"Web ページ" と "電子書籍" の差異はいくつもあろうが、"Web ページ" が縦方向にいわば "エンドレス" で表示されるのに対して、"電子書籍" は各ページが限られたスペースで構成されていることから、"改ページ" がなされるという点にも注目したい。
この点は、"ePub"、"PDF"、"Text" というフォーマットの違いがあっても "電子書籍" に共通して指摘できる点であろう。
余談めいて言えば、この点は結構おもしろいことだと感じている。"電子書籍" なぞと "大見得" (?)を切っていながら、"紙の書籍" の当たり前の制約をそのまま継承しているからである。
だが、考えてみると、"紙の書籍" の "ページ" という区切りは決して悪くはないと思っている。その "ページ" の区切りというものが、読み手に "安堵感" (?)めいた気分や、気分そのものの区切りなどを適時与えているかのようだからである。
妙な譬えとなるが、もし人生の一生が、昼夜で区切られた日々で構成されておらず、エンドレス的な長い一日で構成されていたならば、どんなにか耐えがたいことか......、とバカなことを考えたりする。と、"ページ" で構成される "書籍" というものは、"日々" の連なりで構成される人生と似ているのかなぁ、と思ったりするのである。
ただ、こうした "ページ" 区切りや "日々" の区切りにも、支障は付き纏う。
ちょうど、深夜にお構いなく電話を入れて来る非常識な者に閉口するように、"ページ" 区切りというものがあるにもかかわらず、"ページ" の途中から "章や節" が始まったり、挿絵や図表が "ページ" を跨(またが)ったりする場合のことである。
一向に気にしない読み手もいなくもなかろうが、自分なぞは、その時点でその本をゴミ箱に投げ込みたい心境となってしまう。
以前に、"ePub 電子書籍" 制作に関連して以下のように書いたことがある。
< "ページ単位" の表示が指定できる "PDF 電子書籍" とは異なり、"ePub 電子書籍" は、下手をすれば "Web ページ" のように縦長で連続したページの、その "ぶつ切り" 表示になりかねない。
"章立て"、"章区切り" の構成までを考慮した書籍の場合、やはり各章の "頭" は、表示ページの最上部の先頭に表示したいに違いなかろう。いわゆる "頭出し" 表示のことである。
これを、"XHTML" スクリプトの修正という "手作業" の調整で進めると、結構煩わしい作業になってしまう。
その点、"ePub editor = Sigil" であれば、"頭出し" したい各章 "頭" 部分の直前の "行" にカーソルを置いて、"Chapter Break" を掛けるとスンナリと対処される。>(<"ePub editor = Sigil"での"Chapter Break"機能は、各章"頭出し"に便利に使える! (当日誌 2010.11.07)>)
この時、"ePub editor = Sigil" の "Chapter Break" 機能に大いに好感を抱いたものであったが、言ってみれば、どうも "書籍編集" の作業にあっては至って "常識的配慮" だったと言えそうである。
と言うのも、どんなフォーマットの "エディタ" であっても、"Chapter Break" に相当する機能、つまり "改ページ" 機能というものが備わっているからである。
昨日、"i文庫HD" について書いた際、<txtファイル>についての解説で、
<txtファイルはShift-JISまたはUTF8形式で、改行はCR+LFとなります。
txtファイル内の装飾形式は、青空文庫準拠の形式となります。
青空文庫形式についての詳細は青空文庫のページを参照して下さい。
拡張形式として、以下の形式をサポートします。
<PBR> 改ページ
<IMG SRC="xxx.jpg"> 挿絵、同zip内の画像ファイルを挿絵として表示します。>(<使用できるファイル形式/i文庫HD/ベンダーサイト>)
と引用した。
ここで注目したいのは、"<PBR> 改ページ" という箇所なのである。しっかりと、"改ページ" という書籍編集上の基本が踏まえられている点なのである。
ちなみに、文書エディタである、"MS Word" にしても "秀丸" にしても、この "改ページ" 機能については手ぬかりなく装備している。
"MS Word 2007" では、メイン・メニューの<挿入>に<ページ区切り>という機能を装備して、ページの "頭出し" をしたい文書の行の先頭にカーソルを置いて、この<ページ区切り>ボタンをクリックすると、それが叶うのである。
それが意外と重要な役割を果たすことになる。"Word 文書" は "PDF 電子書籍" 制作の貴重なベースとなる(特に、"縦書き電子書籍" では、今のところこれ以外には見当たらない有力なベースである!)わけだが、この "改ページ" 機能は、その "PDF 電子書籍" のレイアウト上の体裁、見映えを少なからず向上させるのである。
"電子書籍" 制作の技法には、斬新な視点や方法が多々含まれているが、同時に、従来からの "DTP" 技法の基本も決して見過ごすべからず、という再認識なのである...... (2010.12.02)
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