今のところ、"PDF電子書籍" への実質的な関心は、"iPhone、iPad、および iPod touch" などの "端末" で読めるそれらという限定付で話を進めている。
だが、 "ツートップ" であるもう一方の "端末" の "Kindle(キンドル)" ではどうなのかという点にも目を向けるべきかと思い始めた。
というのも、 "Kindle(キンドル)" もまた、"PDF 電子書籍" を "電子書籍" としてのまともな守備範囲、レパートリーに容れているからである。
ただ、もう近々解消されるとの噂( ※ "日本語対応新型 kindle" が2010年8月27日に発売されたらしい)も聞くところだが、 "Kindle(キンドル)" は "日本語対応" がなされていない、いや正確に言うと、 "日本語フォント" の搭載・内蔵がされていないために、日本語としてはほとんど読めないという "難点" があった "ようだ" 。(ちなみに、自分はまだ "Kindle(キンドル)" という "端末" を入手していない......)
ところが、この "難点" を物ともしない "挑戦的" な方々もいらっしゃったとかである。遅ればせながら、そんなことを知ったのは、以下の著作のとある文脈からだったのである。
<*「青空キンドル」? 日本語の本はまだだが......
......
ただし日本語の本は購入できません。日本語のフォントが内蔵されていないので、無理矢理日本語の書籍を表示させると、文字が化けてしまうのです。
しかし抜け道はあります。キンドルはパソコンとUSBケーブルで接続すると、パソコ
ンのハードディスクに入っているPDF形式のファイルをキンドルにコピーして、キンド
ル上で読むことができます。そしてPDFファイルは、作成時にファイル自体にフォント
を挿入しておくことができるのです。つまり、日本語フォント付きのPDFファイルなら
キンドル上で日本語表示できるのでした。
このことに気づいたマニアなユーザーたちは、著作権の切れた古い小説などがインターネット公開されている 「青空文庫」 のコンテンツをキンドルに転送して読んだりしています。中には 「青空キンドル」 という素敵なサービスを無料で提供する人も現れました。
これは青空文庫のなにかの作品をウェブブラウザで表示している時に、ブックマークレット (ブラウザのブックマーク上にプログラムを置く機能) を起動すれば、自動的にその作品をPDF化して、しかもフォントもキンドルで読みやすいように調整してくれて、ファイルをパソコンにダウンロードしてくれるというものです。あとはキンドルとパソコンをつなげて、キンドルのフォルダにこのファイルをコピーするだけ。キンドルを立ち上げればホームに先ほどコピーした青空文庫のタイトルが表示されているので、選択すればすぐに読めるようになります。>(<佐々木俊尚『電子書籍の衝撃』 2010/4/15> p.30)
つまり、 "Kindle(キンドル)" は、"PDF電子書籍" に "市民権" を与えて、これらを歓迎すべき正式なメンバーとして迎え容れているのである。が、但しこれまでのところ条件が付いたということなのだ。
その条件とは、まともに "日本語" で表示させたいならば、"日本語フォント" を "ご持参" の上でいらっしゃい、というのである。言い換えれば、"日本語フォント埋め込みPDF" に変換してお持込みいただければ、OKです、ということなのだ。
こうした事情から着目される点はと言えば、"PDF電子書籍" 作りにおける "フォント埋め込み" という側面の問題なのである。
ちなみに、自前、自家製コンテンツからの "PDF電子書籍" 作りの場合には、 "フォントの版権問題"( ※注.1 )を除けば、 "フォント埋め込み" そのものは作業的には比較的簡単である。
例えば、"Adbe Acrobat" であれば、
< "Adbe Acrobat" のメニューバーから「ファイル」⇒「PDF の作成」⇒「Web ページから PDF を作成」⇒ "HTML" や "テキスト" を選択後「設定」をクリック ⇒ タブ「フォントとエンコーディング」をクリック ⇒「フォントの埋め込み」で「可能な場合システムのフォントを埋め込む」のチェックボックスにチェックを入れる......>
という手順で、所定の "フォント" を埋め込むことができる。
( ※注.1 ) 一般的にPDFにフォントを埋め込むことは "エンベッド" と呼ばれ、コピーしたり無断配布する行為は著作権侵害に当たる。当該フォントの著作権環境E等を参照 "エンベッド" が認められているかどうかを確認の上、特に断り不要等のように明記されていればPDFに埋め込んで配布することができる。
問題は、"紙" 書籍からスキャニングを通じて作成する "PDF電子書籍" 作りということになる。この作業の "流れ" では、著作権侵害問題から "フォントを埋め込み"="エンベッド" は回避されていて、ユーザーのPC(Windows)にインストールされた「ローカルフォントの使用」で肩代わりされているわけである。
つまり、"紙" 書籍からスキャニングを通じて作成された "PDF電子書籍" は、"埋め込みフォント" を持ち合わせない "丸腰" 、とでも言う状態なのである。
とすれば、もしこれを "Kindle(キンドル)" に転送しても、日本語のコンテンツであっても日本語としては表示されない、ということにならざるを得ない。
これでは、蔵書などの "紙" 書籍からスキャニングを通じて作成された "PDF電子書籍" は、 "Kindle(キンドル)" では "読めない" ということになっていたようだ。
こうした状況下だからこそ、前述引用の<「青空キンドル」>というパーソナルなサービスに "熱い視線" が向けられていたのかもしれない。
いずれにしても、"日本語対応新型 kindle" が、近々より入手し易くなるならば、"紙" 書籍からスキャニングを通じて作成する "PDF電子書籍" 作りへの関心もより高まるのであろうか...... (2010.09.21)
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