匿名性と実名性:"ネット上の人格"再考/"マネタイズされる実名"と SNS の変質?! ......

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 昨日は、"実名制 SNS" でのセキュリティ問題の危うさについて書いた。
 ◆参照 実名制SNSでのセキュリティ問題ジレンマ?/積極的なつながり志向と攻撃の回避と( 当誌 2011.11.22 )

 確かに、こうした事象は "実名制 SNS" に身を委ねる以上十分に視野に入れておかなければならない問題に違いなかろう。
 しかし、"実名制 SNS" といった場合今一歩踏み込んで考える時、果たして "実名制" は "SNS・ソーシャルメディア" と親和性を持つのかどうかが気になってきたりもする。
 とかく、"実名制" こそが "正攻法" であるかのような "思い込み(先入観)" を抱きがちではある。
 そこには、"匿名" にて "誹謗・中傷" 三昧に及ぶ一翼の印象が、"匿名性" というものに陰湿なイメージを付着させる遠因があるのかもしれない。
 しかし、"匿名性" =陰湿 or 悪行と決めつけるのは能天気過ぎる判断なのかもしれない。世の中には、"匿名" にて寄付その他の "善行" をする方々も少なくない。元々、"名を隠した善行" こそが美徳だとする考え方が古来より伝わってもいる。

 一般論はさておくとして、ネット上での "匿名性と実名性" にテーマを絞ったとしても、"コミュニティ" 志向で始まったインターネットについては、必ずしも "実名性" が "正攻法" であるとは言い切れない脈絡がある。
 "実名性" が、"責任性" に着目する余り、過剰な "自己責任論" や "利己的姿勢" に帰着することもあるし、逆に、"無署名" や "匿名" での "利他的姿勢" の営為が "オープンシステム" (c.f. Linux, Wikipedia etc.) を下支えすることもあるわけだ。
 いや、初期インターネットの "正統嫡子" とも言えそうな "SNS・ソーシャルメディア" では、種々の意味合いでの "コミュニティ" 志向から、"匿名性" が持つポジティブな可能性を引き出そうとするユーザー間での期待・願望は強い。

 ところで、ネット上での匿名性と実名性については、以前に次のような記事を書いたことがある。
 ◆参照 匿名性と実名性:"ネット上の人格"/問題の核心はアイデンティティとは何かだ!( 当誌 2011.10.2 )

 その記事では、以下のサイト記事を引用しつつレビューした。

―――― 匿名性と実名性:「ネット上の人格」を考える
ネットにおける個人は現在、「マネタイズされる実名」か「カオス的な匿名」かに二極化している。しかし本来、人格はより多面的なものだ。匿名掲示板『4chan』を創設したクリストファー・プールの主張を紹介。......>
匿名性と実名性:「ネット上の人格」を考える/WIRED JAPAN -CULTURE- /2011.10.25

 その際には、<クリストファー・プールの主張>に共感しつつ、匿名性と実名性という問題を、"問題の核心はアイデンティティとは何かだ!" として、"ひょっとしたら "多面的!な人格" への傾向というものは、時代環境のせいだと言うよりもいわば人間本来の特質" ではないかとさえ息巻いた......。
 その点に変わりはない。が、今回は、"SNS・ソーシャルメディア" との関係において匿名性と実名性について再度書きたくなったわけである。
 なお、それを書くにあたって、"起点" としたい言葉があった。上記<WIRED JAPAN -CULTURE->記事中の「マネタイズされる実名」という言葉なのである。今一つ、何かが見えない気がして気になっていたからであった。

 実は、この記事を読み返しているうちに、この記事における "この言葉" には "とある背景的事実" が埋め込まれていたのに気づくに至ったのである。
 結論から言うと、クーグルによる "ソーシャルメディア" 戦略 "Google+" での "実名主義" 宣言がそれであり、果たしてそれは妥当な "SNS・ソーシャルメディア" であるのだろうか? という筆者の疑問のようにも読めることを......。
 なお、"Google+" については以前に当ブログで以下のエントリーで書いた。
 ◆参照 米Google"企業向け SNS"機能を矢継ぎ早に増強予定!会員数でなくデータ量狙い!( 当誌 2011.11.18 )

 そこで、前記の「マネタイズされる実名」という部分を、同記事の
<WIRED NEWS 原文(English)>(You Are Not Your Name and Photo: A Call to Re-Imagine Identity/WIRED/2011.10.20)で照らし合わせてみることにした。
 すると、該当する直接の言葉は見当たらなかった(リード文として編集されたのであろう)が、以下の部分がそれだと先ずは分かった。

People like Google's Eric Schmidt began to talk about "identity services" instead of social networks. Identity became synonymous with fixed, verified, monetizable personhood.
 <WIRED JAPAN>での日本語訳の部分は以下の通りだ。
アイデンティティーという言葉は、最近は、固定的で、認証され、マネタイズが可能な個人と同義になった。Google社のエリック・シュミット元CEOのような人々は、ソーシャル・ネットワークではなく、「アイデンティティ・サービス」について語り始めている。

 さらに、気づいたのは、この<マネタイズが可能な個人>という部分にはリンクが施されていたこと。これを辿ってみると以下のページに至った。
◆参照 Google+ Identity Crisis: What's at Stake With Real Names and Privacy/WIRED/2011.07.26
 「Google+ のアイデンティティ・クライシス:実名やプライバシーの何が危ういのか」とでも訳せそうか......。

 なお、このページから気になる部分を引用し、取りあえずの訳を与えてみる。
Why does Google+ want users'real names? Dave Winer takes a realist view:
There's a very simple business reason why Google cares if they have your real name. It means it's possible to cross-relate your account with your buying behavior with their partners, who might be banks, retailers, supermarkets, hospitals, airlines. To connect with your use of cell phones that might be running their mobile operating system. To provide identity in a commerce-ready way. And to give them information about what you do on the Internet, without obfuscation of pseudonyms.
Simply put, a real name is worth more than a fake one.
This is why I've argued that Google+ is not only a social network: Social media here is a means to establishing identity. This is a tightly-related -- but not an identical -- business.


なぜGoogle+ はユーザの実名を望むのですか? デイブ・ウィーナーは現実主義者としての見方を示す:
 グーグルがユーザーの実名を持ちたがっているとしたら、それは単純にビジネス上の理由からだ。ユーザーのアカウントをグーグルのパートナー(銀行、小売店、スーパーマーケット、病院、航空会社など)からの購買行動と照合させることが可能になるからだ。グーグルのモバイル OS を使用している携帯電話の使用状況と照合させ、商売にすぐ使える形でユーザーの ID を提供し、そしてユーザーがインターネットで何をしているのかという(偽名で曇らされることのない)情報を彼らに提供するためなのだ。
 簡単にいえば、実名の方が偽名より価値があるというわけだ。
 この理由で、私は、Google+ が単にソーシャルネットワークではないと主張したわけだ:ここでのソーシャルメディアは、アイデンティティ確立への手段なのである。
 これはしっかりと関係付けられた、しかしまったく同一ではないが、ビジネスなのである。


 こうした文脈からは、「マネタイズされる実名」=マネタイズが可能な個人と言う言葉の背景や内実が浮かび上がってくるようである。
 ということで、何が言いたいのかというと、"実名性(実名制)" であることが条件付けられたグーグルの "Google+" という "ソーシャルメディア" は、"コミュニティ" 的性格が基本と見なされてきたそうしたメディアではなくて、極めて "(グーグル的)ビジネス" の性格が強いメディアだということ。これが一つである。
 そして、さらに言えそうな点は、他の "実名性(実名制)" の "ソーシャルメディア"( Facebook、LinkedIn )においてもまた、蓄積され続けるユーザーの "ソーシャルグラフ" が、ビジネスとして "有効活用(?)" されないなぞと、一体誰が言えようか......、と言う点なのである。
 ユーザー個人間でのヒューマンな "つながり" が期待されている "ソーシャルメディア" という存在は、それとは別の視点によって、企業のマーケティング戦略のターゲットとなる一方、"実名性(実名制)" という環境設定の構造から言って、"丸ごとビジネス化!" されてゆく傾斜が強まっていくのであろうか......。
 こうした懸念によって、「マネタイズされる実名」という言葉に益々着目すると同時に、"ソーシャルメディア" というものは、むしろこれと対峙する "匿名性(匿名制)" との間にこそ親和性があるのではないかと意を強めさせられたのであった...... (2011.11.23)













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