アップルの "アイフォーン(iPhone)" や "グーグル" の "アンドロイド" というケータイ向け "プラットフォーム" などが、熾烈な "覇権戦争" の様相を呈していることについては先日も書いた。( 当日誌「アップルの"アイフォーン"vs"グーグル"の"アンドロイド"/熾烈な"覇権戦争"開幕?」/当日誌/2010.06.29 )
そして、この "プラットフォーム" 間の全面的な "覇権戦争" の、その部分的 "局地戦" とでも言えそうな局面として激しい火花を飛ばしているのが、"電子書籍(配信)市場" をめぐるバトルのようである。
それぞれの企業は独自の "プラットフォーム" を搭載したケータイ端末や多機能端末の販売に主力を注ぐとともに、それら向けコンテンツとしての "電子書籍" を配信する事業にも戦略的な傾注をし始めているわけだ。
ところで、この "電子書籍(配信)" という戦線では、かねてよりアマゾンが支配的であったと言えよう。電子書籍専用端末 "キンドル(2007年)" をいち早く投入してきたアマゾンである。
ということで、"電子書籍(配信)市場" をめぐっては、アマゾン、アップル、グーグルが "三つ巴" のかたちで合従連衡(がっしょうれんこう)をしながら、あたかも "三国志" 的(?)な "覇権戦争" を展開しているかのようにも見える。
以下は、その最新の関連記事である。
<擦り寄りの連鎖 グーグルも書籍へ
大量の情報が行き交う新大陸では、その情報の流通をコントロールする「プラットホーム企業」が支配者だ。その覇権争いの戦場のひとつとして、今、熱くなっているのがメディアをめぐる局地戦。新聞、テレビ、出版など従来型の伝統メディアに担っていた役割はネットにどう取り込まれるのか。そしてそれをコントロールするのは誰なのか。
新聞、書籍、雑誌のような紙メディアに対しては2007年登場のアマゾン「キンドル」、そして今年4月登場(日本での発売は5月)のアップル「アイパッド」ばかりが注目されている。が、いっそう大きなインパクトを持つのは、グーグルだ。
この夏からは「グーグルエディションズ」により、出版社と契約をしたうえで行儀よく電子書籍を販売する。グーグルは「地球上のあらゆる情報を検索できるようにする」というミッションにのっとって、軋轢をものともせずに「紙の電子化」を進めており、いわばこの市場の開拓者(右上年表)。グーグルに嫌気した大手出版社がアマゾンへ擦り寄り、さらにアマゾンに不満を持った出版社がアップルに擦り寄った。そして今度は当初の敵であったはずのグーグルにも擦り寄っていったわけだ。
多くのベストセラー書籍が電子化したことで、米国の電子書籍市場は09年実績が1億6950万ドル、全出版市場に占める比率は3.31%になっている(米国出版社協会調べ)。決して大きくないが、前期比2.8倍というすさまじい成長率だ。
そして電子化の流れは日本にも及ぶ。今や多くの人がパソコン、携帯などのディスプレイを通じて情報を得ることに慣れており、「紙のほうが読みやすい」という情緒的な意見は吹き飛ばされていく。
当然、伝統メディアの経営にも大きな影響を与える。これまでの業界慣習、古い既得権益が崩れていく。わかりやすくその流れを説明するならば「機能分解」(著者が独立。編集者も独立)、「自由価格化」(再販価格の拘束が崩壊)、「グローバル化」(目の前には「世界市場」が!)、「コングロマリット化」(中立から垂直統合へ)だ。......>(「加熱するプラットフォームの陣地争い」/『メディア覇権戦争 新しい支配者は誰か?』『週刊東洋経済』2010 7/3 特大号 c.f.「週刊東洋経済」)
そして、アマゾンは、"電子書籍(配信)市場" については自社こそが "パイオニア、老舗(しにせ)" なのだと言わぬばかりに、以下のような新展開を見せ始めているそうだ。
<【シリコンバレー=奥平和行】インターネット小売り最大手の米アマゾン・ドット・コムが電子書籍の配信事業を強化している。独自の専用端末「キンドル」に加え、スマートフォン(高機能携帯電話)などへの配信も拡充。一部端末向けに動画と音声の配信を始めた。今月21日にはキンドルの値下げも決めており、米グーグルの参入などにより競争激化が見込まれる電子書籍市場で主導権を維持したい考えだ。
アマゾンは米アップルの「iPhone(アイフォーン)」やパソコンにも電子書籍を配信している。28日にはグーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載した携帯へのサービスを始めた。利用者が増えているアンドロイドにも対応することで、米国で販売されるスマートフォンの8割以上でキンドルのコンテンツが読めるようになる。
また、アップルのiPhoneや多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」向けに動画や音声の付いた電子書籍の配信も始めた。まず、旅行ガイドや料理本など13タイトルの配信を開始。今後、対応書籍を拡充する方針だ。
米国の電子書籍専用端末市場でアマゾンのキンドルは6割程度のシェアを握るとみられるが、今年はアップルのiPadなど多機能端末や電子書籍の閲覧が可能なスマートフォンが相次いで登場する見通し。配信サービスでもグーグルが幅広い端末を対象とするなど競争環境が大きく変わっており、アマゾンも配信先の拡大や値下げで対抗する。>(アマゾン、電子書籍配信を拡充 アンドロイドにも 全方位サービスで主導権確保/日本経済新聞/2010/6/29 19:19)
こうした目まぐるしいベンダー側の動きの結果、久しく続いている時代風潮である「活字離れ」問題が、何らかの変化を遂げてゆくことになるのであろうか...... (2010.07.01)
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