先日、<「就職氷河期」は半永久的に続く!>(「日本企業の新常識『国内採用抑制、海外採用増』」 大前研一の日本のカラクリ プレジデント 2010年5.31号/実践ビジネススクール 2010年 5月 17日/プレジデントロイター)に寄せて、日本の大学生たちの "実力水準" の "危うさ" について書いた。(「"ひとり"が怖いより"日本の教育水準"が怖い!/"就職氷河期"は半永久的に続く!? 」)
グローバリズム経済が驀進する中で、グローバル企業をはじめとする少なくない企業が「国内採用抑制、海外採用増」に踏み切っているという事実についてである。
そして、その理由が、<今の日本の大学から出てきた人材を率先して採用していたら、会社は間違いなく滅びるからだ。......要は、玉石混交どころか石しか出てこない日本の大学から誰が採るか、という話なのだ。>(大前前掲箇所)といった、日本の大学生たちの "実力水準" 問題にあることに注意を向けた。
しかし、日本の大学生たちの "実力水準" 問題云々以前に、 "よりベーシックな問題" が横たわったいる現実に意を払わざるを得ないようである。
いわば、経済グローバリゼーションの本格化によって、日本の基幹産業が生産拠点を海外に移動させるという事態、即ち "日本(産業)空洞化!" の現象のことである。この傾向が強まっていくならば、新規採用人材の "実力水準" 問題が理由となるよりも前に、ますます「国内採用抑制、海外採用増」という流れが固定化するからだ。いやそうなると、人材採用問題に止まらず、産業構造とその全体状況自体が、スカスカ状態へと "空洞化" および "シュリンク(収縮)" して、国内経済とその周辺は最悪の状態へと下降して行くことになりかねない......。
この傾向の問題に関しては、「ついに始まった 日本空洞化の戦犯は誰か」 2009年5月22日/財部誠一の「ビジネス立体思考」/nikkei BP net が、大いに参考となる。
< 携帯電話のコスト削減のために、東芝はついに国内生産撤退を決めた。シャープも輸出を大幅に減らし、海外で販売する液晶テレビは海外に生産委託していくという。
[ 東芝やシャープが国内生産を縮小 ]
また、5月21日の日経新聞一面トップの見出しは衝撃的だった。
「ソニー、調達先を半減 / 2500社を1200社に」
これまでバラバラだった部品や素材の調達先をグループで一本化したうえで、調達先を半数に絞り込むという。1社当たりの取引量を拡大することで調達コストを引き下げるという戦術だ。90年代末、瀕死の日産自動車をV字回復させたカルロス・ゴーン社長もこのやり方で調達コストの大幅カットを実現した。同社は5月14日に国内製造事業所の再編についても明らかにしている。あのソニーでさえ生き残りに必死なのだ。
好むと好まざるとに関わらず、世界経済はすでに抜き差しならぬところまでグローバル化が進んでいる。世界同時不況と円高で輸出産業が大打撃を受けているからといっても、複雑な相互依存関係を前提として動いている世界の現実は変えようがない。......>(財部前掲箇所)
財部氏は、こうした現実に拍車がかかっている事態を指摘した上で、以下のように結んでいる。
< 冒頭で東芝やシャープが日本から一部製品の生産撤退を決めたと記したが、これは序の口だ。......
人件費は高く、法人税も高く、法律で定められたルールのなかで雇用調整を行えば袋叩きにあう。たとえばトヨタ自動車を例にとると、国内の販売台数は世界全体のもはや1割台にすぎない。日本に本社を置き、日本で高い法人税を納めなければならない理由はもはや存在しない。
日本を代表するエレクトロニクスメーカーの経営トップに、これからも国内生産を続けるかと尋ねてみると、ポロリと本音が漏れた。
「あれだけ(派遣切り)批判されたら、もう好きにさせてもらいます、という気分になりますね」
2010年に世界経済が回復の兆しを見せた時に、気がつけば日本空洞化というリスクが急速に高まっている。全体最適に一切配慮せず、人気取りに明け暮れた政治家とマスメディアは自らがその戦犯であることを自覚しなければいけない。>(財部前掲箇所)
財部氏が<戦犯>として名指しいているのは、<国際競争にさらされたことのない人びと>、<日本の村社会のなかでしか仕事をしたことのない人々>、即ち<政治家とマスコミ>である。まさに、いずれもが "生存を賭けた" 国際競争の熾烈さを掻い潜ってはいない。それでいて "権力、既得権" にしっかりとしがみついているかのように見える。
そうした者たちが仕切っているのが現在の情報社会なのだとすれば、 "日本(産業)空洞化!" というシビァな実態は想像以上に深まっているのかもしれない。またこの傾向の今後の推移にしても、 "雪崩れ" 現象的スピードにならないという保証はどこにもなさそうである...... (2010.05.30)
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