昨日の日誌の末尾で、<自分のような "「ヘルプ」黙殺派" にとっては......>と書いたが、要は、ソフトにせよ機器類にせよ "直感的に" 操作方法がわかることが何よりではないかと考えているということなのである。
もちろん、 "直感的に" というアプローチだけには頼れない込み入った手順や操作というものもあることは承知している。それはその時が来たら "拝謁(はいえつ)" すればよいだけのことである。
だから、できればユーザーが "直感的に" 対処できるところまでツール製品類の構造(ユーザーインターフェイス= "UI" )は "単純化" ないしは "標準化" されて然るべきではないかと思うのだ。
この点で誰もが思い起こすのは、アップルの "iPhone、iPad、および iPod touch" などの端末類の "直感的なUI" であろう。
自分も、 "iPod touch" が届いて、パッケージを開いた時、想定はしていたものの思わず唖然としたものだった。一切、 "取り説、マニュアル" 類が同梱されていなかったからである。「さぁ、好きなようにやってごらん」とでも呟いているような......。
なるほど、こう来たか......、と頷くとともに、多少の戸惑いを振り払いながら、ならば "直感的に" やりたいようにやるだけだ......、と腹を括ったものであった。
"高貴な" 、あるいは "殿様" のようなアップルが、「うちの製品は、"直感的に" 了解できないようなお客さんなら、お客さんの方が "この水準まで這い上がる" べきだと思いますよ」とでもほざいているように思えた。と同時に、わかった、わかったと反論の余地がないのに気づいたりしたのだ。
とにかく、これまでのわれわれは、分厚い "取り扱い説明書" や "マニュアル" 類に慣れすぎてきた。しかも、それらときたら、読み手のことをしっかりと考えて書いたのかと言いたくなるような、一向に "要領を得ない" ものだらけではなかったか。
こうした "悪習" の背景には、 "生産者主導型" の発想が支配的であった風潮が横たわっていたはずだし、もう少し立ち入って言えば、各メーカーやベンダーが「うちの製品は......」と言わぬばかりのヘンな固有の "企業色" をひけらかす悪い傾向があった。要するに、ユーザー "囲い込み" のための固有の "企業色" だったのである。
また、ユーザー側にもアホな者がいて、「あそこの製品は、 "個性的" で、そこがいいんだよね」なんぞと迎合したりもしていた。 "個性的" と言えば聞こえはいいが、単なる "偏った思い込み" に過ぎなったかものも少なくなかったと思われる。
そんな風だったから、その "偏った思い込み" で出来上がった製品には、まるで "姑、小姑(しゅうと、こじゅうと)" のセリフのごとく多弁な、そんな "取り扱い説明書" や "マニュアル" 類が必須だったのであり、製品よりもそれらの "印刷物" の方が物量的に勝っているというバカバカしさがまかり通っていたのだろう。
<携帯電話「iPhone」や携帯デジタルプレーヤー「iPod」を販売するアップルは、「直感的に操作がわかる」ことを売りに、取り扱い説明書自体をつけていない。「使い方も口コミで広まっている」と同社日本法人の広報担当者は話す。>と引き合いに出されていた新聞記事が以下のようなかたちで報道されていた。
<携帯電話の説明書、スリム化 「使えばわかる」主流に
使い方に困ったとき、頼りになる取り扱い説明書。携帯電話をはじめ、商品の多機能化に伴い、説明に費やすページ数が増すばかりだったが、ここにきて一転、ぐんと薄くなっている。「内容についていけない」と閲読率が年を追って下がるなかで、メーカー側は読まなくてもわかる工夫に、かじを切り始めている。
NTTドコモは、それまで500ページほどの厚さだった取り扱い説明書を昨冬モデルからの17機種で、約4分の1の120ページに圧縮した。「受信メールを見る」「電話をかける」といった初心者向けの操作のみ掲載。無線LANの設定など上級者向けの説明は、携帯の液晶画面に表示するガイドで読めるようにした。
KDDIも現在の説明書は一昨年に比べ、紙の使用量が約4分の1という。
携帯電話「iPhone」や携帯デジタルプレーヤー「iPod」を販売するアップルは、「直感的に操作がわかる」ことを売りに、取り扱い説明書自体をつけていない。「使い方も口コミで広まっている」と同社日本法人の広報担当者は話す。
携帯電話だけではない。ソニーは6月に発売した一眼レフのデジタルカメラでは、液晶画面に撮影アドバイスを文章で表示するようにした。
説明書が薄くなった理由の一つは、液晶画面が付いたデジタル製品が増え、ガイドを表示できるようになったこと。エコ意識の高まりから紙の使用量を減らし、薄く軽くすることで物流コストを減らす狙いもメーカー側にある。
......
情報技術関連の商品に詳しいITジャーナリストの神尾寿さんはiPhoneを例に、今後は使いながら操作を覚えるような製品が主流になり、説明書はなくなる方向にあるだろうとみる。「メーカーや販売店は、消費者が実際に使い心地を試せるような店頭展示を心がけ、消費者も、使いながら機能を学ぶことが大切になってくると思う」と話す。(小林未来)>(携帯電話の説明書、スリム化 「使えばわかる」主流に/asahi.com/2010年8月28日15時0分)
振り返れば、 "直感的" 操作が市民権を得ることになったのは、"アイコン" をクリックという操作が特徴のOS、Windows が一般化したことだったに違いない。
システムの "舞台裏" を一々、忙しいユーザーに "開陳" する必要はなさそうだ、という "ブラックボックス" 化の発想が底流にあったし、またそのために "UI" が徹底的に吟味され、革新されたはずではなかったか。
ツール類というものは、それをもって "何かを為す" ことにこそ意義があるのであって、ツール類それ自体の構造上の問題で決してユーザーを悩ませてはいけないものだ...... (2010.08.29)
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