"電子書籍"は"紙書籍"以上に"人間らしく"振舞えるか?/「潜水服は蝶の夢を見る」 ......

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 "電子書籍(eBook)" に関心を寄せ、とりあえずその "制作プロセス" に拘泥(こうでい)している昨今である。
 ただ、本が好きで、PC技術も好きだからという、そんな観点だけでアプローチしていたのでは "貧しい" 話かなぁ、と......。これでは、やがて "魂" さえ売り渡した技術屋、 "魂" を失った職人に成り下がるのが落ちではないか、と......。
 やはり、"電子書籍(eBook)" という "ニューメディア" には、"紙の書籍" が乗り上げている暗礁を破砕し、新たな航路を切り拓く、そんな可能性があると信じてみたいわけである。
 "本" というものは、ますます "寂しい孤独感" に苛まれる宿命にある現代人の、その "魂の最後の砦" とならなければならないはずではないか。残念ながら、現行の "紙の書籍" の群れは、 "さまざまな事情" の重なりによって、書籍が本来秘めていたに違いない "ミッション" をかなぐり捨てて、"自己保身と儲け主義" に奔走するバカリアリズムに墜しているとしか言いようがなさそうである。
 楽観論であることは承知しているが、この閉塞状況を突破して行く可能性が残されているとするならば、それは、限りなく "コスト・フリー" に接近しようとしながら、"魂" の震え持つ書き手を模索している "電子書籍(eBook)" という "ニューメディア" ではないか......。

 昨日、今のところ "電子書籍(eBook)" なんぞとは無縁とも言うべき家内が、このところ便利そうに愛用している図書館から借りて来たとある本を、「これ、お勧め!」と言って差し出したのであった。
 その本とは、<『潜水服は蝶の夢を見る』[単行本] ジャン=ドミニック ボービー (著), 河野 万里子 (翻訳) >という本であった。(映画化/<2008年新春全国ロードショー映画『潜水服は蝶の夢を見る』オフィシャルサイト>
 手に取ってみて、その本の貴重さはすぐにわかった。<一切の "随意運動" が不可能となった「完全な閉じ込め状態=totally locked-in state (TLS)」>の患者さんが、 "口述筆記" いや "20万回の瞬き" で "筆記" してもらって仕上げた「魂のエレガンス」(同書訳者のあとがきのことば)を著したものであることが......。

 以前、この日誌でも以下のとおり、"TLS" という人間にとっての最大の "受難" とその "象徴性" については書いて来た。

<ただ、ひょっとすれば的外れなのかもしれないが、ちょっと別な視点から考えてみると、自分も含めた多くの人たちが、 "マインド" 的には既に、この "閉じ込め症候群" の、その当事者、またはその予備軍となっている......、のではなかろうかという点に眼を向けたいのである。
 端的な言い方をするならば、現代環境のさまざまな側面が、 "コミュニケーションの挫折や障害" を生み落としがちであり、その結果、大なり小なりの "自閉症的傾向" (孤独地獄?)が静かに広がっている......、と見えるからなのである。両者は、一見、方向は逆のようにも思えるが、孤絶した苦悩という点では "地続き" のようではないか。
  "表現手段" は自在であっても、なぜか他者との "意思疎通" が上手く行かず、ひょっとしたら、身体的な "病" としての "閉じ込め症候群" とは次元は異なりはするものの、 "マインド" なレベルで "孤立・孤絶感" に苛まれている日々の状況は、人々をしてこの "症候群" は決して絵空事や "他人事" ではないという心境にさせるのかもしれない。
 つまり、 "ALS(筋萎縮性側索硬化症)" の患者さんたちの "閉じ込め症候群(TLS [totally locked in state])" の苦悩に、 鋭敏に、過敏に"共鳴" してしまうことになる "マインド" の素地が人知れず用意されてしまっている......、と。>( 下記エントリーの②より )

◆ ①<"閉じ込め症候群" と、 "人間的な意識" によって寄り添われる "人間の命"(当日誌 2010.03.22)>
◆ ②<なぜ、 "閉じ込め症候群" に少なくない人々が関心を寄せるのだろうか(当日誌 2010.03.24)>
◆ ③<"TLS 患者" における、"自律神経系" の "非言語的コミュニケーション"(当日誌 2010.03.25)>

 この著者は、元はと言えば、世界的なファッション雑誌『ELLE』の編集長をも務めた "つわもの" そのものの男であった。が、突然の脳出血で、唯一自由に動かせるのは左目の瞬きだけという<ロックトイン・シンドローム(LIS)>の身になったのだ。そして、その、まるで重い<潜水服>に閉じ込められたような過酷な境遇の中で、あたかも<蝶>の羽ばたきのような軽妙な文章、メッセージを、本として著したのである。

「野心的で、しかも斜にかまえたところがあり、これまで失敗とは無縁の人生を送ってきたL氏(自身をなぞらえている[引用者])だが、ここで初めて孤立無援の苦悩を経験し、揺らぐことがないと思っていた確信も、すべて崩れていくのをまのあたりにする。そして、近しく思っていた人たちさえ、実は見知らぬ人間でしかなかったことを、知る。」とか、
「またある時は、僕は顔を青く塗り、頭のまわりにダイナマイトを巻きつけた、『気違いピエロ』の主人公だ。そのままふと、雲がわくように、マッチを擦りたい衝動に駆られる。」とかといった当然ながらの "落ち込んだ心境" と抗いながら、
「楽しみのためには、匂いや味についての、鮮烈な記憶をよみがえらせてみる。それは決して汲み尽くしてしまうことのない、人間の感覚の貯水池だ。残り物をうまく料理するコツがあるように、僕は今、思い出をじっくりと煮込むコツに、磨きをかけている。」というような「魂のエレガンス」ならではの想いを示して見せるのである。

 こうした、まさに "魂からのメッセージとしての著作" に接してみるにつけ、今さらのように、"書籍" が秘めた "ミッション" のようなものに目を向けさせられるのだ。
 そして、果たして "電子書籍(eBook)" という "ニューメディア" は、こうした "書籍" 本来の "エレガント" な姿を支える存在になれるのかと......。そのために、"電子書籍(eBook)" はどうあるべきかと...... (2010.11.08)













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