日本では、菅首相の退陣やタレント島田紳助の引退などが話題に上っている折、世界のIT業界の頂点でも "辞任" 劇が展開した。米Apple社で、スティーブ・ジョブズ氏が最高経営責任者(CEO)を辞任するという発表を行った。
この間の Apple の膨大な業績が、ジョブズ CEO に負うところが大であっただけに、辞任発表の影響もまたケタ違いの規模で波及したようだ。
まあ株価というものは、とかく "針小棒大" に反応するもので、またトゲが抜ければその後はケロリと反転していくのも株価変動のようだ。だが、それにしてもメガトン級の変動が生じたものである。
"対 Android" 戦という難問や、"iCloud" 構築事業というこれまた決して容易ではなさそうな課題などに遭遇しているだけに、ジョブズ氏辞任後状況への言い知れない懸念も加わり、株価は "超下落" したものと思われる......。
―――― <ジョブズ氏辞任:時価総額2兆円近く減少ジョブズ氏がCEOの辞任を発表したことを受け、Apple社の株は時間外取引で7.39%下落し、時価総額は240億ドル(約1兆8400億円)減少した。
米Apple社は8月24日(米国時間)、以前から健康状態を懸念されていた、同社を象徴するリーダー、スティーブ・ジョブズが最高経営責任者(CEO)を辞任するという発表を行った。その後の時間外取引で同社株価は7.39%も下落し、時価総額は240億ドル(約1兆8400億円)減少した。
辞任のニュースによる下落の前、24日の終値は、前日より0.69%増の376.18ドルだった。
ただし、ジョブズ氏がCEOの職を離れるのは以前から予想されていたことだとして、アナリストらは株価下落を重要視していない。「率直にいうと、これで懸念が取り除かれる。いままでは、この日がいつやってくるのかが分かっていなかった。おそらくは最良の結果だ」と、米WP Stewart社のマイケル・ウォーカーはReutersの記事で述べている。
結局のところ、市場はすでにジョブズ氏のCEO辞任を織り込み済だったと、ウォーカー氏は話す。2004年に珍しいタイプの膵臓ガンと診断され、2009年には肝臓移植を受けたジョブズ氏は、今年1月17日に再び病気療養休暇に入っていた(日本語版記事)。
ジョブズ氏は、ビジネス史上でも最大の「カムバック」を果たした人物だ。同氏は自らが1976年に創設した会社を1985年に追放されたが、1996年に請われて同社に戻り、1997年にCEOになった。そのときマイケル・デルは、同氏だったら破産寸前のApple社をどう建て直すかと問われて、「私だったら閉鎖してカネを株主に返す」と答えたものだった。
しかしその後、Apple社は『iMac』や『iPod』、『iPhone』や『iPad』など、数々のすぐれた製品で成功を続け、長年のライバルであるMicrosoft社や、最近のライバルである米Google社を抜き去ってきた。すぐれたビジョンの持ち主であるジョブズ氏の下、Apple社は今年8月、米Exxon Mobil社を抜いて一時的に時価総額で世界一になった。[10日終値の時価総額が3470億ドル(日本円でおよそ26兆7000億円)で、Exxon Mobil社の約3480億ドルを抜いていた]
さらに同社は、今年7月末のある時点で、手元流動性で米国政府を上回った。Apple社には760億ドルの現金があったのに対し、ワシントンの米国政府はどんなに探しても740億ドル弱しか無かったのだ。
今後の同社の課題は、新しいリーダーの下で、これまでのような成功を続けられるかということだ。ジョブズ氏はCEO辞任を発表した手紙の中で、後任として、ティム・クック最高執行責任者(COO)を強く推薦した。ビジョンというよりは事業執行の能力で知られる(日本語版記事)クック氏だが、Apple社の取締役会はこの推薦を受け入れ、同氏をジョブズ氏の後継者に指名した。
ジョブズ氏は会長として残る。「私は今後のApple社が、最も素晴らしい革新的な時代を迎えると確信している。自分の新しい役割において、その成功に貢献することを楽しみにしている」とジョブズ氏は書いている。
TEXT BY Michele Travierso TRANSLATION BY ガリレオ -緒方 亮/合原弘子>
( ジョブズ氏辞任:時価総額2兆円近く減少/WIRED JAPANESE EDITION/2011.08.25 )
今回のジョブズ氏辞任で、"スマートフォン" 劇は序幕が終わり、"Intermission" となるのであろうか。あるいはそんな余裕もなく、観客 "スマートネイティブ" たちの熱狂の中で "空中戦 Cloud 篇" へと突き進んでいくのであろうか...... (2011.08.26)
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