先日、大学のキャンパス内での光景を素材とした『 "ひとり" が怖い』というTV報道番組のことを書いた。( "ひとり" が怖い/"空気支配"/"共同幻想"/"精神的自立" 障害症候群 /当日誌 2010.04.27)
<今大学生に「友達がいないと思われる」ことを極端に恐れる傾向が高まっている>という現象のことである。それを知った時、当然のことながら、強い違和感を感じたものであった。そんな現象は、幼稚園ならばいざ知らず、大学という場には馴染まないでしょ、という驚きの印象だったのである。
こうした "精神的自立" の未成熟な人々が、時代環境の急変過程で増加している趨勢を、それはそれとして着目しなければならないわけではある。しかし、将来のこの国を背負って立つ世代の大学生たちは、そうした趨勢を "解析" し、 "克服" する立場にこそ立たなくてはならない。なのに、自分たちがその "渦中" に巻き込まれて右往左往してしまっているようでは、話にならない......。
今どき、大学生世代に "時代変革への夢" を託すべくもない時代になっていそうだから無いものねだりはできない。しかし、大学生にせよ高校生にせよ、もう少し自分たちが手にしている "学ぶ、研究する" という "絶好のチャンス" を、額面どおりに受けとめても良さそうな気がする。こうしたことに費やす時間に関する国際比較でも、日本の場合はどんどん情けないことになっていると聞く。
もちろん、その対象は何であったとしても構わないはずだろう。要するに、頭脳的にも体力的にも、さらに生活環境の面でも、 "学ぶ、研究する" ための最適条件下にあることに気づき、 "没頭" する、できれば "一心不乱" になってみることだ。そうすれば、 "ひとり" が怖いなんぞと感じるヒマさえなくなるのではなかろうか。とかく、ヒマな気分が宿ると、無視できるはずの些細なこともにも気になったりするのが人間の心理なのかもしれない。かなり "甘い" 状態でまどろんでいるようだ。
ところで、こうした大学生・高校生たちが遭遇する "就職戦線" は、ますます厳しくなっていそうである。とりわけ、 "学ぶ、研究する" ためのその貴重な好機をムダにしてしまった者たちにとっては、<「就職氷河期」は半永久的に続く!>(「日本企業の新常識『国内採用抑制、海外採用増』」 大前研一の日本のカラクリ プレジデント 2010年5.31号/実践ビジネススクール 2010年 5月 17日/プレジデントロイター)という悲惨なことになりそうな気配だ。
そのひとつの冷徹な現実が、<日本企業の新常識「国内採用抑制、海外採用増」>(同上)という最新の傾向から窺えそうである。
<今後景気が回復したとしても、大卒者の雇用情勢が劇的に向上することはない。それを象徴するのが3月に発表されたパナソニックの11年春の新卒採用計画だ。
新聞報道によると同社が予定している11年春の採用は、国内外合わせて前年比1割増の1390人。しかし国内採用は210人減の290人。一方の海外採用は47%増の1100人と過去最多で、新卒採用に占める海外採用の比率は約8割まで上昇するという。
つまり日本人の採用を大幅に減らして、海外採用がマジョリティになっているというのだ。ブルーカラーではなく、ホワイトカラーの話である。
国内採用を抑制して、海外採用を増やしている日本企業はパナソニックだけではない。いわゆるグローバル企業と呼ばれるところは皆、同じようなことをやっている。当然だろう。今の日本の大学から出てきた人材を率先して採用していたら、会社は間違いなく滅びるからだ。......
グローバル企業である以上、全世界から人材を集めて最適なフォーメーションを組むのは当然のことだ。日本企業も10年ほど前からグローバル人事の必要性に気付いて、5年ほど前から焦り始めた。韓国のように世界中どこに出しても通用するような人材を国や教育機関がつくってくれない以上、自分たちで手当てするしか生き残る道はない、と。
以前の日本企業は海外で新卒を取らなかったし、「現地採用」などと見下した言葉で海外の人材を集めていた。しかし今は違う。本社の人事部が幹部社員として正規社員の採用を世界中でするようになっているのだ。
ところが世の中の大半は、景気が戻れば雇用も戻ると信じているのだからおめでたい。要は、玉石混交どころか石しか出てこない日本の大学から誰が採るか、という話なのだ。外資系企業が日本人の採用を控えるのも同じ理由。
「日本人はいくら金をかけて教育しても、なかなかマネジャーレベルの能力に達しない」と皆口を揃える。>(同上)
この傾向で留意すべきなのは、<以前の日本企業は海外で新卒を取らなかったし、「現地採用」などと見下した言葉で海外の人材を集めていた。しかし今は違う。本社の人事部が幹部社員として正規社員の採用を世界中でするようになっているのだ。>だという "逆転" 現象であるに違いない。
"海外勢の採用" は、ブルーカラーや非正規社員といった "イレギュラー" なスタッフではなくて、まさに "レギュラー戦力" として迎えられつつあるというのだから......。
また、 "国内採用抑制" の否定できない確たる理由が、<今の日本の大学から出てきた人材を率先して採用していたら、会社は間違いなく滅びるからだ>と指摘されるに至っては、事情は極めて深刻だと言わざるを得ない。
もはや "日本の人材" が、日本企業からも見切りをつけられているという悲惨な現状を、先ず学生たちは重く受けとめなければならないだろう。と同時に、大学教育関係者たちおよび教育関連行政部門は、自身の存立をかけた "教育改革" に即刻着手しなければ、 "百年の計" を仕損じることとなり将来に大きな禍根を残すことになりかねない...... (2010.05.24)
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