"その意図" は了解できる。しかし、物事には "蛇足" (※)ということもあり得る。
(※) (蛇の絵を描く競争で、早く描きあげた者が足まで書きそえて負けになったという故事から)あっても益のない余計な物事。あっても無駄になるもの。[広辞苑]
とかく現時点での技術環境では、やろうとすれば何でもできてしまうご時世である。それも、現代人たちが弱体化・喪失した能力を支援したり補足したりする対処法については枚挙にいとまがない。そしてそれらの中には、老婆心と言うよりもお節介に過ぎて、思わず "ノー、サンキュウ!" と言いたいものも少なくない。
"電子書籍" に<効果音や音楽を流す>という対処法、それは、現代人たちが弱体化・喪失させた想像力を支援するという意図を持っているのかもしれない。
だが、"ちょっと違うかなぁ......" という "?" 以外ではないと感じる。
むしろ、下記記事の筆者が言う<本の素晴らしさは、そのすべての世界が、読者の想像と同じだけリアルになるところだ。安っぽい効果音を追加しても、読書体験は豊かにならない。すべてを「つくりもの」にしてしまうだけなのだ。>に共感を覚える......。
―――― <効果音や音楽を流す電子書籍シリーズ(動画)
読み手の読む速度に合わせて、その場面に合った効果音や音楽を流すという電子書籍シリーズが登場した。
読み手の読む速度に合わせて、その場面に合った効果音や音楽を流すという電子書籍シリーズ『BookTrack』が登場した。『iPhone』と『iPad』で利用可能で(『Android』版は近日中に登場予定)、背景音楽や効果音、楽譜などが付属している。読者が読んでいる場所をソフトウェアが追跡し(目障りな小さなウィジェットが、常に下に向かって余白を移動している)、適切な場所の効果音を流すのだ。ドラマチックなシーンでは、恐怖した主人公の動悸や、ヘリコプターの音なども聞こえるだろう。
現在提供されている本はまだ少なく、[著作権の切れた本の電子化データベース]『プロジェクト・グーテンベルク』にあるような本が多く、無料のものがほとんどだ。有料タイトル『The Power of Six』[ヤングアダルト向けのファンタジー小説]は12ドルで、購入前にビデオを見ることができる。
筆者は、iPad用の『シャーロック・ホームズの冒険:まだらの紐』(無料版)をダウンロードして、いろいろ試してみた。まずやるべきことは、進捗インジケーターを切ることだった。そうでないと、一定の速度で読むようにと、常に急かされているように感じる。
このホームズの小説は、雰囲気にぴったりの、映画のようなBGMと時計のカチカチという音で始まる。その後に聞こえてくるのは、暖炉の火が燃えるパチパチという音や、紙がくしゃくしゃと丸められる音(iPadのひどいスピーカーからでは区別が難しいのでヘッドフォンをおすすめする)。続いてページをめくると、引き出しの鍵が開けられ、本が引き出される音が聞こえてきた。
しかし、筆者としてはこれは耳障りだ。本の素晴らしさは、そのすべての世界が、読者の想像と同じだけリアルになるところだ。安っぽい効果音を追加しても、読書体験は豊かにならない。すべてを「つくりもの」にしてしまうだけなのだ。
TEXT BY Charlie Sorrel TRANSLATION BY ガリレオ WIRED NEWS 原文(English)>( 効果音や音楽を流す電子書籍シリーズ(動画)/WIRED JAPANESE EDITION/2011.08.25 )
"電子書籍" が "紙の書籍" より "リスキー(?)" な点があるとするならば、ありとあらゆる "蛇足" めいたことができてしまう、そんな "誘惑" 環境に取り囲まれていることなのかもしれない...... (2011.08.28)
コメントする