ジョブズ氏が "天才" であったことは誰も疑わない。"斬新な発想" の天才であり、"サプライズ" に満ちたプロダクツを市場に提起することができた天才であったに違いない。 彼のその並はずれた才によって、大袈裟ではなく、われわれはこの時代に居合わせたことに幸福感を覚えたはずである。
したがって、その歓びの対価については "惜しみなく" 財布の底をはたきもする。優れた製品が相応の価格で販売されることに誰も文句は言わないはずであろう。
また、製品とは、"構成部品" の総和以上の価値が見込まれるものであり、まして "デザイン" 面でも秀逸な製品はその点が大きな付加価値となるのかもしれない。
しかし、世の "調査会社" は、"知りたがり屋" の人々の意向にも沿うべく、"推定部品原価" なるものを算出したりもする。
だからと言って、その数字が語るものは、高いの、儲け過ぎだのという議論よりも、ただただジョブズ氏が、経営的にも "天才" であったことを上書きするだけのような気がする。
但し、シニカルに言えば、競合他社群による "二番煎じ" 製品は、恐らくその "推定部品原価" に近接してゆくのであろう。そして、やがては "先駆者" 製品の価格低下をも引き起こしてゆくのかもしれない......
―――― <「iPhone 4S」32GB版の推定原価は203ドル
電子機器・部品の市場に詳しいカナダの調査会社UBM TechInsightsは現地時間2011年10月5日、米Appleの新型スマートフォン「iPhone 4S」の原価分析結果を発表した。それによると、iPhone 4Sの32Gバイトモデルの推定部品原価は203ドルで、AppleはiPhoneの従来機と同様に高い利益率を確保しているという。このうち「A5」プロセッサの部品原価は26ドル、「Retina」ディスプレイは31ドルと推定している。
iPhone 4Sは、「iPad 2」にも搭載されているA5プロセッサを採用し、バッテリー性能を向上したほか、GSMとCDMAの両通信方式に対応している。しかしUBM TechInsightsによると、iPhone 4Sは前モデルのiPhone 4と比較し「緩やかな改善」にとどまる(関連記事:「iPhone 4S」は描画速度が「4」の7倍に、「iPod touch」と「nano」にも新モデル)。
同社Technical Intelligence部門副社長のDavid Carey氏は、「ハードウエア技術の側面で見ると、iPhone 4Sには特に目覚ましい進歩があるわけではなく、ちょうどiPhone 3Gが同3GSへと改良されたのと同程度の進化の度合いだ」と指摘。Appleは同様のアプローチで次の端末「iPhone 5」の準備を進めていると同氏は推測している。「Appleは今後もこうしたペースでハードウエアの改良を進めながら、より高機能の音声認識や複雑な画像処理などでソフトウエアを刷新し、端末の使い勝手を良くしていく」(同氏)という。
なおiPhone 4S(32Gバイトモデル)の米国での販売価格は2年間の通信契約を結んだ場合で299ドルだが、米メディア(ZDNet)の情報によると、通信キャリアによる割引がなかった場合はこれに450ドルが上乗せになり、実際の価格は749ドルになる。 >
( 「iPhone 4S」32GB版の推定原価は203ドル/IT pro/2011.10.07 )
振り返れば、過去現在のPC価格は、激しい国際競争によって限りなく "推定部品原価" に近接し、場合によってはそのコスト水準割れにまで突き進んでいる......。
ジョブズ氏の Apple は、そうした "消耗戦" を回避できるアプローチを率先垂範したということなのであり、だからこそ現代IT業界での天才と呼ばれるのであろう。
しかし、すでに、スマホにしても多機能タブレットにしても、Android なり Amazon なりが、"低価格競争" の土俵へと Apple を誘い込んでいるのも事実だ。
いつか来た道である "消耗戦" を避けるべく、大胆かつ斬新な "発想" を繰り広げられる "Next ジョブズ" 氏は、今どこで何をしているのであろうか...... (2011.10.10)
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