなかろうか...... (2010.04.08)
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