先日、とあるソフト会社からぶしつけなメールをもらった。「HP制作に関する依頼が多過ぎて困っております。パートナーとしてご協力いただけませんか」という主旨のメールであった。もちろん、お断りさせてもらった。
確かに、当方では "HP制作" も請け負ってはいる。しかし、エンド・ユーザーからのダイレクトなかたちのものしかタッチしていない。信頼関係に基づいて、リーズナブルな価格で仕事をしようとすれば、"中間業者" が入ることを極力避けるべきだと考えるからだ。"もちろん" と書いた理由の第一はそれであった。
まだほかにも理由はある。"HP制作" という案件については、需要が多くなっているかどうかは別にして、昨今益々、発注側の期待が大きくなっている実情のことである。ご時世がら、インターネット営業広告に傾くのは十分に了解できるところである。
ところが、それを了解していない一翼もまたある。何あろう、"ソフト開発業者側" なのだ。それも、ろくに "HP制作" の業務経験があるわけではない業者が、"HP制作" に高を括って片手間で、あるいは "外注化" で凌ごうというとんでもない業者たちのことである。
全体的に、ソフト開発需要が低迷している現状にあって、ソフト開発会社が "火の車" となりがちなことはよく分かる。しかし、"でもしか" 先生ではあるまいに、"HP制作でも" やるか、はとんでもない了見違いであろう。そんな業者は "要注意" 以外ではない。冒頭のメールを受け取った時も、またか! と思ったわけなのである。
ところで、この辺の問題状況での"要注意" は発注側にとってだけではなく、受注側、つまり "パートナー" などという綺麗ごとで誘われる業者、あるいはフリーランサーも、今まで以上に "警戒" しなければならないようである。
ソフト開発業務に長く関与してくると様々な人間模様、トラブル模様を眼にすることになる。"大が小を喰い物にする" 光景は見飽きるほど見てきたが、景気低迷時には、"小が小を喰い物にする" という決して見たくない光景にも遭遇する。
業界内には、しがないソフト・フリーランサーが、"火の車" と化した小規模ソフト会社によって口車に乗せられ、何カ月分もの支払いが受けられなくなって放置されたり、さらに酷い場合は、債務作業の肩代わりを強いられたりして窮地に追い込まれるというケースまで伝え聞いたこともあった。
どうも、建築業界ではザラにあることのようだが、ソフト業界は非常によく似ていたりするのだ。そう言えば、作業量を "人工(にんく)" でカウントするという類似点も要注意である。
技術スキルを売りとする技術者たちは、ややもするとビジネス上のグレーゾーンへの詰めが甘かったりする弱点を抱えていたりする。そこを見据えられたりすると、手酷い仕打ちを被ることにもなりかねない。そして、多分、今のような景気低迷期には、そうした悲劇が起こりやすいのだろう。
下記の記事は、"HP制作" そのものではなく、またユーザー側の被害という点でやや事情は異なる。が、多分、この流れの周辺には、しがないソフト・フリーランサーたちの "泣き" も数多く潜んでいるのではないかと想像したのだった。
―――― <HP制作ソフトリース契約紛争多発 法の隙つく悪質営業
事業用ホームページ(HP)制作ソフトのリース契約をめぐるトラブルが全国で後を絶たない。HPの制作、運営を請け負うことを売り文句に営業する業者が、ほとんどHPを制作しなかったり倒産したりしているのに、リース会社からの料金請求が続くケースが目立つ。県内では、損害賠償を求めて提訴する事態に発展している。社団法人リース事業協会(東京都、253社)によると、自営業者などから2007~10年度に寄せられた小口リースの苦情のうち、HP制作ソフトに関する内容だけが08年度以降、毎年増加。08年度は全体の約11%の252件だったが、10年度は約23%の647件になった。
HP制作ソフトのリース契約はあくまでも、リース会社が事業所にソフトを貸し出せば履行されたことになる。HPの制作、運営を請け負う業者がサービスを行わなくても、事業者は契約を打ち切ることはできないという。事業は対象外のクーリングオフも認められない。>
( HP制作ソフトリース契約紛争多発 法の隙つく悪質営業/【宮崎日日新聞】/2011.09.11 )
昨今、迷惑メールにも、やたらに "儲け話" や "得をする話" に類する "えげつない内容" のものが増えている。「渡る世間は "騙し合い" 」と化したかに見える今のこのご時世、ここをを健やかに渡るにはどうすればいいものやら...... (2011.09.14)
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