スマホ、スマホという言葉が飛び交い、誰も彼もが "スマートフォン" を手にする環境となっている。世の投資資金もこのスマホ関連企業に流れているとも言われる。
確かに、"スマートフォン" は、単なるニューデバイスであることを超えて、いろいろな意味合いで時代をけん引する "キー・コンセプト" 現象になっていそうだ。
したがって、ハードの新製品リリースだけに目を奪われるのではなく、"スマートフォン" の周辺で始まっているある種の "うねり" に敏感となるべきなのかもしれない。
こうした "うねり" 全体を広い視界と洞察で、読み応えのあるメッセージにまとめた著書に出会った。本田雅一著『携帯電話がなくなる! これからスマートフォンが起こすこと。 パソコンは消える!』(東洋経済/2011.06.02 )である。
濃度の高い内容なので、全容を紹介するのは難しい。そこで、著者が "スマートネイティブ" と呼ぶ新世代に関する部分のみに目を向けてみたい。
すると、その行動スタイルが、何とも、" iPod/iPhone " などの "スマートデバイス" が依拠する技術特性( "コンパニオンデバイス"、"同期" )とかなり符合しているかのように見えるから面白い......。
―――― <これからの時代を動かしていくのは、スマートデバイスとソーシャルメディアが当たり前に存在する環境で育った、"スマートネイティブ" たちだ。彼らは、かつてのインターネットネイティブたちと同様、旧世代とは異なるコンセンサスの下に新しい文化やビジネスを生み出していくだろう。>( 本田雅一著『携帯電話がなくなる! これからスマートフォンが起こすこと。 パソコンは消える!』東洋経済/2011.06.02 )
そして、"スマートネイティブ" たちの行動特徴は以下のように紹介されている。
―――― <実はインターネットが登場したときと同じように、今も大きな世代的変化が起きている。スマートフォンとソーシャルメディアの組み合わせを中心にデジタル世界に接続しているユーザーたちは、すでに "インターネット" の存在を無視し始めているのだ。
米国のメディア報道によると、アメリカでは10代の若者が、個人用メールアドレスを取得しなくなっている。なぜなら、ソーシャルメディアを通じてメッセージを交換した方が、よほど便利で簡単だからだ。そもそも連絡を取り合う仲間なら、当然、ソーシャルメディアでも関係が構築されているから、その枠組みの中でメッセージを交換する方がずっと便利なのだ。
これを裏付けているのが、米ビュー・リサーチ・センターの調査結果だ。これによるとアメリカでは若年層を中心にブログ離れが進み、フェイスブックなどのソーシャルメディアへと収斂しているという。さらにこの調査では、2006年から2009年の3年間で、12歳から17歳のブログユーザーが半減していることが明らかになった。
ブログの基本スタイルは、パソコンの前に座って比較的長めの文章を書く。インターネット上のコミュニケーションのひとつだが、不特定多数に対して自分の考えを伝えるという使い方に優位性を持っている。しかし、ソーシャルメディアが普及してきたことで、ブログを通じた不特定多数とのコミュニケーションより、知り合いや友人同士とふんだんにコミュニケートするための閉じたネットワークを求める使い方に重心が移ってきた。
こうなると、彼らはもはやインターネットのユーザーではないと言える。メールアドレスを持たず、ブログも読まず、パソコンの前に座ってキーボードを打ち続けることもないのだ。そして、完璧にパーソナル化されたパソコンとして、スマートフォンは彼らとデジタル世界とのインターフェイスを一手に引き受けている。>( 前述、本田雅一著 )
これらの兆候と、"コンパニオンデバイス" としての "スマートデバイス" の存立構造は何と酷似していることか......。
―――― <そもそも iPod は、パソコンから音楽を楽しむ機能だけを取り出すために誕生した。音楽やプレイリストはパソコンに入っていて、その一部を iPod に切り出して持ち歩くというのが基本コンセプトだ。
こうした製品を "コンパニオンデバイス" と呼ぶ。パソコン以外のアップル製品は、実はほとんどがコンパニオンデバイスである。
...... iPhone がコンパニオンデバイスであるという点を、もうちょっと詳細に述べてみよう。iPhone はパソコンに比べるとコンピュータとしての能力は格段に低い。だが、"宿主" であるパソコンの能力を利用することで、パソコン並みの情報処理能力を発揮することができる。
音楽のデータが多過ぎて iPhone に入り切らなければ、自動的に曲を詰め込む。...... iPhone 内部で管理しているのは一部にすぎない。検索用のインデックス情報はパソコンが抽出しておき、それを iPhone 側に転送している。
こうすることで、パソコンが扱うリッチで多様なデータが、iPhone という小さな装置でも軽々と扱えるようになるわけだ。
これに関しては、なんとも "スマートな(賢い)" やり方ではないか。......>( 前述、本田雅一著 )
"スマートネイティブ" の行動傾向と "スマートデバイス" の存立構造の特徴とを結びつけるのは短絡的かもしれない。だが、"スピードと移動性" とが鋭く要請される時代環境によって、奇しくも辿り着かされた着地点のようにも見えてならない。問われているのは、 "スマート(賢い)" の中身なのかもしれないが...... (2011.08.25)
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