どうしても "抗生物質" に依存しがちとなるのが現在の医療現場なのであろうか。ちょっとした風邪でも、なにかと "忙しい" 生活を送る患者側は、効き目が早く現れる "抗生物質" を期待し、医療側も安易にそれに応じる。
こうした抗生物質依存の医療の現実が、"菌" 類を "鍛え上げてしまう" 結果となり、今、警戒されている "多剤耐性菌アシネトバクター" の登場をもたらしていることは容易に想定される。
また、"多くの抗生物質に耐性を示す「NDM1」という遺伝子を持った新たな菌" の広がりが懸念されているインドでは、医療現場で "過剰な抗生物質投与" がなされていたとの指摘もある。
インド(やパキスタン)などでは、先端医療を海外の患者に提供する「医療ツーリズム」が盛んで、その市場主義傾向が "過剰な抗生物質投与" という傾向と相関関係を持っていないとも限らない。
いずれにしても、"副作用のないクスリは無い" という謂われと同様の理屈で、 "抗生物質" における"即効性のある効き目" は、 "耐性を持った菌" の蔓延と引き換えにしていたことが、ここに来て如実に判明した格好なのであろう。
そして、新型インフルエンザのウイルス「H1N1」への警戒の場合でも "国内感染" が問題視とされたわけだが、"多剤耐性菌アシネトバクター" も同様の経緯を踏みつつあるようだ。
と言うのも、以下のように「アシネトバクターは既に国内で広がっていることが否定できない。」という医療関係者からの警告が浮上しているからである。
<帝京大病院:多剤耐性菌院内感染 感染1例目、直前渡航歴なし 既に国内拡大か
帝京大病院(東京都板橋区)で発生した多剤耐性菌アシネトバクター・バウマニによる院内感染で、09年8月にこの菌が検出され感染1例目とされた患者には、入院直前の渡航歴などがないことが分かった。国内で過去に公表された同菌の感染事例4例のうち3例は、海外の病院から転院してきた患者が持ち込んだとみられるが、今回は国内で感染した可能性が高い。専門家は「国内で広まっていることを前提に、感染拡大防止を図るべきだ」と訴えている。
帝京大病院によると、1例目とされるのは悪性リンパ腫で入院していた男性(72)。09年11月に死亡し、感染と死亡の因果関係はないと判断された。感染経路は調査中だが、「海外との関連を裏付ける情報は得られていない」という。
......
賀来満夫・東北大教授(感染制御学)は「アシネトバクターは既に国内で広がっていることが否定できない。それを踏まえて監視体制を強化し、感染拡大の防止策を徹底すべきだ」と指摘している。【佐々木洋、福永方人】>( 帝京大病院:多剤耐性菌院内感染 感染1例目、直前渡航歴なし 既に国内拡大か/毎日新聞/2010年9月7日 )
どうも、ボーダレスなグローバリズム状況の進展速度に対して、関係当局による "防疫体制" という "お役所仕事" は、いつも後手に回り煽られっ放しという印象を禁じえないのであるが...... (2010.09.09)
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