Twitter や Facebook などの "ソーシャルメディア" は、情報をすばやく、効果的に拡散させる点で、これまでのメディアとは比較にならない "パワー" を発揮する。まさに、 "レバレッジ(テコ)" の効いた "パワー" と言うべきか。
市場経済に向かって、企業各社はその "パワー" を何とかして "手懐けたい" と願っている実情は昨日も書いた。が、今、この "パワー" が存分に発揮されているのが、「アラブの春」に触発されて始まった運動、"ウォール街占拠" をスローガンとした "ソーシャル・ムーブメント(社会運動)" であろう。
社会的・経済的な "格差是正" を訴えつつ、富を占有する人口 "1%" に対して「われわれは99%」の市民であると叫ぶ、そうした声が "ソーシャルメディア" の時空に響き渡っているという......。
ただ、この "運動" の行方については、戸惑いの声がないでもない。
<彼らの目標については、一致した意見があるとは言えない。マスメディアは、彼らの運動についてなかなか解釈できないでいる。アラブの春においては、数十年続いた独裁政権を倒すという目標が明確だった。しかし米国では、企業による貪欲をどうやって停止させればいいのだろうか。>(下記引用記事より)
しかし、"短兵急" に着地点を急ぐ発想自体が行き詰まりをもたらしているとも思える。<マスメディアは、彼らの運動についてなかなか解釈できないでいる。>という観測も実はその発想によるものなのかもしれない。
誰もが現状を "当然視" して、そして "諦めと絶望" に身を託している時、 "抗議" の思いを "ソーシャルメディア" に響かせてみるとどうなるのか......、そんな "社会的実験!" が進行中なのだと思える。
唐突な話となるが、亡き "ジョブズ氏" は、かつて "iPhone" を初リリースした際、今日の "スマホ・フィーバー" を想定していたであろうか? きっと、"止むに止まれぬ創造意欲" だけが彼を支配していたに違いなかった、と想像する。
彼は、そうした "創造意欲" を立脚点としながら、刻一刻と変貌してゆく環境と直面しつつ、構想自体を柔軟に変容させ適応させていった......。そしてその結果、"前人未踏" の業績へと導かれていったと考えるのが自然であろう。
上記の "運動" もまた、同じように考えることが妥当なのかもしれない。"賢い" はずのマスメディア自体が<なかなか解釈できないでいる>のは、意外と正解なのかもしれない......。今は、この "運動" の着地点は誰にも予見できない......。
以下に、こうした事情の解説を含む「ウォール街占拠」運動の最新動向を扱った記事を引用する。
―――― <「ウォール街占拠」と「革命2.0」(動画)ソーシャルメディアを活用し「革命2.0」と呼ばれたエジプトやチュニジアの「アラブの春」が、ウォール街占拠運動で再現されつつある。
その数は、今や数千人。大半は大学生などの若者だ。ビジネス街の主だった共有空間は占拠された。カメラにプラカードを掲げ、ビラを配り、演説をしながら、あるいは聴きながら、彼らは行進する。何区画にもわたって、鳴り物とシュプレヒコール騒音が絶え間なく響いている。テント街と化したこの地域には、青い防水シートがあちらこちらに広がり、その下にはマットレスや寝袋のほか、抗議者たちのわずかばかりの所持品が置かれている。不穏分子的な者たちも入ってきており、警察は催涙スプレーや警棒を使っているし、数百人が逮捕された。
政治家や官僚も、関心を持たざるを得なくなってきた。世界全体が見守っている。今の状況がいつ、そしてどのように終わるのかは、誰にもわからない。
ここは、今年初めに「アラブの春」(日本語版記事)の発火点になったカイロでもチュニスでもないし、数週間で(半ば)平和的に独裁者を打ち倒したチュニジアやエジプトでもない。ここは、米国の金融の中心部である、マンハッタンのリバティ・スクエアだ。彼らの運動は「ウォール街を占拠せよ」(Occupy Wall Street:OWS)と呼ばれ、掲げるメッセージは「われわれは99%」だ。具体的な要求は不明確であるにせよ。
最初は小さな動きだったが、3週間の間に他の都市や海外にも広がった。「米連邦準備制度を占拠せよ」行動を組織しようという声もあがっている。
中東で起こった社会変革運動との類似性は多い。多くの人は、抗議行動に参加しようという呼びかけをソーシャルメディア経由で得ており、運動組織者たちもソーシャルメディアを有効に使おうとしている。「ウォール街を占拠せよ」のサイトにはこう書かれている。「われわれは目標を達成するために"アラブの春"でとられた戦術を採用している。また、すべての参加者の安全が最大限に守られるように非暴力を推奨している」(アラブの春という言葉には、もちろん、Wikipediaへのリンクがはられている。)
アラブの春と同じように、カリスマ的なリーダーはおらず、あるのはメディア向けの短い言葉と、一般の人たちの複数の声だ。[発端は、2011年7月、カナダの雑誌『Adbusters』の創始者カレ・ラースンが、金融機関や政界に対して抗議の意志を表明するために、ウォール街を数カ月占拠しようというデモ活動を呼びかけ、20,000人を目標として賛同者を募り始めたこと]
エリック・ギブズは、小さなテーブルにところ狭しと置かれた4台のコンピューターの前に立つ。すべてにウェブカメラが搭載してあり、4台のうち3台では『Livestream』と『Twitter』のページが開かれている。残りの1台は、デモ行進の際の演説を書くために使われている。防水シートの下からは、このDIYの技術センターに電力を供給する発電機の音が聞こえてくる。警察に止められるため、見えないようにしてある。
ソーシャルメディア戦略の体現とでも呼ぶべきマシンたちが立てる音によって、ギブズ氏の声は聞き取りにくい。同氏はコンピューターに向かって大声をあげながら、「ウォール街を占拠せよ」サイトが運営しているLivestreamのチャットルームで質問に答えている。回答のペースは速く、情熱的だ。
デモ行進を行うときは、コンピューターや通信装置が持ち込まれ、世界の人々が現場を見られるようにしている。「最初は専用ウェブカメラがなかったから、コンピューターを持ち上げて人々を撮影していた。変な感じだったよ」とギブズ氏は笑う。
Twitterと『Facebook』は、より多くの情報をすばやく、また個人を通した形で送信するメディアとなっている。OWS運動をテーマとしたTwitterの投稿やFacebookページが全国的に数多く作成され、それぞれのグループが、より地域的な賛同者とのつながりを作って行っている。
「ソーシャルメディアは、情報をすばやく拡散しやすく、効果的だ」と、マーク・ブレイは説明した(彼は「プレス向け」と書かれた段ボール紙のサインを持ったボランティアだった)。「人々が苦労せずに情報が得られる。特定のウェブサイトに行かなくても、Facebookをやっていれば偶然に知ることができる」。
彼らが手本にしようとしているアラブでの社会変革と同じように、ソーシャルメディア上で抗議や逮捕を知ることで、たくさんの人が、秘められていた怒りの感情を呼び起こされている。彼らは同じような信条を持つほかの人の姿を目にするまで、抗議など考えもしなかった人々だ。
彼らの目標については、一致した意見があるとは言えない。マスメディアは、彼らの運動についてなかなか解釈できないでいる。アラブの春においては、数十年続いた独裁政権を倒すという目標が明確だった。しかし米国では、企業による貪欲をどうやって停止させればいいのだろうか。
その結果は明確ではないにせよ、フラストレーションの臨界点は明白に存在しているように見える。
TEXT BY Beth CarterWIRED NEWS 原文(English) >
TRANSLATION BY ガリレオ -緒方 亮/合原弘子
「ソーシャルメディアは "衆愚" を助長する......」と主張する者もいないではないが、果たしてそうであろうか。マイケル・サンデル教授きどりで言うわけではないが、個人間の関係性を遮断する壁、"孤立の壁" こそが誤解と蒙昧を生み、ひいては衆愚をも形成してはばからないのではなかろうか。
その点、"ソーシャルメディア" は、この "壁" を "低い垣根" とするところからスタートしている。しかも、多くの "ソーシャルメディア" にはシビァな "相互チェック機能" が働いているため、マスメディアほどの "one way" に陥ることがないのも評価できる点であろう...... (2011.10.14)
―― P.S. 【 "ウォール街デモ" 関連最新ニュース 】 ◆参照 < NY市、活動拠点の公園を清掃へ 「ウォール街占拠」デモ/【共同通信】/2011.10.12 >
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