今や "ソーシャルメディア" は、ネットユーザー個々人の主要なトレンドの場であり、もちろん企業によるマーケティング活動の主戦場となり、そして社会的ムーブメント( アラブの春、OWS運動 )醸成の坩堝(るつぼ)としての器にもなっている。
そんなことから、この "ソーシャルメディア" 関連のサイト記事をレビューしつつ、"ソーシャルメディア" という "新しい革袋" とそこに盛られる "新しい酒" の "新しさ" の実態を理解しようとしているところだ。
"ソーシャルメディア" は個々人の生活の現場から "自生的" に形成される点に特徴があると言われている。ただ、個々人は抽象的な場で生活しているわけではないので、"ソーシャルメディア" に盛られる内容は、周囲の社会環境から様々なものが流入し影響を被っていることは当然の成り行きであろう。
つまり、"ソーシャルメディア" 自体が周囲の社会環境から受ける影響の問題なのである。とかく現在、"ソーシャルメディア" が放つ影響力ばかりに目が向けられがちなのかもしれないが、実は "ソーシャルメディア" 自体が何によって影響を受けているのかという問題に目を向けることも重要な課題だと思われる。
言い換えれば、"自生的" な "ソーシャルメディア" の側面と併せて、"ソーシャルメディア" が影響を被っているであろういわば "被拘束面" をも考察することが不可欠な課題ではないかという点なのである。
すでに、企業による "ソーシャルメディア" 対応では、"ソーシャルメディア" を効果的に取り込む意図で、こうした考察がアクティブとなっているはずだろう。もちろん、稚拙な "やらせ" 的アプローチとは異なった次元の話である。
こうした問題意識に関係して、<「世の中ゴト×仲間ゴト×自分ゴト」の法則 ソーシャルメディア時代の戦略PR>と題する興味深いサイト記事(「世の中ゴト×仲間ゴト×自分ゴト」の法則 ソーシャルメディア時代の戦略PR 本田哲也/ブルーカレント・ジャパン代表取締役/株式会社ビデオリサーチインタラクティブ/2011.10.26)に関心が引き寄せられた。
結論から言うならば、"ソーシャルメディア" が上位の社会環境から被っているであろう "被拘束面" を焦点にしつつ、上位の社会環境レベルにおいて<世論をつくり出す「空気づくり」を行う>といった「戦略PR」( ※ 注.)の手法を駆使することによって、間接的に "ソーシャルメディア" を通じた商品販売を活性化する、と理解されよう。
以下、同記事の主旨が追える範囲内での引用をさせていただくことにする。
―――― < 「世の中ゴト×仲間ゴト×自分ゴト」の法則 ソーシャルメディア時代の戦略PR......
この2つの潮流(ソーシャルメディアと「戦略PR」※引用者注)の合流が目の前まで来ている。戦略PRはソーシャルメディアでさらに進化し、ソーシャルメディアは戦略PRによってその可能性をさらに広げるだろう。
この合流が、次世代マーケティングにおいて重要な役割を担うことになるのは間違いない。「それはわかった。でも具体的にはどう組み合わさることになるの?」私はここで、ひとつの整理の仕方を提示したい。ソーシャルメディアマーケティングの第一人者であるトライバルメディアハウスの池田紀行氏と、戦略PRプランナーである私がそれぞれの手法の役割論をベースに整理したもので、「『世の中ゴト×仲間ゴト×自分ゴト』の法則」とでも呼びたくなるものだ。......>
( 同上サイト )
次に、この<『世の中ゴト×仲間ゴト×自分ゴト』の法則>について解説されるのだが、この<仲間ゴト>が "ソーシャルメディア" に相当しているはずである。
< 「自分ゴト」は、「この話題は自分に関係がある」と思える状態。「仲間ゴト」は「仲間はみんな知っている」という状態で、「世の中ゴト」は「誰に話してもみんな知っている」という状態。「話題の影響範囲」という観点から考えると、この3つがあるバランスで成立したときにその話題がパワーを持ち、人を動かすことになるだろう、という前提にたっている。
たとえば、2009年ごろからブーム化した「山ガール」。
ファッショナブルに登山をする(あるいは始めた)若い女性たちの総称だが、この構造はまさに上記の法則にあてはまる。まずは、これまで彼女たちには距離感があった「登山」が、ファッションアイテムや健康美容の文脈で「自分ゴト化」する。
その経験や情報共有をベースに、彼女たちやその予備軍はソーシャルメディアを中心につながり、「仲間ゴト化」が加速する。
最終的にはそのトレンド自体がマスコミ報道にのり、「世の中ゴト化」する、というわけだ。ここでは比較的単純化したのだが、ソーシャルメディアの役割が自分ゴトを仲間ゴトに発展させていくところにあり、戦略PRが世の中ゴトと仲間ゴトをつなげていく役割を果たすことが理解いただけるのではないだろうか。
( 同上サイト )
こうして、"ソーシャルメディア" と連動する<「文脈」の設計=コンテクストデザイン>が、<戦略PR>によってなされるということになる。
< また私は、この「自分ゴトと世の中ゴトが一気通関する」というポイントが、社会的にも重要だと思っている。...... 自分、家族や友人や同僚そして社会へと、すべてがつながり関係する事象にできるか、がポイントだ。
これはメディアの設計=メディアプランニングの話というよりは、「文脈」の設計=コンテクストデザインの領分になるだろう。いずれにしても、安易なコミュニケーション設計にありがちな、「ツイッターは使うべきかどうか?」「パブリシティはテレビにさえ出ればそれでよいか?」という議論は表層的なものである。
「メディアをどう使うか」という発想だけだと、どうしてもそうなってしまう。そうではなく、「話題の影響範囲をどう設計したいか」という考えに頭を切り替えないと、複雑化した情報環境におかれた消費者を動かすことは、これからどんどん難しくなる。
そしてそれこそが、ソーシャルメディアと戦略PRが連動する本来の醍醐味なのだ。
( 同上サイト )
( ※ 注.)
―――― <戦略PRとは
弊社代表の本田が2009年1月に「戦略PR」を発刊したことをきっかけに知れ渡り、今マーケティング業界でも最も注目されています。商品そのものにフォーカスしたPR活動ではなく、世の中の時流と商品をつなぐテーマを開発しそこから話題喚起し、世論をつくり出す「空気づくり」を行い、その盛り上がりを商品の販売に落とし込む手法です。>( Blue CURRENT )
※ 参考書籍 アスキー新書『 戦略PR 空気をつくる。世論で売る。』
<「文脈」の設計=コンテクストデザイン>という部分は、言葉としては実に "魅惑的" である。また、アクティブなマーケティング手法としては視野に入れて当然なのであろう。
しかし、具体的にはどんな営為が想定されているのであろうか......。"ソーシャルメディア" への意図的アプローチは、"炎上" ケースにも発展しかねないナーバスな面のあることも考慮すると、それを警戒して勢い、間接的過ぎる茫漠とした手とならないとも限らない......。
ただ、いずれにしても "ソーシャルメディア" は社会的な存在である以上、様々な社会的存在から影響を被らざるを得ないはずだ。その "自生的" 側面・性格だけに目を向け思い入れをするような "単眼的" 視点だけでは済まないに違いない。
企業のマーケティングであれ、社会的ムーブメントであれ、"ソーシャルメディア" 活用に関しては "次の一手" がアグレッシブに模索されている...... (2011.10.31)
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