"民主党菅新政権" にとっての課題は少なくなさそうだが、当面主要なものは次の3点に集約されるかと思われる。
① 小沢氏の影響力、② 普天間問題、③ 政治主導 である。
この間、前二者については若干触れてもきたので、 "政権交代での歴史的課題" とも言うべき "政治主導" にまつわる課題に関して言及したい。
行過ぎた "官僚への依存=官僚主導" の政治が国民にとって不幸であることは、長年の自民党政権下で嫌というほど辛酸を舐めさせられてきたはずだ。だからこそ、国民は "政治主導" の方向性を打ち出した民主党政権に期待を託したのではなかったか。それは、あの "事業仕分け" の動向に国民が熱狂したのを見てもわかる。
しかし、鳩山政権においては、 "政治主導" というスタイルでの "普天間問題" に対する取り組みは、失望感を刺激して止まないほどの体たらくを見せつけてしまった。
確かに "普天間問題" は難易度の高い問題ではあった。だからこそ、従来の "官僚主導" 型で暗礁に乗り上げた難問を、新たな "政治主導" 体制で取り組まれることが求められてもいたはずである。
ところが残念ながら、鳩山政権においては、 "政治主導" アプローチの可能性が追求されるというよりも、 "官僚依存" の水準を下回る "アマチュアリズム" 、いや稚拙な "アマチュア" として対処されてしまい、墓穴が掘られてしまった観が否めない。
多分、失敗は "政治主導" アプローチ自体にあったと言うのではなくて、鳩山政権固有の問題状況が露呈したものだったと見るべきかと思う。
そうだとしても、この "破綻" による失望感が、"政治主導" アプローチそれ自体に向かうことは否定できない。再び、"官僚依存" 型に舞い戻るのが安全という愚かしい "リバウンド" に至る、そのリスクを警戒すべきかと思われる。
だからこそ、"菅新政権" においては、 "汚名" を着せられた向きのある "政治主導" アプローチの、その "王道" の姿を実現して行かなければならないわけだ。ここに、この課題の歴史的な重要さが控えていると思われる。
「菅新政権 信頼は回復できるのか/NHK 追跡!AtoZ/2010年 6月5日」という番組が、こうした問題状況を掘り下げて参考となった。
"菅新政権" の主要課題を前述した3点(① 小沢氏の影響力、② 普天間問題、③ 政治主導)に絞り込み、その各々の課題の困難さと展望とを見つめていた。
その中の<「迷走した "政治主導" 新政権への教訓」>という部分に目を向けてみたい。
先ず、鳩山政権での政治主導は必ずしもうまく機能していたとは言えない、という点が、演習地移設候補とされた "徳之島" をめぐる取り組みの、その "失敗" 経過として縷々紹介された。
鳩山政権下の官邸内での取り組み状況が、まるで "有限会社 鳩山商店" の小さな社内組織の人間模様のごとく目に映ったものだ。登場人物は、鳩山首相、側近・牧野聖修衆議院議員、平野官房長官の三人のみである。
ここに、徳之島出身者から基地受け容れの可能性ありという間違った情報が舞い込み、首相は、側近からの限られた情報で突き進むことになり、やがて徳之島案を命綱としつつ、"腹案" とまで見なすようになっていく。
だが、徳之島の三つの町の町長が総理大臣官邸に事情説明に来ることで、ようやく地元住民の民意は強い反対であることが明るみに出る。しかし、こうした事実認識の錯誤に加えた、徳之島案を検討しながらも地元に説明しようとしない政府の姿勢が、反対住民たちの感情を著しく傷つけていくことになる。
この推移を見ていた限りでは、 "政治主導" をスローガンに掲げて動きながら、やっていることはと言えば官僚の傲慢さそのもののように見えたものだった。まさに、官邸の迷走は埋め難い溝を残した......。
こうした見るに耐えない "政治主導" の迷走劇が紹介された後、玄葉光一郎 衆議院議員、北海道大学教授 山口二郎氏、外交評論家 岡本行夫氏、前沖縄県知事 稲嶺惠一氏らがそれぞれの意見を披露する。
それらの内容で共通していた点は、
1."政治主導" アプローチを構えたとしても、官僚機構に蓄積された貴重な経験・ノウハウ・データなどを最大限活用すべし。
2. "政治主導" でなければ叶わない政治課題というものが多々あるし、事実これによって達成された実績も少なくない。問題は、政治の側がしっかり戦略・構想をもって中期的に働きかけながら変えていく部分と、目の前の問題を現実的に処理するものとをきちっと仕分けること。思いつきのような対処は決して "政治主導" ではない、ということだったかと思われる。
いろいろな表現はあろうかと思うが、ちなみに "戦略・戦術" というありふれた言葉が思い起こされていいかとも思えた。より理念に近いマクロな視点に立つ "戦略" と、眼前の具体的な問題解決の手段としての "戦術" のことである。この両者の効果的な関係付けに尽きるということである。当然、口で言うほど簡単なことではないが......。
今ひとつこの際注目してよいのは、無いものねだりということにもなりそうだが、"戦略" を構築する上で必須となるに違いない "政治理念" や "ビジョン" というレベルの問題(グローバル国際環境での根源的課題......)が、もっと緊張感をもって議論されるべきなのではないかと...... (2010.06.08)
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