"YouTube" の動画には、膨大な回数で視聴されているものがある。そして、どーれ、と思って観てみると、情報としては意外と淡々としたものであることに気づかされる。
どうしてこれが......、と訝しがる気持ちを抱くが、それを下記の記事は説得力を持って解き明かしている。
"YouTube" 自体への人気の秘密も了解されてくるし、この辺の事情に無頓着であってはいずれの情報発信であっても、マーケティングであっても功を奏さないという点が再認識させられる思いであった。
理性的な事実認識の共有がなければ危うい! ではないか......、と正論を打(ぶ)つ前に、状況の事実認識を徹底させることの方が先決なのかもしれない。
―――― <人気動画が拡散する理由ある動画が3億6400万回以上も視聴されている理由は何だろう? 60秒間ジョギングした後にはニュース記事を共有しようという気持ちが強まるという研究結果の理由は?
3億5500万回も視聴されているYouTube動画がある[翻訳時点で3億6400万回]。 『チャーリーが僕の指を噛んだよ――まただ!』というタイトルで、ソファに座った2人の子どもが登場する、特にたいしたことは起こらない動画 だ。
この動画がこれほど人気になった理由は何だろう? ペンシルベニア大学ウォートン校のジョナ・バーガー准教授によるとそれは、この動画が視聴者に呼び起こす生理的反応や感情と関係があるのだという。
ハリーとチャーリーの表情は豊かで、56秒の間に、彼らの顔は期待から苦痛、そして笑いへと変わる。ハリーが本当にケガでもしたのではないかと心配になるその瞬間、ハリーの顔には笑みが広がる。ほっとした気持ちや喜びは明白で、見る者に伝染する。
バーガー准教授によると、このような動画に人気が集まるのは、それらが身体を興奮させ、さまざまな生理学的変化を引き起こすことに原因があるという。ハリーとチャーリーを見ているとき、われわれは束の間、心拍数が上がり、汗腺が開き、身体が動く準備をするなど、「覚醒的な興奮状態」(high arousal)になる。画面上に展開する感情の流れを、自律神経系がなぞるのだ。......>
( 人気動画が拡散する理由/WIRED JAPANESE EDITION/2011.08.08 )
また、次のような理由で、ツイートなどを通じて "友人などに伝える" ことによって伝播(でんぱ)が活発化されるのだと解説される。
―――― <バーガー准教授は最近の研究(PDF)において、このような興奮状態にある人は、情報を共有しようとする傾向が格段に高まることを明らかにしている。例えば、被験者に(興奮の徴候を直接的に引き起こすため)その場で60秒間のジョギングをさせたところ、ニュース記事に関する電子メールを友人に送った被験者の数は、倍以上に増加した。......「人々が覚醒的な興奮状態にあるとき、情報を他者に伝えようとする傾向も強まる」とバーガー准教授は述べる。>( 同上記事より )
とにかく「われわれは、事実を共有したいというより、感情を共有したいのだ。」そうである。
―――― <バーガー准教授は過去の研究において、人々に情報共有されることが多かった『The New York Times』の記事はどんな内容だったのかということを分析している。 ............ 実際に人気が高かったのは、「畏敬の念」や「怒り」など、特に覚醒的興奮度の高い感情を喚起する記事であることが明らかになった(日本語版記事)。われわれは、事実を共有したいというより、感情を共有したいのだ。
こうした欲求はなぜ存在するのだろうか。以前からの社会心理学研究によって、人々はしばしば、強い感情を他者と共有することで、結びつきや連帯感を深めるということが明らかになっている。>
( 同上記事より )
そして、現時点のインターネットでの傾向、「オンラインの世界が、人を興奮させる類のコンテンツに偏っている」という理由については、われわれは自分の感情を直接的に表現しにくいため、他者の短い動画や記事を<代理>的に使おうとすること、そこに由来するのではないか、と。
―――― <インターネットは、この古代からある社会的本能を反映している。違いは、オンラインではわれわれは自分の感情を直接的に表現できないということだ(ツイートのなかで本当の喜びなどを表現するのは簡単なことではない)。われわれは代わりに、他者の画像や言葉を「プロキシ」(代理)として使い、短い動画や記事を通じて興奮を広めざるをえない。「実際に顔を合わせていないときに強い感情を共有することは難しい。ウェブ上でコンテンツを共有することで、結びつきに似たものが得られる」とバーガー准教授は説明する。オンラインの世界が、人を興奮させる類のコンテンツに偏っているのはそうした理由からだ。無限の情報ライブラリなどと称されることも多いインターネットだが、オンラインで大きな人気を集めるコンテンツはたいてい、さほど実用的な情報を含んでいない。
感情を共有したいという深い欲求があるので、おかしな赤ん坊の動画や、熱狂的な政治的発言や、ジャスティン・ビーバー[YouTubeから有名になった17歳の歌手]の歌などへの尽きない需要があるのだ。こうしたコンテンツの内容は表面的で取るに足らないものに見えるかもしれないが、そこがポイントではない。これらは、目的を果たすための手段にすぎない。これらはほかの誰かに、自分たちは同じ感情を(少なくともほんの束の間は)共有していると伝えるための効果的な手段なのだ。>
( 同上記事より )
こうした解説を読んでいると、"スマートデバイス & ソーシャルメディア!" で特徴づけられる "スマートネイティブ" と呼ばれる新世代の内面構造が、なおのこと照らし出されてくるようにも思えた...... (2011.08.27)
コメントする