メディアには、ジョブズ氏の死を悼む記事が溢れている。"新しい発想" の天才を悼むものから、今さらのようにビジネス戦術に余念がないキャリアの動きまでこもごもの様相だ。
いつの時代も、天才亡き後に展開されるのは、凡人や俗物たちの "後の祭り" と相場が決まっている......。
恐らく、真に天才の遺志を継いでゆく者は、人知れず水面下で何食わぬ顔で黙々と作業を続けているのではなかろうか。
とうとう、『iPhone 4S』は、天才の "遺作(?)" となってしまったわけだが、今は静かにこの "遺作" をリアルに再認識すべき時なのかもしれない......。
―――― <『iPhone 4S』:知っておくべきポイントApple社が発表した『iPhone 4S』。デュアルコア・プロセッサーや8メガピクセル・カメラ等が売りだが、最もクールな機能は個人アシスタントの『Siri』といえるだろう。
米Apple社は10月4日(米国時間)、『iPhone 4』の改良バージョンである『iPhone 4S』を発表した。ハードウェア・デザインは若干しか変わっていないが、性能は非常に向上した。7日から予約受付が開始され、14日に発売されるこの新しいiPhoneについて、重要な点をまとめてみた。
プロセッサー
iPhone 4はシングルコアの『A4』プロセッサーだったが、iPhone 4Sには、デュアルコアの『A5』プロセッサーが搭載される(A5はすでに『iPad 2』に使われている。Apple社が設計し、製造は韓国Samsung社)。つまり、画像処理が向上し(これまでのiPhoneよりも最大で7倍速いという)、『iOS』のパフォーマンスが速くなり、ゲーム操作が大幅に向上することになる。
イベントでは、iOS専用ゲーム『Inifinity Blade II』のデモが行われた。音声制御のアシスタント
4Sには、自然言語を音声で理解するアシスタント『Siri』のベータバージョンが搭載された。これは今回のイベントで、最もクールな機能といえるだろう。Siriは、映画『2001年』に登場するコンピューター『HAL 9000』のようなものだ。パリの天気を尋ねれば、彼女はちゃんと答えてくれる(Siriは女性の声だ)。近くのいいレストランを尋ねれば、ユーザー・レビューサイト『Yelp』のレーティングと、現在のGPSから推薦してくれる。外国為替や株式市場も同様だし、ポケットの中にiPhoneを入れておいてメールだけ読んでもらうことも可能だ。
ライブ・デモでは、「今日の天気はどう?」と聞くと、「本日の天気予報です」と言ってリストが表示された。「レインコートはいるかな?」と聞くと、「今日は雨になりそうです」と答えた。「パリはいま何時?」と聞くと、「パリは現在午後8時16分です」。「明日午前6時に起こしてくれる?」と言うと、「わかりました。6時に設定します」
「パロアルトのいいギリシア料理の店を探してくれ」というと、「ギリシア料理は14軒見つけました。そのうち5つがパロアルトにあります。レーティングに従って整理します」
道案内もできる。「NASDAQ指数は現在下落中です」等の返答もできる。メールを読み上げ、返事をするかどうか尋ねたり、「もう一度読むか」と尋ねたりする。カレンダーを見て金曜日に空き時間があるかどうかを確認できる。フィル・シラー副社長とのミーティングを金曜日に設定させることもできる。「仕事が終わったら妻に電話することを思い出させる」ことも可能だ。「クリスマスまであと何日」等もカウントしてくれる。
「Wikipediaでニール・アームストロングについて調べてくれ」も可能だ。人工知能型の検索システム『Wolfram Alpha』とも連動している。『iCloud』にある曲を再生してくれる。
イベントでは、「Siriとはつまり何なんだい?」と尋ねられたSiriが、「私は慎ましい個人アシスタントです」と答え、会場は笑いと喝采に包まれた。
より高速な「世界仕様」
4Sは米AT&T社の『HSPA+』ネットワークを利用するため、ダウンロード速度は最大14.4Mbps、アップロード速度は最大5.8Mbpsとなる(Apple社の発表による)。Apple社は「『4G』の速度」と述べているが、間違えないよう注意が必要だ。HSPA+は正確には4Gではない(HSPA+は、『LTE』でも『Wi-Max』でもない)。Apple社は、既存の4Gネットワークが未熟であり、さらに、4Gアンテナによるバッテリーの消耗は大きすぎると考えたのだと思われる。
また、発表された速度はAT&T社のHSPA+ネットワーク上の数字であり、米Sprint社やVerizon社のネットワークでどうなるかはわからない。
4Sは『GSM』と『CDMA』も利用できるようになるので、世界どこでも利用できるようになる。各国を移動するビジネスマンにはより便利になるだろう。
キャリア
iPhoneは当初はAT&T社でしか使えなかったが、同社はデータを大量に使う顧客にうまく対処できず、顧客の不満は大きかった。今年2月にVerizon社ネットワークでも使えるようになり、さらに今回、Sprint社でも使えるようになった。Apple社は今後、複数キャリアで普及してきた『Android』と競合することになる。カメラ
iPhone 4Sには解像度3,264 × 2,448の8メガピクセル・カメラが搭載される。iPhone 4の5メガピクセル・カメラと比べると、画素数が60%増加している。この増加分の画素が無駄にならないよう、裏面照射(BSI)型センサーでさらに多くの光を集めて撮影する。iPhone 4Sのカメラは、Apple社が設計した5つのレンズで構成され(iPhone 4は4つ)、画像の鮮明度が30%増加した。f/2.4の開口部でより多くの光を取り入れ、ハイブリッドIRフィルターによって色の正確性と均一性が向上している。
1080pのHD動画も撮影でき、手ぶれも自動補正される。暗い場所では時間ノイズ除去機能(Temporal noise reduction)が役に立つはずだ。
TEXT BY Mike IsaacWIRED NEWS 原文(English) >( 『iPhone 4S』:知っておくべきポイント/WIRED JAPAN -CULTURE/2011.10.05 )
TRANSLATION BY ガリレオ -平井眞弓
ハードウェアの性能に関しては、時の経過が自ずから加勢する時代であろう。
見るべきポイントは、やはり<最もクールな機能は個人アシスタントの『Siri』>となるのではないかと......。きっと、スマホはこのジャンルから新たな "脱皮" を遂げて行くものと思われる...... (2011.10.08)
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