物騒な表現でもあるが、 "刺し違える" と印象が残った。鳩山首相が、小沢幹事長ともども退陣するという判断に至ったことについてである。
< 鳩山由紀夫首相は2日午前、国会内で開かれた緊急の民主党両院議員総会で「わたし自身、この職を引かせていただく」と述べ、退陣を表明した。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設をめぐる混乱や「政治とカネ」の問題で政権への信頼が大きく低下。参院選を控え、辞任せざるを得ないと判断した。小沢一郎幹事長ら党執行部も交代する。後継には菅直人副総理兼財務相が有力視され、岡田克也外相、前原誠司国土交通相らの名前も挙がっている。......
後継首相について、石井一選対委員長は「菅氏が候補の一人だ」と記者団に語った。
民主党は6月16日までの国会会期は延長しない方針で、参院選は同月24日公示、7月11日投開票の日程となる見通しだ。
両院議員総会で首相は、普天間移設に関し「社民党を政権離脱に追い込んだ責任を取らなければいけない」と表明。さらに、自身の元公設秘書が違法献金で有罪となった事件に触れ「政治とカネ(の問題)に決別する民主党を取り戻したい」と強調した。
その上で、小沢氏の資金管理団体をめぐる事件に言及。小沢氏に対して「幹事長の職を引いていただきたい。そのことでよりクリーンな民主党をつくり上げることができる」と求め、同意を得たことを明らかにした。
小沢氏は記者団に「任期半ばでこのような事態になったことを大変残念に思う。自分自身として補佐の役目を十分に果たせなかったと反省している」と語った。......(2010/06/02-13:53)>(鳩山首相が退陣表明=普天間、政治とカネで引責-小沢氏も辞任・後継は菅氏が有力/時事ドットコム/2010/06/02-10:51)
良いも悪いも、小沢氏によって作り出された勢力 "磁場" が、民主党(政権)を不自然に萎縮、形骸化させてきたかに思える。世論調査の結果でも、小沢氏を訝しく思う民意は決して小さくはなかった。小沢氏の "政治とカネ" 問題での不透明さや "利益誘導などの古い政治手法" などが、民主党に託した国民の期待内容と著しくに齟齬をきたし始めたからだ。
確かに、 "寄合い所帯" のごとき党内勢力を束ねてきたのは小沢氏の辣腕だったという見方が可能ではある。だが、民主党も国民も、いつまでもこの "神話" や "磁場" に寄り掛かっていてはまずかろう。 "利益誘導" 手法や "強権的" 手法で束ねられた組織は、不可避的にしわ寄せを生み、思わぬ破綻を用意するものだ。今回の "ツートップ" 体制と "一連のギクシャクさ" はまさにその道理を裏書したかのようである。
そして、鳩山氏を "買いかぶって" 言うならば、この間に募っていたであろう "溜め" の思いを、最後になって形にしたのかもしれないと思えるわけだ。それを "刺し違える" と、古臭く表現したのである。
言うまでもなく、この "首相交代" 劇は現状問題の本質的解決にはならない。だが、これまで党内や国民の間で懸念され続けてはいてもその解決の行動に "呪縛" がかかっていたかのような、そんな閉塞的な状況に、小さな風穴が開いたような気配を感じるのである。鳩山首相辞任にあえて意味を見出そうとするならば、 "Without 小沢" 民主党体制への小さな一歩が踏み込まれたのではないかと......。
まあ、そんなシンプルな図式を思い描けるほど事態は甘くはないと重々承知はしている。だが、 "現状への失望を絶望にまで至らせない" ことを望むとするならば、そう考えたいと思うわけなのである。
したがって、ポスト鳩山という民主党政権第二幕のテーマは、小沢 "磁場" から離れてどれだけ額面どおりの国民本位路線が再構築されるのか以外ではないはずである...... (2010.06.03)
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