なぜ、"Web ページ" を "(ePub)電子書籍" にするのかと尋ねられることがある。
差し当たって現状では、"ePub 変換" のスキル・アップにとってこれ以上に適切な素材はないからだと答えるのだが、実を言えばそれだけではない。
PCで、"Web ページ" を閲覧するのは、それはその用途があるからに違いないが、その用途の中には、"コンテンツをジックリと読む" というニーズは含まれてはいない! と言っていいのかもしれない。
とにかくスピーディに "ファースト情報" を得るためには、"Web ページ" は最適だと思われる。しかし、PCにかじりつくような、前のめりの姿勢では、コンテンツを "ジックリ" と読む、ということにはならないのではなかろうか。
『電子書籍の衝撃』の筆者/佐々木俊尚氏は、この辺の事情を以下のように述べていた。
<* 姿勢と距離から見る、コンテンツとデバイスの相性
いま、ものすごい勢いで「タブレットサイズ」と呼ばれる電子ブックを読むためのコンピュータが登場してきています。
つい最近まで、電子ブックを読む機器はパソコンか、そうでなければケータイでした。しかし、パソコンやケータイで本を読むという行為が本当に最適な読書スタイルなのかというと、かなり疑問です。
コンテンツは、それに適した「姿勢」と「距離」が用意されないと、じっくりと楽しんだり取り組んだりできません。>(佐々木俊尚『電子書籍の衝撃』/ディスカヴァ一携書/2010.04.15)
もっとも、 "忙しい" 現代人のどの程度が、飛び交うコンテンツを "ジックリ" と読みたいと思っているかという、そんな疑問がないわけではない。
"ジックリ" と読むことの代表格とも言える小説でさえ、"ダイジェスト版" を望む人もいるらしいことを想像すれば、決して杞憂(きゆう)ではないのかも......。
ただ、そんな人ばかりではないのもまた世間であろう。飛び交う情報に右往左往させられる虚しさに厭(あ)いて、自身の頭を働かせて、コンテンツを "ジックリ" と読みたい衝動に突き動かされる人たちが存在するのもまた事実であるに違いない。もとより、自身の頭を働かせざるを得ない "学生たち" や "学ぶ者たち" の存在も目に浮かぶ。
"電子書籍" と現状のタブレットは、まさにそんな人たち向けとして "お誂(あつら)え向き" なのだと知っておきたいわけである。
ということで、"Web ページ" のコンテンツを "(ePub)電子書籍" 化することの意義は確実にあるのだと考えている。
ある知人は、中身の濃い "Web ページ" に関しては、そのすべてを "プリント・アウト" して "ジックリ" と読むのだと言っておられたが、オールド・ファッションだと言うよりも、実に理に叶った対処法のはずである。
そんなコンテンツをこそ、"(ePub)電子書籍" 化して、手元のタブレットで "ジックリ" と読んでいただきたいものだと思った。
こうなると、問題の中心には、果たして "ジックリ" と読みたいようなコンテンツがどれくらいあるのか......、ということになるのかもしれない。"Web ページ" にしても同じことであり、"ジックリ" どころか、"流し読み"、"飛ばし読み" で十分に用が足せるモノばかりならば話はガラリと変わってしまうが......。
しかし、企業の "Web ページ" にしても、"売らんかな" という "押し売り" 的情報ばかりを溢れさせていたのでは、"(ePub)電子書籍" 化どころの話ではないか......。
まあ、こんな時代環境だからこそ、"ジックリ" 読ませるコンテンツ作りや、そのための技量を "ジックリ" と磨いて、来るべき時に備えるべきだと考えたい...... (2011.01.15)
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