ギリシャの財政危機は、支援措置のお陰で "沈静化" したかに見えるが、"「モルヒネ」に過ぎない" という冷静な判断があるようだ。
<国際通貨基金(IMF)のベルカ欧州局長は10日、1兆ドル規模のユーロ圏緊急支援措置は「モルヒネ」のようなもので、市場の沈静化につながる見込みはあるものの、長期的な解決策と捉えるべきではないとの見方を示した。......ユーロ圏諸国は金融安定化に向けて長期的な解決策を模索しなければならないと強調。「昨夜の出来事は欧州にいくらかの安ど感を与える。市場を沈静化させる見込みがある」とした上で、「長期的な解決策と捉えるべきではない。患者を落ち着かせるモルヒネのようなもので、本当の治療はこれからだ」と述べた。>(ユーロ圏支援措置、市場沈静化への「モルヒネ」=IMF欧州局長/ロイター/2010年 05月 11日 09:50 JST)
だからこそ、この種の問題は "未然" 措置こそが "決め手" だということになるのであろう。それを考えると、日本の現状はまさに緊迫感に満ち満ちているはずである。
先ず、度外れた "負の現状" が今さらのように警戒されていい。
< 国の借金、最大の883兆円 3月末、国民1人693万円 1年で 36兆円増える 2010/5/10 15:00
財務省は10日、国債と借入金、政府短期証券を合計した「国の借金」の総額が2010年3月末時点で 882兆9235億円と過去最大になったと発表した。昨年3月末から36兆4265億円増加した。補正予算の財源確保のために国債を増発したことが借金増加の主因。10年4月1日時点の推計人口(概算値)1億2739万人で計算すると1人あたりの借金は約693 万円で、過去最大だった。国の借金残高は財務省が四半期おきに公表している。
国の借金の内訳をみると国債は前年同期比40兆408億円増の 720兆4890億円。一方、政府短期証券は2兆4545億円減の106兆281億円だった。〔NQN〕>(国の借金、最大の883兆円 3月末、国民1人693万円 1年で 36兆円増える/nikkei.com/2010/5/10 15:00)
ちなみに、<国の借金>(国債)の "対GDP比率" という指標が、 "60%" を超えると "危険水域" だとされているのだが、今年の日本は "227%" となり、2014年までには "246%" に達すると、国際通貨基金(IMF)はカウントしているという。先進諸国では最悪の数字になるそうだ。
そんなことで、政府は以下のような表明をすることになった。
<国債発行44兆円以下に=11年度予算編成で決意-菅財務相 2010/05/11-12:40
菅直人副総理兼財務相は11日午前の閣議後会見で、2011年度予算編成での新規国債発行額について「10年度予算の44兆3000億円を超えないよう全力を挙げる」と表明した。財政危機に陥ったギリシャの二の舞いを避けるため、過去最大となった10年度の発行額を上回る国債の大量発行は行わないとの決意を示した形だ。
その一方で、菅財務相は「国債発行を抑えることが、緊縮財政につながるということではない」と説明し、景気対策のために一般会計総額が92兆円超となった10年度予算並みの歳出を確保することも示唆した。増税などによる歳入確保を模索するとみられる。>(国債発行44兆円以下に=11年度予算編成で決意-菅財務相/時事ドットコム/2010/05/11-12:40)
菅財務相は、ギリシャの財政危機に関する前回のコメントでは確か「 "他山の石" 云々」と述べていたようだったが、今回は<ギリシャの二の舞いを避けるため......>と表現が変わったか......。ひょっとしたら、 "迫り来る大津波" を感じながらの言葉選びだったのかもしれない。
それにしても、 "迫り来る大津波" については、政府関係者が立場上、額面通りのシリアスな発言は不可能であろうだけに、ギリシャ国民のような悲惨な被害を被るかもしれない国民自身としては、十分に現実の危機的様相を掌握しておかなくてはならない......。
以前、日本の財政危機状況に関する大前研一氏の所論について書いたことがあった。
当日誌 <気になる用語、 "ソブリン(sovereign)リスク" に "デフォルト(default)" (2010.02.09)>
当日誌 <"ギリシャ財政危機" は "他山の石" ?/米ムーディーズ "トヨタを格下げ" ! (2010.04.24)>
要するに、通常 "楽観視" されている以上に現実は "危機的" だということなのだが、同様のかなり厳しい見方が最近の海外の論者によっても論述されている。
<「もはや回復不能な債務状況だ」。米調査会社ハイフリクエンシー・エコノミクスのカール・ワインバーグ氏は、日本についてこう語る。「この状況を切り抜けるための、平常な方法など思いつかない。日本は財政赤字の穴埋めができなくなるだろう。財政の機能停止、年金の給付カット、銀行破綻が起こり、世界を揺るがすだろう。信用格付け機関がこうした状況に警鐘を鳴らさないのは、犯罪的ともいうべき怠慢だ」。
今、日本は崩壊しつつあるように見える。たとえば複数のアナリストが日本政府は今年、必要な資金を調達しきれるのか疑問視している。世界第2位の経済大国である日本が、2011年までに破産するとみるむきさえある。他のジャパン・ウォッチャーも、日本が国家の債務危機を先送りできるのは、あとせいぜい3~4年というシナリオを描く。「国家破産法」という目新しい表現が、間もなく世界で聞かれるようになるかもしれない。
......
「市場の見方が突然変化し、現行のトレンドが持続不可能であると判明する分岐点に、日本は急速に近づいている」。かつて野村証券にも勤務していた著名アナリスト、ビル・オーバーホルト氏は語る。この見立ては好意的すぎるかもしれない。ドバイやギリシャの話はもうどうでもよい。次は日本国民が世界に向けて、国家の債務危機を提供しようとしているようにみえる。>(日本はデフォルトに陥るか 破産同然の経済大国/by Gordon G. Chang/2010年4月15日/Forbes.com/日本経済新聞)
同氏の説明は以下のようであった。
日本国債の金利の低さ、巨額の経常黒字、1兆400億ドルにのぼる外貨準備など<不安を軽減する要素>もあるにしても、<日本の今の路線は持続不可能だ。今後40年で労働人口が41%減少すると見込まれるなど、急速に規模が縮小する社会には、膨らみ続ける政府債務を返済することはできないだろう。今年は税収の59%もが債務の返済と利払いに食われる。>(同上)し、利払い負担の増加を上回るペースでの成長、年率3%のGDP成長が必要となるが、それは到底困難であろう。
<経済指標のほとんどは望ましくない方向を示しており、将来的な成長は見込み薄だ。消費者物価は下落が続き、商業地の地価は過去40年で最低水準、工業生産も減少が止まらない。世界的な需要は堅調とはいえない中で、経済は輸出に依存している。>(同上)
そして、大前研一氏と同様に、日本国債の担い手である国内の動向にも危惧の念を抱いている。
<かつては貯蓄好きで知られた日本人も、今ではその度合いがはるかに薄れ、国債への需要が減退して......公的年金は年金の給付原資を確保するため、全体を差し引きしてみると国債の売り手となった。部分的には日本政府の管理下にあるゆうちょ銀行ですら、これ以上日本国債購入を増やす気はない。政府は今や、東京を走るタクシーの中で国債を宣伝している。>(同上)
"迫り来る大津波" を前にして、どんな策が有効なのか? あるいは、果たしてそんなものがあるのかどうかもわからない。
しかし、<日本国民が世界に向けて、国家の債務危機を提供>してしまうこと(=日本発 "金融危機" !)だけは回避しなければならない。日本のような巨大な財政規模だと、その危機を沈静化できる効き目超高水準の "モルヒネ" とて無いはずであろうから...... (2010.05.12)


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