ダニエル・ピンク モチベーション3.0 持続するやる気!を |
一体、何が原因なのか? そう考えた途端に "当惑" と "逡巡" に襲われるのもまた情けないかぎりである......。
ふと、とある地方新聞の記事の一フレーズに目が留まった。
<「誰かが何とかしてくれるという他力依存の社会になった」>(下記引用記事)という言葉である。
<...... 96歳のジャーナリスト、むのたけじ氏が「人間らしく生きる世界をつくるため、人のきずなを取り戻さねばならない」と訴えた。......むの氏は「国民の生活、財産を守るべき国家が、国家を守るために国民を利用している」と訴え、民主主義や資本主義、権力を監視すべきマスコミが死に体になっていると批判。第2次世界大戦後、日本が戦争責任の明確化や謝罪を行わないまま成長を続けたことで「誰かが何とかしてくれるという他力依存の社会になった」と指摘した。 また新しい社会構築に向けて、「若者が声を上げるべきだ」と訴え、...... >( 96歳ジャーナリスト若者を激励 むのたけじ氏、敦賀で講演/福井新聞/2012.01.13 )
この<「誰かが何とかしてくれるという他力依存の社会になった」>という言葉の "射程距離" は意外と長く、しかも "起爆力" も捨てたものではなさそうだと痛感した。まあ、"荒れた言葉" を常食としている者たちには効かないかもしれないが......。
そこで、かねてより読んできたとある著書に引き戻され、<現在稼動しているOSのバグ>( 下記引用記事 )という表現に突然スパーク! したのである。
その前に、次の "7つ" のメッセージに目を向けておきたい。
ここには、"何かヘンな時代状況!" の "症状(?)" が網羅されていて、まるで "何かヘン症候群" とでもいうものを言い当てているかに思える。
政府も企業も、そして何よりも個人としての自分自身も、この "何かヘン症候群" の典型のように思われてくるのだ......。
1.内発的動機づけを失わせる。 2.かえって成果が上がらなくなる。 3.創造性を蝕(むしば)む。 4.好ましい言動への意欲を失わせる。 5.ごまかしや近道、倫理に反する行為を助長する。 6.依存性がある。 7.短絡的思考を助長する。 |
( ダニエル・ピンク著/大前研一訳 『モチベーション3.0 持続する 「やる気!/ドライブ!」 をいかに引き出すか 』
講談社/2011.07.06 )
この "症候群" の源泉は、<外部から与えられるアメとムチ式の動機づけ>なのであり、これが、<モチベーション2.0>を構成する "二〇世紀" 型の "OS" なのだと、以下の文章で、アナロジカルに述べられている。
PCを使うわれわれは、そのPCが時として頻繁にトラブルを招くならば、「これは、個別のアプリの不具合ではなくて、"OS" 自体を取り換えるべきかなぁ......」と考えることがある。これと同じように、いわば "抜本的" 対策にシフトすべきではないか、という話なのである。
第1部 新しいオペレーティングシステム
第1章 〈モチベーション2.0〉の盛衰
コンピュータと同様に社会にも、人を動かすための基本ソフト(OS)がある。ほとんど表面には現れない、すべてを司(つかさど)るインストラクションとプロトコルのことだ。 人間の最初のOS――〈モチベーション1.0〉と呼ぶことにする――は、生存を目的としていた。その後継である〈モチベーション2.0〉は、外的な報酬と罰を中心に構築された。これは、二〇世紀のルーチンワークには有効だった。だが、二一世紀を迎えて、〈モチベーション2.0〉は、わたしたちの組織、仕事に対する考え方やその手法とは、互換性がないことが明らかになってきている。アップグレードが必要である。第2章 アメとムチが(たいてい)うまくいかない7つの理由
( ダニエル・ピンク著/大前研一訳 『モチベーション3.0 持続する 「やる気!/ドライブ!」 をいかに引き出すか 』 講談社/2011.07.06 )
アメとムチが人間の第三の動機づけと出会うとき、奇妙なことが起こる。「交換条件つき(こうしたら、これをあげる)」報酬を提示しても、成果は期待したほど得られない。内発的動機づけを消滅させ、創造性を破壊し、人間の好ましい言動を阻害するからだ。また、望まない現象が現れてくる。つまり、時として反倫理的行動を助長し、依存を生み出し、短絡的な考えを促す。これらは、現在稼動しているOSのバグにあたる。 ......
では、"新しいOS"( 著者はそれを モチベーション3.0 のOSと名付けている )とはどんな特徴を備えた "OS" なのであろうか。以下にその骨格部分が述べられている。
モチベーションの話となると、科学の知識とビジネスの現場にはギャップがある。ビジネスにおける現在の基本ソフト(OS)は、外部から与えられるアメとムチ式の動機づけを中心に構築されている。これはうまくいかないし、有害な場合も多い。アップグレードが必要なんだ。科学者たちの研究成果がその方法を示している。この新しいアプローチには三つの重要な要素がある。 一つは〈自律性(オートノミー)〉――自分の人生を自ら導きたいという欲求のこと。 二番目は〈マスタリー(熟達)〉――自分にとって意味のあることを上達させたいという衝動のこと。 三番目は〈目的〉――自分よりも大きいこと、自分の利益を超えたことのために活動したい、という切なる思いのことだ。( ダニエル・ピンク著/大前研一訳 『モチベーション3.0 持続する 「やる気!/ドライブ!」 をいかに引き出すか 』 講談社/2011.07.06 )
二一世紀を迎えて、"二〇世紀" 型の "OS" で賄おうとしているところに、"何かヘン症候群" のウダウダ問題が噴出していそうだ、というこの分析イメージには大いに共感が持てそうではないか。
ただし、人間社会における "OS" 取り換え作業は、PCでの "OS" インストール作業とは比較にならないほどに "地道さ・忍耐・パワー" などが不可欠となるはずだ。何よりも<「誰かが何とかしてくれるという他力依存の社会になった」>ことについては...... (2012.01.15)
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