今、あちこちで "見える化" という言葉が飛び交っている。下手な文章、要領を得ない文章で濁された観念やイメージは、まさに "視覚的イメージ" によって "見える化" がなされて当然だと思っている。
そんなことを考えてみると、現代で、もはや成り立ちにくくなっている "小説" なぞこそ、この "見える化" アプローチによって存分にサポートされて良いのではないかと、マジに思ったりする......。
新聞や雑誌の小説で、もし気が利いた "挿絵" がなかったら、誰がこんなアホくさい文章を読むものかと思わされる水準のものもないではない。目に飛び込んでくる印象的な "挿絵" が、読み手側の "イメージ受け容れ態勢" とでもいうものを醸成してくれ、それゆえに、説得力のない文章でもどうにか沁み込んでくるということが、往々にしてある、あり過ぎるということである。
実は、くどいほどにこのブログにも引き合いに出している自作の小説『海念と保兵衛』にしても、気が利いた "挿絵" があったならばどんなにかバリューアップするものだろうかと、密かに思い続けている。
絵を描くことは嫌いではなく、そこそこ描くのではあるが、何しろ "描く" 以上に "能書き" 能力が先走るものだから、筆が進まなくなってしまうわけだ......。
この小説の "挿絵" としては、あの『鬼平犯科帖』を支えた "墨絵風の挿絵" でなければいけない！ と贅沢なことを望んでいるものだから、なかなか実現しない......。
まあ、それはさて措き、"絵心" のある方ならば、小説などの "挿絵" に比重をかけてみてはどうだろうか。無責任なことを言うようだが、"言葉によるイメージ喚起力" が想像以上に低迷しているかに思える現代にあって、それを補うに違いないかと思える "挿絵" の持つ意義は、これまでになく大きくなっているのではなかろうか。
そして、この点は "電子書籍" にも十分に当て嵌まりそうではなかろうか......。
"青空文庫" は、確かに、読書好きの人には素晴らしいリソースだと思われる。しかし、"言葉によるイメージ喚起力" 不全の人たちも相応に馴染めるように、気が利いた "挿絵" が施されていたならば、遥かに人気を呼ぶのではないかと、老婆心を抱いたりしている。
"紙の書籍" では、"挿絵" や図版の組み込みはコスト高に直結すると聞く。それに対して、"電子書籍" では文字も図版も差がないようだ。いや、"電子書籍" は、何でもアリ！ が取得なのであって、"挿絵" であろうが、図版であろうが、audio であろうが、video であろうが......。
ならば、インフレ気味(?)の言葉の世界に "挿絵" を誘いこんで、読者の心の琴線を震わそうという手立ても、大いにあって然るべきなのかもしれない。
ちなみに、"絵心" のある方ならばの話だが、文字だらけの "青空文庫" の気に入った作品に、オリジナルな "挿絵" を埋め込んで、独り悦に入るのも一興ではなかろうか。
"青空文庫" の表記法には、"画像の挿入" も考慮されていて簡単に "挿絵" などを埋め込むことができるのである。
その詳細は、昨日も紹介した下記のエントリーが参考になるかと思う。
◆ 参照 "i文庫HD"(for iPad)/"SkyBook"(for iPhone)向けに"青空文庫形式"でeBook制作！（ 当誌 2010.12.07 ）
"電子書籍" を普及させたい側は、自分ならばどんな "電子書籍" が読みたいか、それを真剣に想定すべきであろう。自分の場合、随所に気の利いた "挿絵" が散りばめられた、そんな "電子書籍" を期待したい...... (2011.07.06）
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