"ソーシャルメディア" が多方面で注目され、関連する話題がメディアを賑わしているのは周知の事実だ。時代と社会全体が、いろいろと問題含みだらけであるだけに、せめて"ソーシャルメディア" のジャンル位は華々しくあっても良かろうとは思う。
だが、"スポットライトの眩しさ!" ほどに、現実の実態も全面的なアクティブ状態なのだろうか? 普及の進展具合についても気になる。実態はどうなのか、なのである。
確かに、"ソーシャルメディア" ジャンルで、個別企業の "瑣末なアクション" を伝える記事は、日毎ネットを埋めてはいる。しかし、それをもってアクティブ状態だとは到底思えない。大半が "枯れ木も山の賑わい" のようなマーケティングニュースであり、そんなことは、"ソーシャル" 内で勝手にやったら? と思ってしまう。
自分としては、より関心を傾けたい対象であれば、その分、より "辛口" となりたいし、"慎重な視線" を向けたいと思っている。とかく、新しい技術動向に関しては、それを "儲けの材料" にすべく過剰な "御用提灯" を振りかざす風潮が付きまとうからだ。
だが、どうも現状は "御用提灯" の明かりばかりがやたら "眩しい" といった気配が否めない......。
そんな観点からすれば、下記引用のような "辛口" 記事に若干関心を持った。
要するに、吹聴されているほどに日本での "ソーシャルメディア" の普及は順風満帆なのか? という "慎重論" なのである。
<「フェイスブックは話題になったとはいえ、国内利用者は500万人程度ですでに成長鈍化の気配が見える。ミクシィも月間ログイン利用者数が1500万人程度で長らく停滞している。このように日本ではソーシャルメディアの普及が進まないため、その影響力が一部の層に限られている。それゆえ、海外のようにソーシャルメディアが社会的なインパクトを与えられず、炎上などスケールの小さな事件ばかりがクローズアップされてしまっている」>(下記引用【 記事 1 】より)
ちなみに、ここで挙げられた利用者数の "数字" に関しては【 記事 2 】による補足修正が必要かとは思われる。特にフェイスブックの普及伸長については相応に見るべきものがありそうだ。
だが、【 記事 2 】でも、次のように<訪問者数の計測方法>の未確立な現状が指摘されている。つまり、残念ながらそれが日本の "ソーシャルメディア" の現状を象徴しているかのような気配だ。
<各サービス事業者は多くの資料で企業にアピールしているが、主要なデータの1つである訪問者数の計測方法さえさまざまで、事業者側から出ている数字はいわば「主催者発表」のようなものといえるかもしれない。>(下記引用【 記事 2 】より)
そうしてみると、なおのこと "慎重論" に耳を傾けても良さそうかという気にさせられるわけなのだ。
ここでは深追いを避けるとして、一点だけ注目しておこうと思うのは、<思ったようにソーシャルメディアが普及しないのは、ネットの匿名文化が根強いせいかもしれない。>という点だ。
"ソーシャルメディア" の普及と発展と、"匿名性-実名性" という問題は、今後さらに議論を煮詰めていくべきテーマであるのかもしれない。おそらく、"ソーシャルメディア" の "ソーシャル" としての "可能性" は、より本質的なテーマである "人と人とのつながり" の内実を問うことなしには飛躍的に展開はしないのではないか、という気がしている。
ともかく、今現在、日本の "ソーシャルメディア" 状況が "不完全燃焼" 状態にあるとするならば、ニューメディアという "器" だけに過剰に依存し、また "数字" だけにこだわり、それでいて避けられない "質的側面" の課題には踏み込んでゆかない、そんな安直さがネックになっているのではないかと危惧させられる。
口幅ったい言い方をすれば、"ソーシャルメディア" を支えるものは、テクノロジーであると同時に、"文化、カルチャー" なのであり、後者を見て見ぬふりをしていたのでは空転はまぬがれないような気がしている......。
【 記事 1 】
―――― <腰が引けてきた? 企業によるソーシャルメディア活用、炎上事件や普及停滞がカベに「2011年は、ツイッター、フェイスブックが革命のきっかけになるなど、世界的にSNS(ソーシャルネットワーク)が盛り上がった。しかし、日本では、従業員が関わったSNSの炎上や、著名企業への抗議デモがSNSを通じて拡大するなどの事件が目立ち、企業のソーシャルメディアへの姿勢が後ろ向きになってしまった」
そう嘆くのは、ネットマーケティング等を手掛けるアジャイルメディア・ネットワークの徳力基彦社長だ。
「フェイスブックは話題になったとはいえ、国内利用者は500万人程度ですでに成長鈍化の気配が見える。ミクシィも月間ログイン利用者数が1500万人程度で長らく停滞している。このように日本ではソーシャルメディアの普及が進まないため、その影響力が一部の層に限られている。それゆえ、海外のようにソーシャルメディアが社会的なインパクトを与えられず、炎上などスケールの小さな事件ばかりがクローズアップされてしまっている」と徳力社長は分析する。
欧米やアジアではフェイスブック(および類似のSNS)の普及率が非常に高く、一種の情報インフラのようになっている。そのためマーケティングにも効果がある。日本でも、昨年のツイッター、それに続くフェイスブックのブーム以降、ソーシャルメディアを使って口コミを拡散させ、それによって大きな販促効果が上げようという期待が高まっていた。
ところが、炎上事件などでマイナスイメージが広がったうえに、東日本大震災から時間が経つととともにテレビを使ったマスマーケティングも復活してきたことから、企業の姿勢が後ろ向きに転じてきたという。
「思ったようにソーシャルメディアが普及しないのは、ネットの匿名文化が根強いせいかもしれない。また、パソコンを家族で共有しているためソーシャルメディアを使いづらいというハードウエア上の制約もありそうだ」と徳力社長。
( 腰が引けてきた? 企業によるソーシャルメディア活用、炎上事件や普及停滞がカベに/東洋経済 - 産業・業界/2011.12.09 )
まだまだ本格的にマーケティングに活用できるまでには成熟していない日本のソーシャルメディア。だが、「ソーシャルメディアに蓄積された口コミなどデータを分析・活用することによって顧客との関係性強化につなげられる。また、リアルの販促との組み合わせにも可能性がある」と、徳力社長は単なる口コミ拡散にとどまらないソーシャルメディアの活用が重要と語る。
(丸山 尚文 =東洋経済オンライン) >
【 記事 2 】
< ......集計方法を変更(「イイネ!」ボタンの扱い)したことでミクシィが運営する「mixi」への訪問者数(アクセス数)が、9月の1472万人から10月は838万人へと大幅に減少したように見えた。......10月は「ツイッター」(訪問者数は1455万人)と「フェイスブック」(同1131万人)に抜かれ、mixiは838万人だった。......mixiは急伸するフェイスブックに6月に抜かれていることが分かった。ネットレイティングスは「堅調」と表現していたが、実際は伸び悩みや減少傾向にあるようだ ......各サービス事業者は多くの資料で企業にアピールしているが、主要なデータの1つである訪問者数の計測方法さえさまざまで、事業者側から出ている数字はいわば「主催者発表」のようなものといえるかもしれない。......>( ミクシィ「訪問者激減」騒動が問うSNSの本当の価値 ブロガー 藤代 裕之 /日本経済新聞 - テクノロジー/2011.12.08 )
いずれにしても、"ソーシャルメディア" 現象を、"ソーシャル" の部分に託された新局面を度外視して、テクノロジー次元だけの現象だと見なすならば、遅かれ早かれ一種のブームとして終わりかねない可能性も大いにありそうだ。しかも、この日本だけが...... (2011.12.15)
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