今、"東日本大震災" への "国民的振舞い(?)" として、「自粛」とそのムードが蔓延していると言われる。下記の記事、<「自粛ムード」国内蔓延(1) 続出する「中止」「延期>が、その微妙な事情を手際よく伝えている。
ここで注目したいのは、情感的には「自粛ムード」に傾きつつも、<異論を唱える声>が "気になる" という点なのかもしれない。
つまり、<日本人の「絆」の強さを示すと指摘される一方、「このままでは日本を停滞させる」との声も上がる。>という面についても、冷静に見つめるべきなのかもしれないと思うのだ。
<むしろ応援ムードで行きたい>、<過度な自粛は避ける考え>、<「権力で自由な行動や社会活動を制限するのは最低限にとどめるべきだ」としたうえで、「経済に影響があるのかも冷静に考えるべきだ」との見解>、<長期化すると、被災者が『自分たちが迷惑をかけている』と思うようになる......。合理的判断に基づくもの以外、感情的な自粛はむしろ必要ないのではないか>などの立場が含んでいる懸念は、ただ単に "考え過ぎ"、"冷酷" だと切り捨てて良いものとは思えない......。
これらについて考える時、何よりも、今回の "大震災" の影響、その支援・復旧・復興の見通し時間軸は相当に長く、"長丁場" とならざるを得ない、という点。つまり、その "息の長い支援活動" が見込まれざるを得ない点ではないかと思う。
誤解のないように言いたいが、「自粛」という行動様式は、ひょっとしたら「人の噂も七十五日」ということわざと通じる面があるのだろうか......。変わらぬ "本流" と、目まぐるしく変化する "支流・傍流" という構図において、"支流・傍流" での出来事・変化に対しては、何はさておき "当座" の対応の "適合性" が必要だとする感覚である。
だが、今回の "大震災" という出来事は、次第に明らかになりつつあるように、決して"支流・傍流" での出来事・変化なぞではなかろう。"本流" のあり様にもきっちりと作用を及ぼす "巨大な出来事" だと言うべきであろう。
一切の修復に要する時間は膨大なものになるとともに、その "やり方" 、いや "人の生き方" 自体にも問い返しが向かうような、そんな際どい出来事なのだと思われる。
であるからには、とかく "当座" 対応に関心が向かところの「自粛」という行動様式だけでは、とてもおぼつかないのではなかろうか。
「自粛」行動を採りながら、より長期的な行動展望を探せば良いという考えも一見理がありそうではあるが、果たしてそうしたものであろうか......。シニカルな言い方をするならば、往々にして「自粛」行動の陰に、「喉元過ぎれば熱さ忘れる」という傾向があったかもしれないことを思い起こすと、そんなことでいいのかなぁ、と......。
今必要なのは、どんなに "適合的" に見えようが "当座" で消え失せるようなムードや風潮ではなくて、"持続的" で、決して "後戻りしない" そんな支援・復興体制のための "土壌作り" (文化作り)ではないか......。
<「自粛ムード」国内蔓延(1) 続出する「中止」「延期
東日本大震災後、国内に「自粛ムード」が蔓延している。祭りやイベントの中止が相次ぎ、めでたいはずの結婚式や入学式も延期が続出。それは震源から離れた西日本も例外ではない。「被災地が苦しんでいるのに、自分だけが...」。日本人の「絆」の強さを示すと指摘される一方、「このままでは日本を停滞させる」との声も上がる。
みこしを担ぐ威勢の良いかけ声とともに、東京の下町に初夏の訪れを告げる浅草神社の「三社祭」。毎年約150万人の人出でにぎわうが、今年は東日本大震災の影響で自粛が ......
中止を発表して以降、神社には賛否の声が寄せられたが、中止に賛成が6割ほど。反対意見の中には「自粛が経済の停滞を招く」との声もあった。
約1万2千発が夜空を彩る「東京湾大華火祭」も開催を断念した。......
停電や余震の懸念が小さい西日本にも自粛ムードは広がっている。
砂浜で日本酒を飲み干し、タイムや飲みっぷりを競う高知県香南市の「どろめ祭り」は昭和34年の開催以来、初めて中止。福岡市中央区の福岡城跡も城壁などのライトアップをやめた。「節電ムードからどうかと判断した。被災者の心境を考えるとやれない」(市緑化推進課)
まもなく見頃を迎える桜の花見も影響を受ける。東京都の石原慎太郎知事は3月29日の会見で「一杯飲んで歓談する状況じゃない」と発言。花見の名所・上野恩賜公園(東京台東区)は、園内の至るところに宴会の自粛を呼び掛ける看板が設置され、ごみ置き場や仮設トイレもなく、ひっそりとした花見シーズンを迎えようとしている。
日本中に漂う自粛ムード。これに異論を唱える声も少しずつ出ている。
静岡県の川勝平太知事は3月30日の会見で、「自粛ムードが必要以上に広がっている。むしろ応援ムードで行きたい」と、相次ぐイベント中止に苦言を呈した。大阪府の橋下徹知事も「大阪、関西は通常以上にしっかりやる」と過度な自粛は避ける考えを表明している。
蓮舫節電啓発担当相は1日の記者会見で石原知事の発言に対し、「権力で自由な行動や社会活動を制限するのは最低限にとどめるべきだ」としたうえで、「経済に影響があるのかも冷静に考えるべきだ」との見解を示した。
「被災地を思って慎むべきだ」「日本を停滞させる」。2つの意見を内包しながら、自粛ムードは今後も続くのか。
立命館大の門田幸太郎教授(社会心理学)は「計画停電も実施され、電気を使用することで周囲に迷惑をかけているうしろめたさもあり、空前の自粛ムードにつながった。さらに日本人特有の『右へならえ』の心理も働き、拡大したといえる」とした上で、「ただそれが長期化すると、被災者が『自分たちが迷惑をかけている』と思うようになる」と指摘。「合理的判断に基づくもの以外、感情的な自粛はむしろ必要ないのではないか」と話している。>(<「自粛ムード」国内蔓延(1) 続出する「中止」「延期」/msn 産経ニュース/2011.4.1 22:13>)
場合によってはいつもそうであったかもしれないのだが、「自粛」と称しながら、実のところ「自粛強要(?)」だったりする場合には、結局は "嵐が通過するのを待つ" 姿勢しか機能させない...... (2011.04.03)
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