やはり "様変わり" したのかなぁ、と思わされることがあった。地元地域での "小学校の運動会風景" なのである。
自分がウォーキングで利用している遊歩道は、地元地域のとある小学校のすぐ脇を通っている。だから、時折、校庭で行われている体育の授業の様子を目にすることもある。
先日来、校庭全体を埋め尽くさんばかりの数の子どもたちが、スピーカーから流れる音楽(民謡を今風にアレンジしたもの？)に合わせて何やら元気良く跳びはねていた。見るからに集団演技(マス・ゲーム)と思しき踊り（ダンス？）の練習のようであり、ハハーン、近々運動会が予定されているのか......、と察知したものだった。
で、今朝、いつもの道を通ってウォーキングに出掛けると、まさに予想どおり、その小学校は運動会を開催していたのだ。
途中、いつもは見かけない家族連れを何組か目にした。いずれも、どこか朗らかそうな会話を弾ませ、いそいそとした雰囲気があった。ビニール・シートとか紙袋とかを小脇に抱える様子から、何かの催し物に出向くのだろうと想像させた。が、後になって思えば、どうも彼らはいずれも運動会のある小学校へと向かっていた模様である。
別に急ぐ必要もないウォーキングであるから、久々にその運動会風景を堪能(?)させてもらっても良さそうなものであったが、歩きながら金網越しに見物するにとどめた。
ちょうど、前述の集団演技(マス・ゲーム)が始まろうとしており、子どもたちが校庭中央に広がり、聞き覚えのある音楽がスピーカーから流れてもいた。
ところが、子どもたちの姿が良くは見えない。というのも、校庭中央を囲む "ギャラリー" （観客エリアの "ペアレントたち" ）がびっしりと埋まっていたからなのである。
それも、 "ギャラリー" の大半が "立ち見" の格好となっていたため、 "小さなプレーヤー" たちが掛け声を発しているのはわかっても、その姿が見えにくかったのである。
で、改めてその "ギャラリー" の様子を見回してみると、 "ペアレントたち" の今風の光景をまざまざと目にすることと相成った。（ "ペアレント" といえば "モンスターペアレント" を思い起こしてしまう昨今でもあるが......）
校庭中央で子どもたちの演技が始まると、 "ペアレントたち" は手にしていた "ビデオ・カメラ" や、 "望遠カメラ" を一斉に構え始めたのである。もちろん、できるだけ思い通りの撮影をしたいがためであろう、皆、 "背伸び" せんばかりにその姿勢を高めていた。 "立ち見" 姿勢の理由がまさにここにあったのかと気づかされた感じであった。
その様子は、ＴＶニュースでしばしば見かける要人やタレントの記者会見などで、びっしりと "カメラ砲列" の敷かれる場面があるが、別に誇張でもなくまさにそんな光景に良く似ていた。（ "声援の声" が聞こえないのも良く似ていた......。）
これでは、昔の運動会風景のような、 "ゴザ" の上に座っての観戦・見物というような態勢はもはや "馴染まない" ということか、と気づかされたものだ。
また、 "カメラ砲列" 以外に唐突に目に付いたものは、 "coleman" のアルミ・チェアーがあちこちに持ち込まれている光景であった。アウトドア、キャンプ用のポータブルのアルミ・チェアーのことである。昨今は、シーズンになるとホームセンターなどで比較的安く販売されるので、広く出回っているのであろう。
中には、この延長でアルミ・チェアーばかりか、その種のポータブル・テーブルまで設えている "ペアレントたち" も何組かいたようだ。
昔もそうであったが、今でも、運動会の日の昼食は校庭にやって来た家族と一緒にして構わないことになっているのであろうか......。それにしても、テーブルまで持ち込むというその "了見" からは、まるでマイホームの "垣根" を作るような気配も感じられたりして......。
ところで、こうした今風の "小学校の運動会風景" を一瞥(いちべつ)してみて感じたことは、 "ペアレントたち" が参加・結集するのは良いとして、奇妙な言い方をすれば "共同性の場で突出する個人性" とでもいうべき特徴であろうか。
その象徴は、子どもたちの "集団" 演技を観る各 "ペアレントたち" 同士が、必ずしも "集団" 的とは見えず、専ら "個人（撮影者）" として記念撮影に没頭しているかのように見えたことである。撮影が済めば、周囲の人たちとの自然な会話や交流もあるのだろうが、それにしても、せっかくの "集団・共同" の場や光景なのに、 "声援" の声を発するでもなく、ただただそれを "個人的に切り取る(撮る)" という観点の作業に埋没するかのようなその雰囲気は、気になってしまった。個人消費生活スタイルの延長以外ではなさそうで、観光地での光景そのものである。
これらに、地域社会での人間関係における "今風" の特徴を結びつけるのは、やや考え過ぎなのかもしれない。だが、それにしても、昔の運動会ののどかな光景を思い起こしてみたり、当時の "開放的な地域社会の雰囲気" を懐かしんだりしてしまう自分は、やはりアナクロニズム（時代錯誤）なのかもしれない、と......。
"無縁社会" 的人間関係に小さな突破口が開けるとすれば、おそらく、"地域社会再生" 、つまり身近な "地域社会" や "小学校区" の活性化ということなのではないかと考えたりすることがある。そんな自分にとって、今風の "小学校の運動会風景" は、ともかく現代の根深い "突出する個人性" をリアルに伝えるものであった...... (2010.05.29）
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