"奨学金" の返済では結構苦労した覚えがあるので、下記記事の "学資ローン" の返済で喘ぐ "OWS 運動" 参加の若者の苦悩は良く理解できる。
自分の場合は、返済時期が景気低迷前であったからまだしも、この景気 "どん底" 時代にあって高額の借金返済を背負う立場の苦痛はひとしおのはずであろう。
その苦境が、普通では考えにくい<「僕には8万5000ドル(約670万円)の借金がある」>と書いたプラカードを掲げる行動につながっているのであろう。
"OWS 運動" への関心のきっかけは、これまでにも何度も書いているように、"ソーシャルメディア" が駆使されているという面の持つ意味が大きい。新しいコミュニケーション手段(メディア)としての"ソーシャルメディア、SNS" が、社会の変革にどうコミットしていくのか/いけるのか、というテーマは、関心の対象とならないわけがない。
まして、まるで "手詰まり状態" にあるとしか見えない、この日本および世界各国の社会経済の現状を直視するなら、なおのことであろう。
ところで、こうした現状の "手詰まり社会経済" に対して、人はよく "景気さえ良ければねぇ......" という感想を漏らすものだ。もちろん重要な視点ではあろう。
しかし、過去のように、景気回復がその種の経済対策常套手段によって実現可能であるならまだしも、事態はそう簡単な局面ではなくなりつつあるから深刻なのだろう。
ふと、「卵が先か、鶏が先か」という言葉を思い起こす......。"景気回復"(鶏?)があって、"社会問題解決"(卵?)なのか、いやその逆順なのかと......。
メジャーな見解なのだろうと思えるが、"鶏" あっての "卵" だという従来どおりの "景気回復至上主義"、それは今なお有効な選択肢として残されているのであろうか? その点に少なからずの疑問を持ってしまうのだ。
たとえば、冒頭の "学資ローン" 返済問題にしてもそう思う。事は重要な "次世代経済" に関わる問題であろう。また、昨日書いた "難婚" 問題( ソーシャルメディアが"社会問題"へとコンタクトしてゆく道筋は!?/ex."難婚"問題 )にしても同様であろう。
端的には "環境問題" が目につくわけで、その他いろいろと例を挙げれば切りがないが、要するに、現状は、"ご乱心の鶏" が "卵" をまで啄ばむ! ような雰囲気がないだろうか、ということなのである。
こうした "ご乱心現象" については、"誰かが警告" してやらなければならないはずではなかろうか。タコが自身の足を喰うのと同じことをしていると、"次世代" 問題であるどころか、早晩、"「自」世代" で身の破滅をしかねないからだ。
われわれの経済社会に照らして言えば、一般大衆による "需要" が先細る消費経済が果たして "好景気" を招来するものであろうか?
こう考えると、"財政難" を理由に "卵" のケアを軽視する処し方にはムリがあり過ぎると見える。"次世代" の人間社会への "保険料!" は、何を工面してでも拵えるのがスジだと思わざるを得ない。
"OWS 運動" が唱える "貧富の差、経済格差の是正!" というスローガンは、未来に向かってしか生きられない人間にとって "分かりやす過ぎる" 主張のように思える。
―――― < 反ウォール街デモ、治まらぬ学生の苦悩編集委員 関口和一
米ニューヨーク市マンハッタン。金融機関が集まるウォール街近くの小さな公園「ズコッティ公園」は、米国の貧富の差を訴える人々のメッカとなっている。「オキュパイ・ウォール・ストリート(ウォール街を占拠せよ)」を標榜し、「我々は99%だ」と叫ぶデモはこの公園を拠点に全米へと広がり、普段でも公園内にテントを張って寝泊まりする人が後を絶たない。
「僕には8万5000ドル(約670万円)の借金がある」。こう書いたプラカードを掲げるのは、アートスクールで学んだという24歳の若者、アレックス・ディションプさんだ。大学の費用を学資ローンで払ったが、定職に就けず、アルバイトで生活している。借金は雪だるま式に増え、生活は日増しに苦しくなっているという。
ズコッティ公園には労働組合のメンバーなども集まるが、目立つのはアレックスさんのような白人の若い人々だ。米国では住宅価格が一時期高騰したが、大学の授業料も大幅に値上がりした。学生を支援するため、民間の学資ローンが広まったものの、金利が高く、返すに返せないという若者が増えている。
こうした状況は「リーマン・ショック」を巻き起こした住宅のサブプライムローン問題と似ている。
......
学資ローンも同様で、家庭環境により大学に行けなかった若者が進学できるようになったが、就職できなければ借金だけが残る。しかもローンは最初の返済額が低めに設定されているため、返済しても金利にしか充当されない。延滞すれば、それが元本に組み入れられ、借金の額はかえって増えてしまうという。「99%」というのは、上位1%の富裕層が米国の所得全体の4分の1を稼ぎ、富の4割を保有するというデータにもとづく。自分たちはその反対側にいるという訴えだ。こうした若者による暴動は英国のロンドンでも起きており、いわば所得格差が進む先進国共通の課題となっている。
日本でも東京の日比谷公園を占拠した派遣村の問題が取りざたされた。...... こうした若者たちに明日の夢を与えられなければ、国家としての成長は見込めない。
折しも米国では来年、大統領選挙を迎える。...... 悩みは日本の政府も同じだ。「オキュパイ・ウォール・ストリート」の掛け声が日本にも飛び火してくる可能性はおおいにある。>
( 反ウォール街デモ、治まらぬ学生の苦悩 編集委員 関口和一/日本経済新聞/2011.11.27 )
―――― < 米国の格差拡大、裏付ける調査相次ぐ 大企業の納税回避も
【ワシントン=柿内公輔】米国で経済格差の拡大や大企業の納税回避を示す調査発表が相次いでいる。米内外で広がる反格差デモの参加者の主張をある程度裏付けるもので、政府や企業への抗議行動を勢いづけることも考えられる。
議会予算調査局(CBO)が先月まとめた報告書によると、1979~2007年にかけて、所得上位の1%を占める超富裕層は税引き後収入が約3・8倍に増えた。一方、下位2割の低所得層は18%しか伸びていない。CBOは背景として、超富裕層でキャピタルゲイン(株式などの譲渡益)が近年伸びたほか、低所得層に限らない高齢者向けの社会保障給付などが増えたことなどの政策要因も指摘。「約30年間で米国民の所得はかなり不平等となった」と分析している。
また、米金融大手PNCの調査によると、過去5年間で「資産が増えた」富裕層は45%で、「目減りした」20%を大きく上回り、最近の景気停滞でも富裕層の大半はあまり影響を受けていないとしている。
一方、米市民団体の「税金の正義を求める市民の会」はこのほど、米主要企業280社の納税実態を調査した結果を発表した。
それによると、08~10年にかけて、78社が少なくとも1年間は連邦所得税を納めず、30社は3年間に渡り納税しなかったという。この30社は3年間で約1600億ドルの収入を計上したが、税制優遇措置を駆使して納税を免れたと指摘している。
「巨額の税金を政府に納めており、調査は不正確だ」などと反論する企業もあるが、米紙ニューヨーク・タイムズは、節税にいそしむ富裕層が少なくないとの著名投資家ウォーレン・バフェット氏の言葉を引用し、「企業も負けていない」と皮肉っている。
クリントン政権で財務長官を務めたハーバード大のローレンス・サマーズ教授は英紙フィナンシャル・タイムズへの寄稿で、CBOの調査を引用し、「特定の個人へ富がシフトしている。富の配分が不公平で、中間層も不満を抱いている」とし、格差是正が喫緊の課題と警告している。 >
( 米国の格差拡大、裏付ける調査相次ぐ 大企業の納税回避も/msn 産経ニュース/2011.11.23 )
あからさまな事実と思いとを "プラカード" に託した冒頭の若者は、ひょっとすれば "今、叫ぶことを逸したら、ずっとその機会は訪れない......" とでも感じた "瀬戸際感覚" を抱いていたのだろうか。とすれば、それを表明させた関連する "ソーシャルメディア" のコミュニケーションの質は捨てたものではない...... (2011.11.28)
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