"電子書籍(eBook)" というものは、それだけで "きっと良いもの" に違いないはず、という先入観や思い込みは取り除いた方が良さそうだ。ホントに "良いもの" に仕上げるためには、"副次的な段取り" こそが必要となろう、ということなのである。気取って言うならば、"ユースウェア" への配慮となろうか。
"膨大なページ" の "紙の書籍" をデジタル化して "電子書籍(eBook)" にすれば、確実に "ポータブル" にはなる。この点は、間違いのない事実であるが、片や、変換されたその "膨大なページ" の "電子書籍(eBook)" の "ページ数" が変わるわけではなかろう。つまり、それをいざ読む際には、"膨大なページ" だからこそをデジタル化したはずのその "電子書籍(eBook)" の "膨大なページ" を "捲(めく)る" 動作までが軽減されることにはなっていないのである。当然のことながら......。
この点を口にする人はあまり多くなさそうだが、皮肉っぽい言い方をすれば、ことによったら、本気で "電子書籍(eBook)" を使い倒してはいないのではないかとさえ言いたくなる。あるいは、新しく登場した "電子書籍(eBook)" の "こけおどし" の前で、これはこんなもの......、という妙な "諦め" に陥ってでもいるのだろうか......。
せっかくの "快適操作" が売りの "電子書籍(eBook)" ならば、 "もっと快適に!" と構えてみなくてはいけない......。
別に、小難しいことを言っているつもりはない。"ページ捲り" が煩わしいようであれば、<書籍内ジャンプ移動を配慮した"リンク"機能>を "埋め込む" という、そんな手間を惜しまなければ良いだけのことなのである。
ところで、この<書籍内ジャンプ移動を配慮した"リンク"機能>を自分は余程気に入っているかのようである。何度も同じことを書いているからである。
◆<蔵書の"PDF電子書籍"化でも、書籍内移動の"リンク"機能の埋め込みを活用したい!(当日誌 2010.09.14)>
◆<"PDF電子書籍"ならではのメリットを活かせ/書籍内"リンク"の埋め込み設定は快適(当日誌 2010.08.24)>
今回、またまた書くに至ったのは、事、"ePub 電子書籍" 作りであっても事態はまったく同じだという点を強調したかったからなのだ。
確かに、"PDF 電子書籍" の場合は、上記の<"PDF電子書籍"ならではのメリットを活かせ/書籍内"リンク"の埋め込み設定は快適(当日誌 2010.08.24)>でも書いたとおり、<"Adobe Acrobat" では、この "リンク機能" を埋め込む "ツール" が用意されている。ちなみに、「メニューバー」⇒「ツール」⇒「高度な編集」⇒「リンクツール」と進み、後はウィザードにしたがって "直感的に" 対処すれば、そんなに難しくはない。>という簡便さがあった。
しかし、"ePub 電子書籍" でもさほどの手間は掛からないのだ。というのも、"ePub 電子書籍" とは、元を質(ただ)せば "Web スクリプト" 以外ではないからである。したがって、"Web ページ" で、"ページ内リンク" を張るようにすれば良い。
<a href=" ジャンプ先に指定する箇所のURL "> クリック箇所のテキストなど </a>
というスクリプトを加えれば良いだけのことなのである。
ただ、 "同一書籍(同一Web ページ)" 内でのリンクの場合は、ほんのわずかに手間が掛かる。
<a href="#任意のキーワード"> クリック箇所のテキストなど </a>
を設定するとともに、
<a name="任意のキーワード"> ジャンプ先箇所のテキストなど </a>
というジャンプ先側の設定も同時にしなければならないからだ。(※ "任意のキーワード" の二つは、同一のテキストでなくてはならない!)
ただ、これらの "スクリプトの手直し" は、 "Sigil" におけるエディタ画面で行うとすれば、さほどの手間でもない。
今、"ePub 変換" をも含む "電子書籍(eBook)" 作成に関心を寄せている人たちのその動機はというと、"自炊派" のようにあくまで "自助" です! とするケース、あるいは "ビジネス指向派" のように "エンド・ユーザー" を想定した上で、そこでの使い勝手をシュミレートしつつ......、というケースなどさまざまではあろう。
しかし、いずれにしたところで、「画竜点睛(がりょうてんせい)を欠く」の喩えのごとく、せっかくの "ハイエンド・プロダクツ" である "電子書籍(eBook)" が、ちょっとした配慮の無さで "使い勝手(ユースウェア)" を大きく損なうというのは、実にもったいないことだと思われる。なお、これは "全文検索可"、"フォント・サイズ可変" という "インタラクティブ" の条件にこだわろうとすることとまったく同根の事柄なのである。
「強いから勝つのではなくて、勝つから強いのだ」とは誰の言い草であったか......。
"電子書籍(eBook)" もまた、"ハイエンド・プロダクツ" だから優れているのではなくて、優れた "使い勝手(ユースウェア)" を備えているから "ハイエンド・プロダクツ" として賞賛されべきなのではなかろうか...... (2010.10.28)
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