Webのブラウジングなどでは、できるだけ再表示を早めようとして、既に内在するコンポーネントについては、再読み込みを迂回して既存のコンポーネントで用を足すということがある。いわゆる "キャッシュ" 機能と呼ばれるものだ。これは便利てある一方で、また迷惑でもある。
iPad/iPod 向けで "eBook" の制作をしている時、しかも微妙な数値の変更をしなければならない "レイアウト" 調整をしている際などには、ちょっとした数値の修正更新をかけても、まったく表示に変化が生じない場合などあったりする。
当初は、修正側の操作の問題かと思ってもいたが、何度も経験するうちに、どうもこれは "キャッシュ" 機能だろうという意を強めている。
おまけに、ソース・ファイルが同じで若干ファイル名を変えただけのものは、同期そのものさえ拒絶する場合があるのには、いささか驚いている。重複のエントリーを回避しようとするスタンスなのだろうか......。
いかに、表示の立ち上がりの早さが求められるブック・リーダー・タブレットではあっても、読む立場では有難いことが、制作時の検証で活用せざるを得ない立場の者にとっては、結構、辛いものがある。
それも、PC上のエミュレータ的なブック・リーダーでは検証できないような詳細な部分の検証では、"実機" としての iPad/iPod を使わざるを得ないわけであり、ほかに手がないだけに否応なくストレスが溜まるということになる。
聞くところによれば、iPad/iPod などでは、"iTunes" を通じてファイルを " 削除"したとしても "本来的な削除" にはならずに "留め置き" 状態となっているらしい。この辺からも、既存ファイルの再活用に依存する "キャッシュ" 機能重視の空気が十分に伝わってきたりするわけだ。
今のところ、まさに "騙し騙し" やっているのが実情なのであるが、Web ブラウザのように "キャッシュ" ファイルを消去するような機能はないのであろうか......。
ところで、自分は "キャッシュ" 機能という原理にあまり好感を抱かない。
まあ、 "過去の経緯に依存" することを旨とする "マシーン" であれば、さもありなんとも思えるが、人の脳活動や、はたまた人の世の動きにまで "キャッシュ" 機能もどきの現象や仕組みが幅を利かしているのはどうかと思うのである。
つまり、"変化" の時代だの何だのと言いながら、新現象をそれとして受け容れずに過去の蓄積物にイージーに依存したり、無理やりそれらに新現象そのものを還元して済まそうとする姿勢や体制が、マンネリズム、事無かれ主義でしかないと目に映るのである。
新現象を、まさに "新しいものの出現" として受け容れたり直面したりせずして、成長も進歩も改革もあったものではない......、と。
現代という環境は、スピード処理と低コストとを過度に重視するところから、たぶん、未来を向いているようなカモフラージュのもとで、専ら、過去の遺産で事を済ますという、"超キャッシュ志向" が強まるばかりなのかもしれない...... (2010.12.27)
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